リーダーシップ往復書簡 023

 

おかげさまで「リーダーシップ往復書簡」ですが、既にリーダーとして活躍されている方々やこれからリーダーを目指す方々から、毎回少しですがリアクションがあります。

このような読者層の皆さんなので、今般の未曽有の危機である新型コロナウイルス感染症の拡大問題において、ぜひとも各人で何ができるかを考えてもらいたいと思います。

リーダーシップとは組織のトップにだけに必要なものではありません。

本来、リーダーシップとは、ありとあらゆる人が発揮すべきもので、リーダーシップに組織における立場は関係ないのです。

新型コロナウイルス感染症の問題を考えたときに、ウイルス対策という高度な専門性と規模の大きさから、安倍首相や小池都知事など政治家の強いリーダーシップに期待するところが大きいのが事実でしょう。

しかし、私たちのような一般市民でも、この問題に対して、必ず世のため人のために貢献できるようなことがあると考えています。

決して大それたことはできないかもしれませんが、できること・身の回りのことから、リーダーシップを発揮したいと思います。

私のクライアントの中でも、既に3社がコロナウイルス問題を機に、リーダーシップを発揮しています。以下にご紹介します。

1. VAAK Inc. 新型コロナウイルス対策として、感染リスク検知AI「VAAKEYE+」の試験提供を開始

2. 株式会社フェアワーク 新型コロナウイルスに負けない! 「医療・製薬・介護業界応援キャンペーン」実施のお知らせ

3. Ekuipp(エクイップ)株式会社 新型コロナウイルス対策 日本の「ものづくり」を応援! 「中古計測器・測定器の現金化キャンペーン」実施のお知らせ

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

 

【Q.23】
新型コロナウイルス感染症の影響で、会社の資金繰りが切迫しています。そのため、全員が今までと同じというわけにはいかず、会社で人員削減を検討しなければならない状況です(正確には、当該ウイルスの影響による売上減少がいつまで続くか分からないため、保守的に考えて、リストラをしなければならないと考えています。)。

「トロッコ問題」(=「ある人を助けるために他の人を犠牲にするのは許されるか?」という形で功利主義と義務論の対立を扱った倫理学上の問題・課題)のようになってしまい、日々、悩みを抱えています。

リーダーならば、どのように、この問題に対処するのでしょうか?

 

<コメント>

まさにリーダーのリーダーシップが試される局面だと思います。

全員を助けることができないということは、必ず何かしらのリアクションが生じるでしょう。

まず、リーダーとして、この厳しい意思決定を行い、その結果に対して責任を持つという「覚悟」を持ちましょう。

リーダーは、現状に挑戦し、正しいことをし、人間を優先させ、長期的な視野を持ち、未来を目指す存在です。

そのため、もう一度、今回の問題が本当に「トロッコ問題」なのかを、ぐるぐると頭を回転させて、ありとあらゆる可能性を模索し、確認しましょう。

ただ漫然と現状を受け入れるのではなく、現状に挑戦するのです。

そのうえでもなお、人員削減をしなければならないということならば、最小の人員になるように最大限の努力をしましょう。

実行に際して、リーダーは、「制度」ではなく「人間」を優先させて、正しくあるようにしましょう。

それと同時に、残った人たちに対して、長期的な視野に立った方向を示し、未来を目指すように導かなければなりません。

リーダーがその場から逃げて問題解決になるならば簡単なのですが、残念ながら、そうはならないことがあります。

今までもそうであったように、リーダーは、全てのことがらに対して、最終的な責任を負っています。

問題と真正面から向き合って、出来る限り、人として正しい行動を目指してもらいたいと思います。

なお、今の日本においては、もしリストラをすることになったとしても、失業保険であったり生活保護であったりが充実しておりますので、直接的に「生き死に」に影響することはないと思います(新型コロナウイルス感染症に罹患するほうが、よほど深刻です。)。

但し、ちゃんとスタッフ一人一人の生活とキャリアと向き合うのが、リーダー(経営者)としての務めですし、筋だと思います。

 

 

※この記事は、2020年4月4日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 022

 

企業再生の要諦の一つとして「経営者の覚悟」があると思います。

経営者が最後までやりきる覚悟があれば、企業は再生できるものです。

面白いもので、企業再生では、経営者その人自身に実務能力がなくても構わないのですが、その経営者が、前を向いていて、多少の苦労や責め苦に耐える覚悟があれば、企業再生ができるものです。

逆にいえば、経営者やスタッフがいかに実務面において優秀であっても、経営者に覚悟がなければ、企業再生は難しいと思います。

企業再生では、赤字が続いており、資金繰りに窮していることが多く、手元資金を考えると、時間との戦いであることが一般的です。

そのため、平時の会社経営以上に、短期間で、会社が抱えている問題と対峙しなければなりません。

その際に、経営者に、多少の返り血を浴びてでも実行する覚悟があるかないかが、その会社の企業再生が実現できるかのポイントになります。

どのような戦いでも、その人に覚悟があれば負けませんし、覚悟のない人は負けてしまうものです。

特に今の世の中は、会社のマネジメントにかかる解決策(テクニック)はインターネットにあふれていますので、「経営者の覚悟」があれば、幅広く様々な選択肢を選ぶことができると思います。

コロナウイルスに端を発した恐慌によって、会社の現状に不安を覚えている経営者も多いかもしれませんが、所詮、会社経営は直接的に命のやり取りが発生するような物騒なことでもありません(コロナウイルスの方が遥かに怖いです。)。

今こそ経営者として、社員に尊敬され畏怖されるような覚悟を決めようではありませんか。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

 

【Q.22】
リーダーシップとリスク・マネジメントの関係について教えてもらえないでしょうか?

 

<コメント>

リーダーは、万が一の不測の事態に備えて、しっかりとリスク・マネジメントをしなければならないと思います。

私はリーダーシップとマネジメントを対比して説明をすることが多いのですが、決してマネジメントが不要と言っているわけではありません。

今回のテーマに沿って回答すると、リーダーシップとリスク・マネジメントは共存し得るテーマです。

リーダーとは、暗闇の中、集団の先頭で、たいまつを持って、フォロワーを率いて進む存在です。

リーダーは、フォロワーに対して、世のため人のためなど旅の行き先を提示しなければなりませんが、併せて、現実的かつ具体的な勝ち筋の提示もしなければなりません。後者において、必ず必要になるのがマネジメントです。

このマネジメントの中の一つが、リスク・マネジメントになります。

桃太郎にしろロード・オブ・ザ・リングにしろ、古今東西のストーリーでは、リーダーとフォロワーは一緒に旅に出るわけです。

読者の皆さんが、フォロワーになったつもりで考えてもらいたいのですが、リーダーが万が一の場合を一切考えていなかったら、一緒に旅を続けられますか?

リーダーは、夢を描いて、楽天的に世の中や人を捉え、信じるだけではなく、リスク・不確実性など現実とも大いに向き合わなければならないのです。

このような万が一の不測の事態がリーダーの不安の正体だと思いますし、この不安と真摯に向き合うから、今回、本稿の前段に書かせてもらったような覚悟がリーダーに備わっていくものだと思います。

リーダーにリスクマネジメントは必要で、リーダーは、勇猛なだけ、楽観的なだけではいけなくて、臆病でもなければならないと思います。

 

 

※この記事は、2020年3月20日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 021

 

昔、白洲次郎が、「地位が上がるほど、役得ではなく、“役損”が増えることを覚えておけ」と言ったと言われています。

本気で組織のため、世のため人のために身を粉にして努力しているリーダーは、フォロワーはじめ他の人から見たら、「役損」のほうが多いかもしれません。

ただ、リーダーは、フォロワーに仕えていること、フォロワーとともに夢を追いかけていることが喜びであるという側面もあって、損得という次元では語れないようにも思います。

一般的な感覚では、この白洲次郎の言葉は、少なくとも、組織において地位があがれば「役得」だけでなく「役損」があることだけは事実でしょうか。

景気の浮き沈みで考えると、この数年は好景気の真っ只中にいましたので、経営者は「役得」が多かったかもしれません。これに対して、景気循環を考えると、これから本格的な不景気になった場合、経営者は会社のために資金繰りに奔走したり、スタッフをリストラしたりと「役損」が多いかもしれません。

私もアラフォーになって思うのは、組織のトップである社長ですら、得も損もあって、世の中は本当によく出来ていると感心します。

白洲次郎の言葉に私なりのコメントを加えるとしたら、「地位が上がれば”役損”が増えることもあるでしょうが、その”役損”は、自分の人格を磨くきっかけになるし、楽しまないともったいない」だと思います。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

 

【Q.21】
いつも楽しく「リーダーシップ往復書簡」を拝読しています。最近のスタートアップ経営者は積極的にSNSで情報発信をしていますが、リーダーはSNSを積極的に活用したほうがいいでしょうか?

 

<コメント>

SNSは優れたコミュニケーション・ツールですので、リーダーが積極的に活用するのは良いことだと考えます。

リーダーのはじめの一歩は、フォロワーの獲得です。リーダーシップを勉強すると、「フォロワーがいることがリーダーである」という定義もあるぐらいです。

リーダーがフォロワーを獲得するには、リーダーが思い描く、世のため人のために、ああしたい、こうしたいを、自然体かつ率直に、フォロワーに語りかけるしかないと思います。

小さい子どもが、周りで遊んでいる友達たちに対して、「入れて!」と言って一緒に遊ぶように、コミュニケーションは仲間づくりの第一歩です。

SNSは、情報の速報性、拡散性、効率性に優れていますので、積極的に活用すれば、多くの人々の共感を獲得し、フォロワーが増えて、リーダーやフォロワーの夢の実現に役立つものと思います。

しかし、リーダーがSNSを活用するうえで注意しなければならないこともあります。それは、リーダーが自然体でSNSを使用することと、リーダーの目的・本分を間違えないことの2つです。

SNSは、コミュニケーションの一つですので、誇張表現や虚偽の内容は避けて、あくまで自然体で活用することが大事です。

例えばTwitterでも、140文字の短い投稿の行間から、面白いぐらいに、そのユーザーの心理状態が透けて見えるものです。

SNS上とはいえ、「やり方」を駆使して、フォロワーや周囲の人々をずっと騙し続け、動かし続けることは難しいのです。

リーダーは人格を磨いて、リーダーとしての「あり方」を身に着け、それを自然体にSNSで発信すれば良いでしょう。

また、リーダーは、あくまでSNSは目的を達成するための手段、コミュニケーション・ツールであって、SNSそのものを目的にしないように注意しなければなりません。

SNSは、表面的な承認欲求を満たしてくれ、中毒性があるため、気を付けなければなりません。

時々、SNSを通じた自己ブランディングばかり熱心なスタートアップ経営者がいますが、これは明らかに間違っています。

リーダーは、夢を叶えるために、フォロワーを引き連れて、旅に出なければなりません。リーダーが一生懸命、努力している姿に、人々は感動し、さらなるフォロワーとなるのです。

もしリーダーが、本分を間違えて、SNSで情報発信ばかりしているのであれば、それは単なる夢想家・評論家・批評家に過ぎません。

 

 

※この記事は、2020年3月14日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 020

 

リーマン・ショックあたりの時期に「ブラック・スワン」という本が流行りましたが、コロナウイルスはまさに「ブラック・スワン」なのではないでしょうか。

これだけテクノロジーが進化した21世紀に、まさか疫病が世界を覆うとは、多くの人々の想像を超えた事態が起きているのではないかと思います。

「ブラック・スワン」とは当たり前だと考えられていることがひっくり返ることを意味しており、統計上の外れ値(例外)であって、過去の分析をしても予想が難しいです。そのため、この予測不能な出来事が与えるインパクトは極めて大きいです。そして、発生した後では、説明可能で、予測可能と思わせるのです。

リーダーとは、暗闇の中、集団の先頭で、たいまつを持って、フォロワーを率いて進む存在です。

リーダーは、この「ブラック・スワン」を含め、予測不可能な暗闇を、少しの勇気をもって、前に進まなければなりません。

この困難を乗り越えれば、「ブラック・スワン」は当たり前の生き物として捉えられるようになり、私たちは一つ前に進むことができます。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

 

【Q.20】
コロナウイルスやコロナウイルスによる経営不安が長引く可能性もあるようです。そのため、前回に引き続いて、非常時、危機的状況下において、どのようにリーダーは振る舞えばいいのかを教えてもらいたいです。

 

<コメント>

平時であれば、今の日常が永遠に続くかのように思わせるためか、組織のトップをはじめ、人々が持っているリーダーシップを意識することはないかもしれません。

しかし、非常時、危機的状況下になると、「性善なれど弱し」なフォロワーでは背負えない責任や期待が一気にリーダーにのしかかります。そして、今まで興味がなかった人までが、急にリーダーの評価をし始めるのです。

さて、このような状況下で、どのようにリーダーは振る舞えばいいのでしょうか。

まず理解しなければならないことは、リーダーの行動原理(プリンシプル)・「あり方」は、平時であっても、非常時であっても変わらないということです。

むしろ逆に、リーダーは、非常時においても、平時と同じ価値観で動けているか、同じことを言っているか、言行一致しているかが注目されることが多いと思います。

平時に、きれいごとを言っているリーダーが、実際に問題に直面した途端、「焼け火ばし」を持つことができずに、我が身かわいいで、条件反射的な対応をしてしまったり、今まで貢献してきたフォロワーに対して冷淡な対応をしてしまったりなどはよくあることかと思います。

リーダーたるもの、非常時、危機的状況下において、問題と向き合う強さ・胆力がなければなりません。こういった時にリーダーの真価が問われます。

平時に日本電産の永守社長は「良いときも悪いときも分かち合うのが日本の強みだから、雇用は守る。リストラはしない。」と言っていました。その後、リーマン・ショックが起きた際に、同社は誰もリストラをせず、そのかわり平均5%の賃金カットをしましたが、このような言行一致はなかなかできるものではありません(なお、その後、同社は賃金カット分に利子まで付けて弁済しました。)。

次に、リーダーの具体的な振る舞い方ですが、非常時においては、外部環境が目まぐるしく変わったり、状況の見通しが悪くなったりすることを意識しながら、適時適切に、以下を意識して立ち振る舞うと良いと思います。

特に、不安定な組織や組織のルールを守ることに注力するのではなく、リーダーは、目の前にいる人のことを考え、正しいことをし、未来志向で、長期的な視野にたって方向を示すことが必要です。

リーダーは、組織を優先するのではなく、人間を優先させる。
リーダーは、管理して人を動かすのではなく、心に働きかけて人を動かす。
リーダーは、正しく手続きを処理するのではなく、正しいことをする。
リーダーは、数字を追いかけるのではなく、未来を目指す。
リーダーは、管理するのではなく、変革する。
リーダーは、現状を受け入れるのではなく、現状に挑戦する。
リーダーは、目先のことを考えるのではなく、長期的な視野を持つ。
リーダーは、複雑さに対処するのではなく、方向を示す。

 

 

※この記事は、2020年3月9日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 019

 

世界的にコロナウイルス感染症の拡大が懸念されています。

既に経済活動にも影響が出てきており、世界同時株安・景気後退などマクロ経済の数値悪化だけでなく、一部の業種業態の中小企業は売上急減による経営危機まで起きているようです。

後述のとおり、読者の方からもご質問をいただいておりますが、このような時こそ、皆さんのリーダーシップが問われるときだと思います。

今までも繰り返し記載をしてきていますが、リーダーシップとは組織のトップにだけに必要なものではありません。本来、リーダーシップとは、ありとあらゆる人が発揮すべきもので、リーダーシップに組織における立場は関係ないのです。

特に、このような非常事態になると、人間は動物に戻るのです。生き残るためには誰についていけばいいのか、自分を守ってくれる人は誰なのか、明日を切り拓いてくれる人は誰なのか。本当のリーダーシップが問われます。

企業体力のある大企業や平時では信じられないかもしれませんが、組織の危急存亡のときは、組織で定められたパワー(地位や権限)とは別の判断基準で物事が動いていくことが多々あるのです。つまり、下からでも組織を動かすことができるのです。

ぜひとも世のため人のため、所属する会社・組織のために、どのような状況下においても、あきらめることなく、粘り強く、リーダーシップを発揮していってもらえればと思います。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

 

【Q.19】
非常時、危機的状況下におけるリーダーシップについて教えてもらえないでしょうか。

 

<コメント>

まず「非常時、危機的状況下」の特徴を理解しなければなりません。

平時では、人は、所属する組織が存続することや自分がその組織に継続して所属することを前提として、身体的・金銭的な安全を確保して、安定的に、将来を想像することができます。

しかし、「非常時、危機的状況下」では、多くの場合、何かしらの外部要因から、急激に将来の見通しが悪くなり、所属する組織の存続可能性が急減したり、自分がその組織から追い出される可能性が増えたりするなど、漠然とした大きな不安とともに、身体的・金銭的危機が迫り来る状態です。

では、このような中で、どのようにリーダーシップを発揮すればいいでしょうか?

リーダーとは、暗闇の中、集団の先頭で、たいまつを持って、フォロワーを率いて進む存在です。これは平時であっても、非常時であっても変わりません。

「非常時、危機的状況下」において、特にリーダーが意識しなければならないことは、(1)フォロワーの漠然とした不安の払しょく、(2)科学的エビデンスに基づく合理的な状況分析、そして、(3)不確実な中での意思決定と実行です。

普通の人、フォロワーの特徴は「性善なれど弱し」なのです。常にリーダーは、自分とは違って、フォロワーが弱い人たちであることを忘れてはいけません。不安を強く感じれば、普通の人は、周囲の人に、八つ当たりをしたり嘘をついたり”性善”ではなくなり”嫌なヤツ”になってしまうのです。

「非常時、危機的状況下」では、リーダーが時に「焼け火ばし」を持ってでも、漠然とした不安を払しょくし、フォロワーに安心・安全を提供しなければなりません。

そして、漠然とした不安を払しょくするためには、科学的エビデンスに基づく合理的な状況分析が不可欠になります。フォロワーの漠然とした不安は、科学的エビデンスによって、問題点となって明確となり、最悪のケースも想定できるようになります。

こういう時にリーダーは努めて冷静でなければなりませんし、合理的な思考力・判断力を有していることをフォロワーに示さなければなりません。

万が一、問題解決できないとしても、最悪のケースが想定できないという底なし沼の状況や、リーダーがパニックになっており合理的な判断ができない状況に対して、人は恐怖するのです。

また、フォロワーの漠然とした不安を払しょくするためには、リーダーは、その状況分析に基づいて、完全な正解・問題解決がないとしても、不確実な中で、その時、その組織にとって最善・最良となる意思決定をして、方向性を示さなければなりません。

そして、そのフォロワーに提示した方向性を、迅速に実行に移して、やり切って、この危機を乗り切らなければなりません。

多くの場合、「非常時、危機的状況下」はずっと続くことはないでしょう。リーダーには、この危機的な状況を人間的な成長の機会と捉えてもらって、真正面から向き合って、リーダーシップを発揮してもらいたいと思います。

最後に、こういう時こそ、リーダーはユーモアを忘れてはいけません。フォロワーと大いに笑って、深呼吸をして、現実的な問題解決にあたってください。

 

 

※この記事は、2020年2月29日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 018

 

リーダーシップと親和性がある考え方として、ここ2回にわたり、パブリックリレーションズ(Public Relations)とインテリジェンス(Intelligence)を紹介してまいりましたが、今回が最後になります。

最終回は株式会社制度です。私はリーダーシップと株式会社制度には非常に親和性があると考えています。

資本主義社会とまで広げて記載をしてもよかったのですが、本稿では、具体的なイメージが湧きやすいので、株式会社制度に絞って記載をします。前提がズレないように、改めてこの文章での定義をします。

(定義)Wikipediaより
「株式会社とは、細分化された社員権(株式)を有する株主から有限責任の下に資金を調達して株主から委任を受けた経営者が事業を行い、利益を株主に配当する、「法人格」を有する会社形態であり、営利を目的とする社団法人である。」

(特徴)Wikipediaより
「株式会社の特質は、(1)法人格、(2)出資者(株主)の有限責任、(3)持分の自由譲渡性、(4)所有と経営の分離、(5)出資者(株主)による所有の5点にあるとし、この五つを兼ね備えたものが株式会社の基本形である」

私が本格的にリーダーシップを学んだのは20代後半の時でしたが、当時、上場会社の役員だったのですが、この親和性に気が付いた時には感動すら覚えました。

リーダーシップさえあれば、資本市場をフルに活用できるのです。

経営者たるリーダーが、お客様の困りごとを解決する商品・サービスを提供するビジネスプランを考えて、それに対して出資してくれる投資家と一緒に当該ビジネスプランを具現化してくれる仲間(スタッフ)を募ります。投資家と仲間はフォロワーなのです。

一般的な感覚では、株主が経営者を選任する権利を持っていることからも、株主のほうが経営者よりも立場が上なのですが、最初は経営者がリーダーで、株主はフォロワーなのです。

当初のビジネスプランに従って、経営者が継続して努力して、お客様の困りごとを解決していけば問題ありませんが、例えば、そこそこの成功で、経営者が社長という地位にあぐらをかきはじめて、最善の努力をしないなどがあるかもしれません。

その場合、リーダーシップが、経営者から株主に移転するのです。

株主が、株式会社制度で規定されている株主の権利から、イニシアティブをとって、経営者に対して、リーダーシップの発揮を求めることができるのです。

お客様の困りごとを解決して会社組織を大きくするというリーダーシップの下では、経営者と株主はあくまで対等な関係であることは忘れてはいけないことだと思います。

さらに株式会社制度の凄いところは、上場会社で時価総額が巨大化した場合、過去の公募増資や金融機関との持ち合い解消から大株主も数%しか保有していない場合は、株主と経営者の力関係が逆転して、経営者のほうが強くなるのです。

つまりは、経営者が強いリーダーシップを発揮して、多くの株主から信任を得た場合は、資本主義社会といえど、経営者の力が強大になるのです。

もちろんユニクロ柳井さんやソフトバンク孫さんのように、経営者が大株主としての地位も維持してオーナーシップを持ちながら強いリーダーシップを発揮することは素晴らしいことだと思いますが、例えば、オリックス宮内さんのように、決して自身は大株主ではないですが、経営者の地位だけで、強いリーダーシップを発揮して、企業を大きくするのも素晴らしいことだと思います。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

 

【Q.18】
私は、マネジメントをしっかりとして、部下には組織のルール通りのことをやってもらうべきで、それ以上を望むべきではないと考えていますが、どう思われますか?

 

<コメント>

最近よく聞く考え方だと思いますが、私は少しだけ違う考えを持っています。

私も、組織である以上、リーダーはマネジメントをしっかりとして、リーダーもフォロワーも組織のルール通りのことをやるべきだと思いますが、リーダーは、フォロワーを信じて、それ以上を望んでみたほうがいいのではないかと思います。

多くの人が、リーダーシップとマネジメントが両立しないように誤解をしているようですが、この2つは同時に存在し得るのです。

リーダーやフォロワーなどの夢を実現するためには、組織マネジメントは欠かせません。マネジメントは現実的な勝ち筋には欠かせない要素です。特に組織が肥大化・複雑化して大きい場合は、組織としての役割分担であったり、ルールであったりがなければ、効率が悪く、実現可能性が遠のいてしまいます。

だからといって、リーダーが、フォロワーを、組織のため・みんなのためだからと、非人間的に部品のように取り扱っていいかというと、それは違うと思います。

以前にも記載をしましたが、全ての人がリーダーシップを発揮すべきです。
マネジメントの考え方に沿って記載すれば、フォロワーにも正しくリーダーシップを発揮してもらったほうが「効率が良い」のです。

なぜならフォロワーである部下は、多くの場合、その組織において、現場を知っている唯一の人間なのです。

そのため部下が組織のルール通りのことをやってくれるだけではなく、彼らにリーダーや組織の目線に立って、リーダーシップを発揮してもらい、組織のルールを改変するような提言をしてもらったほうが、より良いに決まっています。

そこを制限してしまっては、現場を知らない人の指示で組織運営することになってしまいます。

全てが夢や目的の下では平等であるリーダーシップの世界では、一時的に、フォロワーが、リーダーにとって代わるのが正しい場合もあるわけです。

なかなかこのようなケースはないかもしれませんが、大局のために、このような意思決定ができるリーダーは優れたリーダーだとも言えると思います。

もちろん現実問題としては、リーダーとフォロワーでは情報格差がありますので、全ての全てがうまく進まないかもしれませんが、とはいえ、リーダーたるもの、フォロワーを信じて、任せながら、組織を拡大していかねばならないと思います。

 

 

※この記事は、2020年2月23日付Facebook投稿を転載したものです。