リーダーシップ往復書簡 011

 

私が経営する株式会社スーツは、プロ経営者の育成と中小企業市場の活性化に志を持っています。

主たる業務では、時価総額100億円以下のクライアント企業に対して、外部の経営企画室のような立ち位置で、プランニングに留まらず「実行」まで行う経営支援をしています。

このような業務を遂行していく上で、不可欠な能力は、リーダーシップです。

新たな仲間を口説き落とし経営資源を獲得する巻き込む力、既存のステークホルダーをまとめる調整力、夢や希望をストーリーにするコミュニケーション力、そして、スピード感をもって物事を形にする推進力など優れたリーダーシップが求められています。

私自身も、マネジメントに関するプロフェッショナルというよりも、リーダーシップに関するプロフェッショナルでありたいと考えています。

リーダーシップには、地位や権限は関係ありません。どのような立場であれ、発揮することができます。

そこで、スーツ社では、リーダーシップを発揮し、陰になり日向になり、日々クライアント企業をサポートしています。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

 

【Q.11】
「この人はリーダーシップがあるな」と思われる人に、特有の言動や言動のパターンはありますか?

 

<コメント>

私のリーダーシップの有無の判断ですが、中長期的なチェックポイントは、以下の3つです。
 1.言行一致して「結果」を出せているか
 2.フォロワーを成長させているか
 3.自身が成長しているか

また、短期的なチェックポイントは、ご質問いただいた通り、リーダーの発言から判断するしかないと思います。以下の3つです。なお、この3つのチェックポイント全てを充足していないとリーダーではないと思います。
 1.社会のためになる、一般の人が共感する、夢・やりたいことがある
 2.リーダーとしての自負がある、主体性がある、覚悟がある
 3.お金や組織、戦略など、現実と向き合っている

今回のご質問は後者ですので、後者について、補足説明をします。

リーダーシップが足りない場合を記載するとより理解が進むのではないかと思いますので、例示します。

(1)社会のためになる夢はあるが、誰かがやってくれたらなと考えたり、お金や組織構築などは煩わしいからあまり考えたりしたくないと思っているサラリーマン

(2)リーダーとしての自負があり、お金や組織なども現実的に考えているが、やりたいことが分からない2代目の経営者

(3)社会的なテーマを見つけ、リーダーとして歩み始めたが、お金のことは苦手と避けている社会起業家

・・・などなど、様々な事例があると思います。

優れたリーダーは、あくまで自分を主語に、社会のためになる夢を語ることができ、なおかつ、真摯に現実と向き合っている人だと思います。

 

 

※この記事は、2019年10月27日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 010

 

活動量の多さだけが「売り」の私には、大小さまざまな夢があります。

例えば、経営支援をする株式会社スーツでは、プロ経営者の育成、中小企業市場の拡大・生産性向上や具体個別のクライアント企業のバリューアップが目標です。

キャリア教育事業等を行う一般社団法人スクール・トゥ・ワークでは、高校就職ルールの改善、早活人材(非大卒人材)へのキャリア教育&定着・活躍支援などが目標です。

おかげさまで、その他にも関与させていただいている営利団体や非営利団体は沢山ある(例えば、宇宙広告会社やエリアマネジメント会社など)のですが、その全ての活動の根っこにあるのは、やはりリーダーシップです。

世のため人のため、社会のために一歩踏み出すリーダーシップさえあれば、ヒト・モノ・カネというリソースは社会に無限大にあるように思います。

私のライフワークは、このリーダーシップの考え方を広めることです。

今後も世の中は日進月歩で進化していくでしょう。その進化に際し、最初に誰かが、リーダーシップを発揮して、誰かのため・未来のために、勇気を出して一歩踏み出したということを多くの人に知ってもらいたいと思います。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

 

【Q.10】
組織運営において、上司の選択肢として「できない部下は取り換えろ!」というような考え方もあると思いますが、どう思いますか?

 

<コメント>

以下に、理想的なリーダーのあるべき姿と現実的な対応とで、分けて記載したいと思います。

まず、理想的なリーダーのあるべき姿としては、リーダーは、どのような時であっても、フォロワーに対して、組織の地位や権限などパワーは行使すべきではありません。

「部下を取り換える」という行為は、まさに組織の地位や権限などパワーに基づく行為です。

リーダーがフォロワーに対してパワーを行使するということは、リーダーの持つ夢や共感の力など人間力ではフォロワーを動かすことができないということであり、リーダーである自分やフォロワーの可能性を諦めたということでもあります。

短期的には安易な方法を選択することで問題解決するかもしれませんが、中長期的には貴重な成長機会と多くのステークホルダーに対する影響力を失うことになります。

質問に答えるならば、上司は、できない部下を取り換えるのではなく、できない部下と向き合って成長させて導いて、できる部下・良い部下に変えなければなりません。

これが本来あるべき姿、理想的なリーダー像だと思います。

先に理想的なリーダーのあるべき姿を述べましたが、読者の皆さんの中には、「そのとおりだと思うけど、現実的にはなかなか難しいなぁ」と思われた方もいるかもしれません(笑)。

次に、現実的な対応を記載します。

現実的には、ヒト・モノ・カネ・時間などリソースの制約などもあり、「できない部下を取り換えろ!」というパワーの行使もやむを得ない・正当化される場合もあるやもしれません。

但し、この場合には、1つだけ注意点があると思います。

「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」という、いわゆるトロッコ問題がありますが、本当にこのケースはトロッコ問題なのでしょうか?

あたかもトロッコ問題のように振るまって、自己正当化して、部下を諦めるのは簡単かもしれませんが、やはりリーダーのあるべき姿は、「焼け火ばし」を持って、部下と向き合い、部下をより良い方向に変えることであり、あなたはリーダーであることを諦めてはならないと思います。

リーダーたるもの、どのような人であれ動かせなければなりません。今は取り換えたいと思うような部下であれ、しっかり向き合って、成長させなければなりません。

 

 

※この記事は、2019年10月15日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 009

 

成人発達理論を勉強すると、発達段階が高度になることが、必ずしも幸せなことではないとあります。そして、その理由は、発達段階が高度になればなるほど、突きつけられる課題がより過酷なものになるからとあります。

確かに発達段階が高度になればなるほど、突きつけられる課題がより過酷なものになるということは、そのとおりだと思います。

改めて自分を振り返ると、どうにかこうにか今の発達段階にたどり着いたものの、若い頃から、企業再生が仕事だったためか会社の資金繰りに追われてばかりでしたし、不当な株式の買占めにあって上場会社の代表取締役社長を解任されるなどもありました。

この辛い経験と引き換えに得られた認識の枠組みの変化によって、人の器の大きさや人間性が深まっていくことは、体験した人にしか分からない、素晴らしいことだと思います。

この素晴らしさは、分かりやすく例えるならば、世界の景色が色鮮やかに変わるような体験と表現してもいいかもしれません。

ほんの少しかもしれませんが、私はこのことを知ってしまったので、もしかすると人間力の獲得の過程は、過酷で極めて辛いものかもしれませんが、皆さんにも、より高い発達段階を目指してもらいたいと考えています。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

 

【Q.9】
リーダーのスキルとして、マネジメントとリーダーシップの最適なバランスについて教えてください。

 

<コメント>

本稿では、リーダーシップに絞って説明をすることが多いですが、ご質問いただいたように、リーダーのスキルとして、マネジメントとリーダーシップは両輪のように語られることが多いです。

マネジメントとは、「水平的な成長」で得られる知識やスキルのことであり、会社経営の世界では、マーケティング、アカウンティングやオペレーションなどMBAで習得できる知識です。

一方、リーダーシップとは、「垂直的な成長」で得られる、認識の枠組みの変化によって、人の器の大きさや人間性が深まっていくことであり、夢や共感の力で「人を動かす」影響力など人間力のことです。

より正確に説明すると、マネジメントとリーダーは並列的な関係ではなく、リーダーシップは、マネジメントを内包していると思います。

なぜならリーダーシップを行使して「人を動かす」時に、実現可能性は「人を動かす」一つの大きな要因であり、その実現可能性を高めるスキルこそがマネジメントだと思うからです。

今回のご質問は、このマネジメントとリーダーシップの最適なバランスということですが、私は、時と場合によって、また、そのリーダーの持つマネジメントとリーダーシップのスキルの高さ・深さによって、最適なバランスは変わると考えています。

リーダーたるものリーダーシップだけで勝負したいところではありますが、やはり実現可能性をマネジメント・スキルを駆使して高くするのも、より多くのフォロワーを導いてくためには、必要なことだと思います。

リーダーのかじ取りが難しいのは、前提条件が全く違うからだと思います。最適なバランスは、現実的には、リーダーとしての経験を積みながら、感覚として掴んでいくしかないのではないかと思います。

 

 

※この記事は、2019年9月18日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 008

 

マネジメント・スキルと違い、リーダーシップ・スキルはまだまだ完全に”科学”されておらず、現時点において、再現性が乏しいと言われている領域です。

そのため、私が、リーダーシップを軸に、クライアント企業様のバリューアップをしているという話をすると、多くのプロ経営者仲間、PE(プライベート・エクイティ・ファンド)・VC(ベンチャー・キャピタル・ファンド)等のファンドや経営コンサルタントの友人らから驚かれます。

私は、このリーダーシップの再現性の乏しさを、楽天的に捉えていて、まだ完全に”科学”されていないからこそ、取り組むべきことだと思いますし、ビジネスチャンスだと考えています。

大胆に言えば、私は、多くの方々の協力のおかげで、自身のリーダーシップから影響力を行使し、リーダーシップの再現性を発現させ、多くのクライアント企業様のバリューアップを実現してきています。

この私の持つリーダーシップにかかる経験やノウハウをどうにか言語化して、多くの将来のリーダーたちに、少しでも貢献できればと考えています。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

 

【Q.8】
リーダーシップは、未だに書店のビジネス書のリーダーシップのコーナーにばかり置かれている印象で、自らが、学んだり、体験したりするには少し敷居が高いように思います。

私は「自分がリーダーだ!」と自覚している人以外にもリーダーシップは必要だと感じています。

リーダーシップを、より多くの人々に、広く普及するためにはどのようなアプローチが望ましいと思いますか?どうすれば普及すると思いますか?普及の是非を含めてご回答いただけると幸いです。

小松先生なりの普及戦略をお聞きしたいです(笑)。

 

<コメント>

私は、冒頭のとおり、リーダーシップを少しでも多くの人に知ってもらいたいと考えています。これは私のライフワークです。

そのため、リーダーシップの普及の是非については、大賛成です。

多くの人に、リーダーシップは誤解されていると思います。

リーダーシップは、ともすれば自己啓発と同じように思われていたり、後天的には習得ができない先天的な能力であると信じられたり、さらには、例えば社長のような組織の上位の役職者のみに求められると思われていたりします。

私は、リーダーシップは多くの人を幸せにし、社会をより良い方向に動かす原動力だと思っています。

なぜならリーダーシップは、人の善意・良心、仲間同士の連帯、人の可能性を信じ、人間そのものを信じているからです。

私自身も、若かりし頃においては、それこそマネジメント・スキル偏重なキャリアを築いていました。しかし、リーダーシップを深く理解し実践することによって、多くの人の可能性を広げ、結果として商売も拡大し企業価値を向上し、自分はもちろんのこと、多くの人を幸せにしてきたように思います。

このリーダーシップを普及させるためには、まずは、リーダーシップとは何かを伝える必要があると思います。前述のとおり、あまりにも多くの人に、リーダーシップは正しく理解されていないように思います。「リーダーかくあるべし」を、過去からの経験のみならず、より統計的なアプローチなどを駆使し”科学”して、重要性や有用性を伝える必要があると思います。つまりは、多くの人がリーダーシップ・スキルを習得したいと思うようにリーダーの魅力を伝えなければなりません。

次に、リーダーシップの習得ですが、これについては、現時点においては、リーダーシップを実践しているトップリーダーの元で、リーダーシップを学ぶことが近道だと思います。なぜならば成人発達理論などでも言われていますが、発達段階が極めて高いトップリーダーの再現性については、まだまだ”科学”されていないのが実情です。そのため、「リーダーはリーダーを育てる」が最短距離の習得法のように思います。そのため、まだ残念ながら、リーダーシップは同時・多発的に、広く普及できないのかもしれません(ご興味ある方は、大学などで最先端のリーダーシップ研究されている方に詳細をお聞きください。)。

 

 

※この記事は、2019年9月14日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 007

 

私が伝えたいリーダーシップは、単なる「知識」ではなく生きた「知恵」であり、「やり方」ではなく「あり方」です。

リーダーシップに関する話をすると、本で学んだリーダーシップにかかる「知識」であったり、テクニカルな「やり方」であったりをコメントバックされる方が一定数いらっしゃいます。

なぜ強弁して、リーダーシップについて”知っている感”や”やっている感”を出すかというと、当人は本当に向き合うべき問題点を理解しているからではないかと私は感じています。

自分の弱さを認められて問題を直視できるということは、成長や成功への近道ですが、このこと自体が既に一つの大きなハードルのように思います。

私としても、この分かっていても・感じていても、すぐには助け出せないこの問題をどうにかしたいと日々思っています。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

 

【Q.7】
リーダーシップは儲かりますか?

 

<コメント>

急に俗っぽい質問をいただきましたが、皆さんが興味あることだと思います(笑)。

結論から言うと、リーダーシップは儲かると思います。

リーダーシップを正しく発揮すれば、より多くの人を動かすことができるようになります。

決して利己的ではなく、世のため人のために、夢や共感の力で多くの人を動かす。トップリーダーが行っていることです。

この「人を動かす」を、損益計算書を使って説明しましょう。

損益計算書において、一人でも多くのお客様が共感してくれれば売上高が増えます。次に、取引先が協力をしてくれれば原価は下がり、社員も例えばサービス残業をしてくれれば、人件費も本来かかるであろう金額よりも下がります。その結果、営業利益が増えるでしょう。

企業活動は多くの人の協力のもとで行われていますので、経済合理性の”枠外”で「人を動かす」ことができれば、リーダーシップは儲かるのです。

資金調達だって、多くの投資家・株主の共感が得られれば、巨額の資金調達も可能になりますし、金融機関からも協力が得られれば巨額の融資も可能になるでしょう。

私は、常日頃から、リーダーシップと資本主義は極めて親和性が高いと言っています。

リーダーシップ・スキルを身につけることで、「人を動かす」ことができ、売上拡大、経費削減、営業利益拡大のグッドサイクルを生み出すことができるようになり、さらには資金調達も自在にできるようになり資本主義システムを縦横無尽に使いこなすことができるようになると思います。

逆に、マネジメント・スキル優位な方は、リーダーシップ・スキル優位な方と違って、売上拡大や資金調達はあまり得意ではないかもしれません。そのため、合理化の余地のある大きい組織に入って、合理的に経費コントロールとオペレーション改善を行い、営業利益を増やすことが優秀な経営者と評価される近道だと思います。

リーダーシップに優れた人が企業の拡大フェーズでは不可欠であり、逆に、企業の緊縮フェーズではマネジメントに優れた人に活躍の出番があります。

資本主義の醍醐味は、売上拡大、営業利益拡大と新株発行による資金調達です。そのため、ぜひともリーダーシップ・スキルを身に着け、正しくリーダーシップを発揮して、大いに儲けたいものです。

 

 

※この記事は、2019年9月8日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 006

 

私は会社経営を通じて経験できる分かりやすいリーダーシップの事例として、スタートアップ企業でのエクイティ・ファイナンスを挙げています。

スタートアップ企業は、経営資源が乏しく、新しく立ち上げるビジネスが軌道に乗るまで、金融機関や投資家から資金調達をして、そのお金を原資に、会社組織を運営していかねばなりません。

資金調達の中でも、新株発行による資金調達のことをエクイティ・ファイナンスと言います。

スタートアップ企業のエクイティ・ファイナンスでは、経営者はビジネスプランを片手に、投資家に対して未来を提示して、その投資家から投資をしてもらうわけです。

その際、経営者には、主体性、社会性、他人を巻き込む力、実現可能性ある計画、コミット力・やり抜く力など様々なリーダーシップが求められます。

スタートアップ企業でのエクイティ・ファイナンスを経験すると、「0」から「1」への分かりやすい劇的な変化を目の当たりにでき、ほんの少しのリーダーシップが世の中を進めることに感動を覚えると思いますし、社会に対する一体感や全体性などを感じることができると思います。(似たようなビジネスプランやアイデアが同時に生まれる共時性も体験できるかも?)

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

 

【Q.6】
以下メタファーですが、よろしくお願いします。

知識や経験を刃として捉えた時、歳を経るたびに、その刃は自然と研ぎ澄まされていくものだと思います。一方で、研がれた刃は安易に振るうこと(行動や言動で示すこと)で他者を切り裂き、もし抜き方を間違えれば、自らをも切り裂く諸刃の剣となるようにも思います。
最近、この研がれた刃(知識や経験)の取扱いに困っています。少しでも気を抜くと、他者に対して振るってしまいそうになる。本当は振るいたくはない。

このような葛藤を感じた時に、どのように乗り越えれば良いでしょうか?

 

<コメント>

メタファーを使った、私の予想の斜め上をいく質問が来ました(笑)。

最初に言葉の定義をしたいと思います。

以前も紹介したとおり、成人発達理論では「水平的な成長」・「垂直的な成長」という考え方があり、「水平的な成長」は知識やスキルの獲得で、それに対して、「垂直的な成長」は「人間の器」のような認識の枠組みを指します。

質問文に「知識や経験」とありますが、質問文における「知識」は、まさに「水平的な成長」の指すものだと思います。「経験」は、多くの場合、「人間の器」を拡げる機会でもあり、「垂直的な成長」に繋がることもあるかと思いますが、ここでは「知識や経験」は「水平的な成長」として単なる知識やスキルの意味合いで使用しているものと思います。

さて、質問に回答したいと思いますが、いつものようにリーダーシップとマネジメントに大別して説明をしたいと思います。

私は、「知識や経験」は、決して未来志向なリーダーシップに基づくものではなく、過去に基づいて得られた知見だと考えています。そして、これは組織を効率的に運営するマネジメントとして重要だと思いますが、時と場合によっては、リーダーの信頼を失墜させたり、フォロワーみんなのやる気を削いだりするような害悪にすらなる可能性があると思います。

なお、この質問者の方は「知識や経験」は諸刃の剣になる、取扱いについて困る、本当は振るいたくはないと認識しているようで、この質問ができること自体が、発達段階が進んでいる方ならではのように思います。

マネジメント優位の方であれば、「知識や経験」の行使に躊躇はないと思います。

私は、リーダーが、ご質問にある「知識や経験」や組織の指示命令系統上の制度的権限など「パワー」を適切に行使できることは、フォロワーの尊敬を集める行為だと思います。

神話などで、なぜ年老いた村長に対して、フォロワーである若い村民たちに畏怖があるかというと、村長は適切に「知識や経験」や「パワー」を行使することができるからなのです。

適切な「知識や経験」や「パワー」の行使は、自制心がなければなりませんし、何よりも経験が必要になります。

適切に「知識や経験」や「パワー」の行使ができることが、村長に対する畏怖に繋がっているのです。

自分勝手な「知識や経験」や「パワー」の行使は、フォロワーにとって尊敬に値しない行為であり、単なる恐怖でしかありません。

「知識や経験」の行使について葛藤を感じた時に、リーダーの本来あるべき姿は、「知識や経験」の行使ではなく、未来志向で新しいビジョンの提示をすることだと思います。

しかし、リーダーにそこまでの確信やインスピレーションが得られないときは、とにかく慎重に「知識や経験」の行使をすべきです。

フォロワーは、リーダーの未来志向の失敗を、時にはチャレンジと評価し、尊敬すらするものです。しかし、リーダーが過去を振り返った挙句の失敗は、誰からも評価されません。

リーダーが、過去から学んだ「知識や経験」を行使して、空振りをしたのでは目も当てられません。

 

 

※この記事は、2019年9月3日付Facebook投稿を転載したものです。