リーダーシップ往復書簡 017

 

リーダーシップと親和性がある考え方を3回にわたりご紹介したいと思います。

第2回目はインテリジェンス(Intelligence)です。私はリーダーシップとインテリジェンスには親和性があると考えています。

日本ではインテリジェンスという言葉は、単に知能や知性の意味で使われることが多いため、前提がズレないように、改めてこの文章での定義をします。

(定義)
「インテリジェンス(Intelligence)とは、情報(Information)を、必要に応じて取捨選択し、多角的に内容を分析し、価値判断を与える行為、または、その行為によって得られる情報(Intelligence)のことである。」

なお、情報の世界では、このインテリジェンス(Intelligence)に対して、日々行き交う”生”の情報のことをインフォメーション(Information)と呼びます。

リーダーが正しくリーダーシップを発揮するためには、このインテリジェンスが不可欠なのです。

リーダーはフォロワーを集めるためにも、また、集まったフォロワーを目標に向かって動かすためにも、インテリジェンスが必要です。

前提として、私たちが理解しなければならないのは、「人は性善なれど弱し」ということです。

リーダーは、このフォロワーの「弱さ」を払拭できるだけの現実的な勝ち筋の提示をしなければなりません。

これは極めて現実的な話です。

夢や共感の力などふわっとしたポジティブな内容だけでは、中長期的に人を動かすことはできないのです。

その際に、リーダーに必要になってくるのがインテリジェンスです。

例えば、ベンチャー企業の社長が優秀な社員をスカウトする際に、その社員の結婚相手の価値観という情報は重要になってくるかもしれません。なぜなら、結婚相手にベンチャー企業ではなく安定的な大企業で仕事をして欲しいと思い、ベンチャー企業への転職に反対するパートナーは多くいるからです。

また、本来は影響度が少ないにもかかわらず、社内政治があるために、スタッフがそれを「やらない」・「できない」という言い訳にして、正しく努力できなくなってしまっているような事例では、しっかりとしたインテリジェンスがなければ対応を間違えかねません。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

 

【Q.17】
ベンチャー企業と大企業では、リーダーシップの発揮の仕方に違いはあるでしょうか?

 

<コメント>

結論から言うと、リーダーシップの発揮の仕方に違いはありません。

以前にも何度も記載をしてきていますが、リーダーシップには立場は関係ないのです。

リーダーシップとは、組織の規模や組織における立場(地位)によって、発揮の仕方が変わるものではありません。

本来、リーダーシップとは、ありとあらゆる人が発揮すべきものです。

ただ、なんとなくですが、今回の質問の背景が私には理解できます。

原則として、リーダーは、社会や組織のルールを遵守したうえで、世のため人のために、フォロワーを動かして、夢を実現させていくわけです。

しかし、時に、社会や組織のルールを変えることが、世のため人のためになる場合もあります。

ベンチャー企業は、多くの場合は、組織のルールが整備されていないため、スタッフが、本質的なところ(例えば、新サービスの社会的意義)から話をせねばならず、リーダーシップを発揮しているように見えるのではないかと思います。

逆に、大企業では、組織のルールが整備されていることが、リーダーシップを発揮する妨げになっているかのように思われているのだと思います。

その組織においてリーダーシップを発揮している人の比率はベンチャー企業のほうが大企業より多いかもしれませんが、だからといって、リーダーシップの発揮の仕方が違ったり、全ての人にリーダーシップが求められていなかったりするわけではありません。

 

 

※この記事は、2020年2月15日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 016

 

リーダーシップと親和性がある考え方を3回にわたりご紹介したいと思います。

第1回目はパブリックリレーションズ(Public Relations、以下「PR」といいます。)です。私はリーダーシップとPRには親和性があると考えています。

日本では、PRという言葉は、単に宣伝であったり広報であったりの意味で使われることも多いため、前提がズレないように、まずは公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会のPRの定義を2つご紹介します。

(定義1)
「パブリックリレーションズ(Public Relations)とは、組織とその組織を取り巻く人間(個人・集団)との望ましい関係を創り出すための考え方および行動のあり方である。」

(定義2)
「パブリックリレーションズとは、組織体とその存続を左右するパブリックとの間に、相互に利益をもたらす関係性を構築し、維持するマネジメント機能である。」

この2つの定義を読まれてどのように思われたでしょうか?

まさに、これぞリーダーシップの考え方だと、私は思うのです。

日本ではPRは宣伝や広報のように一方的な情報発信(なお、広報の対義語は広聴)のように捉えられがちですが、前述のとおり、PRの定義には、(1)パブリック(社会性・公共性)、(2)組織と社会の関係性、(3)中長期的な関係性、(4)相互作用、(5)「考え方」だけでなく「行動のあり方」が含まれており、まさにリーダーシップと読み替えられるような内容だと思います。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

 

【Q.16】
社会の中で、どのような人が優れたリーダーシップ・スキルを発揮しているのでしょうか?
事例を交えて教えてもらえればと思います。

 

<コメント>

優れたリーダーシップ・スキルを発揮している人は、様々な業界で様々いるのですが、ここではリーダーシップを職業にしている人を紹介したいと思います。

リーダーシップのプロフェッショナル。

それはズバリ政治家です。

政治家とは、世の中を良くしたいと考える人が選挙に立候補し、民衆に対して政策を訴え、支持を集め、民衆に選ばれた人がなる職業です。

昨今のニュース番組を見ていると、政治家がリーダーシップのプロフェッショナルであることをすっかり忘れてしまいそうですが、政治家の生き方とはリーダーシップそのものなのです。

ほとんどの政治家は、毎日、早朝から深夜まで政治活動をしています。そして、声なき声を拾い集め、法律の隙間に落ちてしまったような社会的弱者を救済するために、日々、人に会って話を聞き、解決のために奔走するのです。

政治家は、一般的に、問題解決をその場で行います。これもリーダーシップの型の一つだと思います。すぐに対応することで、相談者を尊重していることを伝えるとともに、同時に、自分の影響力の強さを誇示するわけです。

また、政治家は、法律を作ります。政治家は、既存の法律だけにとらわれることなく、倫理観を持って、世のため人のために、新しい行動規範、つまり社会が求めるルールを作るのです。

今の日本では、大きく利害が対立するような政治的な主張をしても身体的な危害を受けることはまずないでしょうが、時には反対派の人に狙われることもあるわけです。まさに暗闇の中でたいまつを持って進むリーダー。これが政治家なのです。

最近の政治家でピンと来ない人は、過去の偉大な政治家からリーダーシップを学ぶと良いと思います。エイブラハム・リンカーン、ジョン・F・ケネディ、ネルソン・マンデラや田中角栄などがオススメです。

 

 

※この記事は、2020年2月7日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 015

 

最近の私は、ビジネスの成功要因の大きな要素の一つに、「アクティブ」かどうか、を挙げています。

私は、経営戦略を立案したり予実管理をしたり、いわゆる経営企画の仕事を長くしていたからか、このシンプルな答えに行き着くまで、少し遠回りをしたように思います。

これは私だけではないと思いますが、職業人として、経営戦略を立案する人の多くは、あたかも自分が全知全能の”神”のように、自分が立案した戦略がハマって、顧客や組織が思い通りに動いてビジネスが成功することを期待する傾向にあると思います。

そのため、どうしても複雑だったり精緻だったりする分析とそれに基づく戦略立案をして「策士策に溺れる」になりがちで、企業文化、ケイパビリティや活動量を軽視してしまいがちだと思います。

ただ、ビジネスにおいて「アクティブ」は、極めて重要な成功の要素なのです。

「アクティブ」であれば、マネジメントサイクルが早く回るため早期にケイパビリティを身に着けることができますし、何よりもその前向きなエネルギーが人やお金など経営資源を惹きつけるのです。

「アクティブ」は、企業文化、ケイパビリティや活動量に影響を及ぼします。

良い経営戦略とは、中長期的に、この「アクティブ」を持続させる仕組みのようにも思います。

そして、この「アクティブ」は、リーダーシップを語る上での重要な論点だと思います。

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【Q.15】
私は今、社会人4年目で、ベンチャー企業で働いています。
将来、自分でスタートアップ企業を経営したいと考えています。
そこでリーダーシップを身に着けたいと考えていますが、どのようにすればスキルアップすることができるでしょうか?

 

<コメント>

前提として、リーダーシップはスキルで、先天的なものではなく、後天的に誰しもが身に着けることができるものという考え方があります。

そのうえで、私が過去に大臣を務めた経験のあるメンターから教えていただいた格言「リーダーはリーダーを育てる」をご紹介したいと思います。

リーダーシップを身に着けるには、優れたリーダーの傍にいて、「やり方」ではなく「あり方」を学ぶことが近道だと思います。

最近の熱心な人事担当者は座学でリーダーシップの勉強をしたり、「ティール組織(インテグラル理論)」の勉強したりとあるのですが、やはりロジカルな頭の理解は「やり方」でしかなく、リーダーの「あり方」とは一線を画しているように思います。

リーダーシップを学ぶには、鶏口牛後だと思いますので、例え小さい組織であっても、暗闇の中、集団の先頭で、たいまつを持って、勇気を持って自分の足で歩いているリーダーを見習うこと、リーダーと一緒になって困難な目標に向かって歩いてみることだと思います。

どのようにリーダーが社内外のフォロワーを動かしているのか、目の前の困難を前にしてどのようにリーダーがフォロワーの分まで「焼け火ばし」を持っているのか、どのようにリーダーが現実的なお金の問題などと対峙しているのか、失敗をした時にどのような筋を通した生き方をしているのかなど、優れたリーダーの生き様を目に焼き付けるのが一番効率的だと思います。

もちろん情報取得が簡単な今の時代ですから、リーダーシップに関する書籍を読むなど勉強をしたほうがいいとは思いますが、真の理解、心からの腹落ちを得るには、実践・体験しかないと思います。

特に自分の人生が試されるような修羅場の経験が、あなたのリーダーシップ・スキルを磨き上げるものと思います。

将来リーダーになりたいと思う方は、困難を愛し、若い時の苦労は買ってでもしたほうがよいでしょう。

 

 

※この記事は、2020年1月28日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 014

 

私は、マネジメントを経営管理など「人を管理するスキル」、リーダーシップを主体性・夢や共感など「人を導くスキル」と定義し、大別して説明しています。

今後、人工知能などのテクノロジーの進化によって、この2つに大別したマネジメントとリーダーシップの重要度はどのように変わっていくでしょうか。

私は、リーダーシップは、マネジメントよりも、遥かに重要性が増していくと考えています。

理由は簡単で、テクノロジーの進化によって、マネジメントは効率化が進みますが、同時に、一般化・コモディティ化も併せて進むからです。

結果、同じ競争している事業者同士の間ではマネジメントは大した差別化要因にはならず、リーダーシップの優劣こそが成功の決め手になるのではないかと思います。

合理化された世界では、一見、非合理的なことこそが差別化要因であり、成功要因になるのではないかと思います。

(逆に言えば、合理化された世界になる過程で、進化したテクノロジーそのものを独占したり、テクノロジーによって効率化されたマネジメントを独占したりすれば、莫大な富を得ることができるでしょう。)

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

 

【Q.14】
前回の【リーダーシップ往復書簡 013】において、「・・・その人たちに本来備わっているリーダーシップ・・・」という表現がありました。
私も、直感的に、ほとんどの人は、本来備わっているリーダーシップが発揮できていないと思います。
これはなぜなのでしょうか?

 

<コメント>

まず、本来、リーダーシップが人に備わっていることについては、異論や違和感はないでしょうか?

私もこれについて知識を持ち合わせていないため、科学的な説明ができないのですが、少なくとも私が2歳になる自分の娘を見ている限りでも、そもそも人にはリーダーシップが備わっていることを感じさせます。

具体的には、ゴミが落ちていたら拾い、友達が泣いていたら慰めに行き、そして、誰かと一緒にアレコレしたいと主張をします。人間が持つ社会性の一端なのかもしれません。”リーダーシップの萌芽”と言ってもいいかもしれませんが、幼児であっても、私の考えるリーダーシップに近い行動をしていると思います。

次に、今回いただきました質問です。

では、なぜ(大人になったら)ほとんどの人はリーダーシップが発揮できなくなってしまうのか?

これは「人は性善なれど弱し」という人間の特性から、ごく限られた人しか、リーダーという役割を選択しないことが原因だと思います。

以前私が書いた「リーダーと考える経営の現場・第4回 人は性善なれど弱し」から、「人は性善なれど弱し」に関する説明部分を抜粋します。

「人は性善なれど弱し」とは、一橋大学名誉教授の伊丹敬之氏が「性弱説」と表現した言葉です。全ての人は性善であるが、弱い存在であるという価値観です。

一般的に、リーダーとは「性善でいて、強い」人が担う役割です。そのため、多くの人からすれば、リーダーという役割は、とても険しい道を行くもので、「性善なれど、弱い」自分のものではないと考えるのではないでしょうか。

また、リーダーシップの程度もあると思います。世の中を変えるようなことから、先ほどの娘の事例のように、ちょっと落ちているゴミを拾って捨てるというようなことまで、リーダーシップの発揮対象には大きな幅があります。

大人になると、社会的なインパクトが小さいことであったり、フォロワーとしてのリーダーシップの発揮(※必ずしも組織上のトップの人間だけがリーダーで、リーダーシップを発揮すればいいというわけではない。)であったりはあまり評価されないようにも思います。

そのため、リーダーシップは身近な範囲で発揮されているにも関わらず、それが多くの場合は見過ごされているように思います。

 

 

※この記事は、2019年11月24日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 013

 

毎日、朝から晩まで人と会っていると、非言語コミュニケーションの情報量の多さを感じずにはいられません。

その人と会うときのテーマとは全く違って、多くの話をしなくとも、個人であれば、今、その人がおかれている状態、その人が歩んできた人生から来る自信や人としての器の大きさ・器量などが見えてしまいます。

組織であれば、そこに帰属する人たちの喜怒哀楽、不安、そして、希望や熱量なども伝わります。

リーダーが、より多くのフォロワーを作り、仲間を作り、多くの人に影響力を行使するために、コミュニケーションが大事であることは言うまでもありません。その際に、この非言語コミュニケーションを意識しなければならないと思います。

では、どうするか。

ここでは「メラビアンの法則」(人物の第一印象は初めて会った時の3〜5秒で決まり、またその情報のほとんどを「視覚情報」から得ていると言う概念。)のような、単なるコミュニケーション・テクニックを言いたいわけではありません。

最近はFacebook、TwitterやNoteなど情報発信ツールが増えているので、美しい(キレイな)話、正しい話、強がりな話など「それっぽい話」は誰でも簡単に情報発信できるようになりました。

しかし、いざ会ってしまうと、非言語コミュニケーションの情報量の多さから、すぐに化けの皮が剝がれてしまうものです。

つまるところ、正しい人付き合いをし、実績を積み重ね自信をつけ、情熱をもって夢を追いかけるなど、長い時間軸で、「人間そのもの」を磨くしかないと思います。

それはマラソンのように長く・辛い戦いかもしれません。

だからこそ、人は、それをやり遂げている人に対して、尊敬や畏怖を抱くのではないでしょうか。

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【Q.13】
自分の部下や周囲の関係者に、リーダーシップを身に付けたい・発揮したいと思えるようなきっかけを作るには、どのような働きかけが必要だと思いますか?

 

<コメント>

「リーダーはリーダーを育てる。」

これは、私が過去に大臣を務めた経験のあるメンターから教えてもらった格言です。

ご質問いただいた方が、リーダーシップの普及に志を立てている、夢を持っているならば、私のようにリーダーシップに関する知識や経験を披露するなど直接的にアプローチするのもいいと思いますが、何か別のことに志や夢があるならば、その目標に向かって正しくリーダーシップを発揮していれば、部下や周囲の関係者は、自然とリーダーシップを身に着けることができると思います。

リーダーシップとは「やり方」ではなく「あり方」なのです。

私もこうやってリーダーシップの素晴らしさと有用性を伝えていますので、今回のご質問にあるように、自分の部下や周囲の関係者に、リーダーシップに興味を持ってもらいたいと思うことは、素晴らしいことだと思います。

しかし、「リーダーシップを身につける・発揮する」とは、単なる知識の習得ではないのです。

リーダーが、自分で、もしくはフォロワーを通じて、リーダーシップを発揮して、影響力を行使して、人を動かして、夢を実現する。

この成功体験を見せてあげたり、一緒に経験させたりすることが、「リーダーシップを身につける・発揮する」近道だと思います。

逆に言えば、リーダーが、その人の部下や周囲の関係者に対して、正しくリーダーシップを発揮しているかは、その人たちフォロワーのリーダーシップを見れば、一目瞭然でもあるのです。

リーダーは、リーダーシップの行使を通じて、自分の部下や周囲の関係者などをフォロワーにし、その人たちに本来備わっているリーダーシップを目覚めさせ、次のリーダーにするのです。

 

 

※この記事は、2019年11月16日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 012

 

一般的に、社歴の浅いスタートアップ企業は何ごとにもポジティブでリーダーシップ優位で、社歴の長い衰退企業は何ごとにも官僚的でマネジメント優位です。

しかし、スタートアップ企業に、衰退企業のような政治的な要素や官僚的な要素が現れないということではありません。

スタートアップ企業が衰退企業のようになってしまうとき、それは、大別すると、社員(幹部社員含む)の変容とトップ(社長)の変容の2つがあると思います。

まずは、社員(幹部社員含む)の変容を記載します。

スタートアップ企業が成長していくと、事業拡大のため人材採用をしていくことになります。その際に、本来ならば、少しでも優秀な人を採用したり、会社にしっかりと貢献している人を人事評価したりしなければなりませんが、今までいた社員が、社内における自分の”居場所”(組織上の地位だけでなく、社員全員の中での相対的なポジション)を守るために、新しい優秀な社員の足を引っ張るというのは、実によくあることなのです。

具体的には、採用時点で、優秀ではない人を優秀だと偽って推薦したり、入社後においては策を弄して社内政治をしたりと様々な醜悪なやりとりがあります。

但し、その社員は、そのスタートアップ企業が小さい時期に活躍してくれた社員であることも多く、組織にとって良い人材がずっと良い人材ではないことを物語ります。

次に、トップ(社長)の変容を記載します。

これはイメージしやすいかもしれません。事業の成長が壁にぶつかったときです。トップの自信が揺らぐのです。

真摯に事業(お客様)と向き合って事業を再成長させられるトップもいますが、残念ながらそうならないケースも散見されます。不安に駆られたトップが最も頼るのが人事権です。

実務上、適切な人事権の行使が必要であることは言うまでもありませんが、「他責+人事権」がセットになって、自信のなくなったトップが人事異動を発令させまくる!などは悪い事例でよくあることかもしれません。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

 

【Q.12】
リーダーシップに目覚めたきっかけ、リーダーシップの重要性に気が付いたきっかけについて教えてください。

 

<コメント>

私が、リーダーシップに目覚めたきっかけ、リーダーシップの重要性に気が付いたきっかけは、メンターからのアドバイスとマネジメント(経営管理)偏重な経営改革のアプローチに限界を感じたことです。

私は、20代半ばのときに、過去に大臣を務めた経験のあるメンターの方から、「君は若いから、君の人間としての器を広げて、人間力を鍛えてあげよう。優れた経営者になるために、マネジメントだけではなく、リーダーシップを学びなさい。」というアドバイスをもらいました。

当時、私は、「経営者=リーダー」だと捉えていたので、「マネジメント能力が高い=リーダーシップがある」と勘違いをしていましたし、もっと言うと、子どもの時から、リーダーシップという言葉は見聞きをしてきたものの、リーダーシップがどういうものなのかを考えたことすらありませんでしたので、いきなり「リーダーシップを学べ」と言われてもピンときませんでした。

その後はリーダーシップという言葉に興味を持ちながら、企業再生の仕事をしていましたが、やはりマネジメントだけでは企業の成長スピードが遅いのです。

企業再生の現場では常に経営資源が不足しており、少ない経営資源を効率よく有効活用するだけでは成長スピードが遅いのです。そのため、経営資源の獲得をすることが必要になるのですが、その際にはリーダーシップを発揮することが求められます。

経営戦略を立案したことがある人には共感いただけると思いますが、ケイパビリティ(組織の実行力)が弱いと、論理的に考えると明らかに正しい経営戦略であっても実行できず、経営戦略がその組織に”はまらない”のです。

しかし、リーダーシップがある人材が社内にいれば、一緒に働く社員に働きかけて(もっと生々しく言うと、一人ずつ社員を口説き落として)、ケイパビリティそのものを高めることができます。そうすると、ストレッチした経営戦略であっても実行できるようになるのです。

私は、ほんの少しだけですが、社会や会社をよくしたいという想いが強かったため、リーダーシップの重要性に気が付いてからは、スムーズにマネジメント優位からリーダーシップ優位へとシフトできたほうなのではないかと思います。

なお、この論点については、「リーダーと考える経営の現場・第14回 リーダーシップの旅 前半」でも記載していますので、ご興味ある方はご一読ください。

 

 

※この記事は、2019年11月4日付Facebook投稿を転載したものです。