執筆者 小松 裕介 | 5月 9, 2020 | CEO

リーダーシップ研究は、世界で大きな影響力を持っているトップリーダーたちにヒヤリングをして共通項を括りだすといった帰納法によるアプローチも多いように思います。
演繹法ならば「前提が真であれば、結論も必ず真となる」わけですが、帰納法の場合は「前提が真であっても、結論が必ず真にはならない」わけです。
そこにリーダーシップの実践の難しさがあります。
とはいえ、前提条件の違いがあるため、まだ再現性は乏しいかもしれませんが、リーダーシップの領域が、急速に”科学”され始めていることは事実です。
リーダーシップに興味ある方は、リーダーシップの世界が、自己啓発本の世界と違って、”非科学”ではないことを理解して欲しいと思います。
リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。
また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

【Q.5】
同世代の人員で構成されたチームなどであっても、人が群れると自然と構成員間で「権力関係」が出来てくるように思う。
それらを回避することは可能か?
<コメント>
ご質問に回答する前に、質問文で表現されている「権力関係」を正確に定義する必要があると思います。
ここでは仮に「権力関係」を、人を動かし得る動機を持つ関係と定義したいと思います。
私は組織を語る際にリーダーシップとマネジメントに大別して説明することが多いのですが、「権力関係」には、夢や希望を共有するリーダーとフォロワーの関係のような”リーダーシップの関係”と、地位による力(パワー)を有する組織において役割が固定化され指揮命令系統が明確化された上司と部下のような”マネジメントの関係”があると考えています。
人間は社会的・政治的な生き物です。そのため、人が2人と集まれば、自然とそれぞれが役割を持ち、その役割を果たそうとします。
どのような属性の人たちで構成される組織であれ、人が群れると自然と構成員間で「権力関係」が生じるものと思います。
この「権力関係」の発生を回避することが可能かという問いに対しては、私は可能であると考えています。
しかし、回りくどい言い方になりますが、現実的には、この「権力関係」の発生全てを回避する必要もないのではないかと考えています。
なぜ可能だと考えるかというと「ティール組織」がその答えの一つのように思います。
「ティール組織」とは、上司や部下といった概念や指示命令系統はなく、構成員全体が信頼に基づいて、独自のルールや仕組みを工夫しながら目的実現のために組織運営を行っていく組織のことです。
組織の存在目的、構成員の自主性、さらに全体性があれば、組織そのものがまるで一つの生き物のような存在となり、構成員間の「権力関係」の発生を回避することが可能かもしれません。
但し、私は、現実的には、「ティール組織」は非常にハードルが高いと考えています。なぜならば構成員一人一人が全体性まで意識できるようになるには、相当程度の発達を要すると思うからです。
そのため、現実的には、行き過ぎたマネジメントによる「権力関係」では弊害が生じますので是正しなければなりませんし、地位による力(パワー)によって人を動かすこともできるだけ避けなければなりませんが、少なくとも、個々の構成員が主体的にリーダーシップを発揮し、リーダーとフォロワーの関係を構築するという「権力関係」の発生まで回避しなくてもよいのではないかと思います。
むしろ、そちらの方が、組織のアウトプットがより良く出て、構成員の満足度も高い、極めて現実的な答えのように思います。
※この記事は、2019年8月31日付Facebook投稿を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO
2013年3月にソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社前身の株式会社スーツ設立。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し上場会社の子会社化を実現。2022年12月に株式会社スーツを新設分割し当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。
執筆者 小松 裕介 | 5月 8, 2020 | CEO

「リーダーシップ往復書簡」ですが、おかげさまでコメントも少しずつ増えてきて嬉しいです。私のFacebookの友人・知人だと経営者や投資家の方が多いわけですが、皆さん、やっぱり興味あるんですね。リーダーシップ(笑)。
とはいえ、私の能力不足から少し懸念があります。それは「言いたいことが正しく伝わっているのか?」という点です。
これは私の文章が拙いということもあるのですが、記載内容が今の私の成長度に応じた感覚的な表現を使っているからです。
成人発達理論によると、自分よりも上の意識段階を理解できないとされています。ロバート・キーガン教授だと成長度は4段階に分類されるわけですが、例えば、第4段階にある人には第1段階から第3段階の人の考え方を理解することができますが、第1段階の人は第2段階以降の人の考えを理解することができません。
決して私の成長度が高い段階にあると言いたいわけではなく(※ 成人発達理論の本によれば、必ずしも成長度が高いから良いというわけでも、社会により多くのアウトプットが出せるというわけでもない。)、より多くの人に、リーダーシップに興味を持ってもらって、また、有益な文章・情報にするにはどうすればいいのかを考えています。
リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。
また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

【Q.4】
ありのままであること(オーセンティック・リーダーシップ)は重要だと思うが、そうなるきっかけを意図的に他者に与えることは可能だと思うか?
業務の中で、それを実現するには何が必要か?
<コメント>
私も、リーダーはありのままであること、自然体であることが望ましいと考えています。
リーダーのあるべき行動様式である「あり方」とは、一つ一つの行動である「やり方」と違って、リーダーの人間性そのものです。人間性は偽ることはできません。だから、リーダーは自然体で構わないですし、自然体であってもフォロワーを魅了できなければなりません。
私が人を動かすにはリーダーシップが大事だという話をすると、必ずと言っていいほど、「どのようにやればいいですか?」とか「どのようなテクニックですか?」という質問を受けます。
しかし、リーダーシップとは「あり方」であって、「やり方」ではないのです。
リーダーに不可欠な「人として正しい」という価値基準があります。子供の時に両親や先生などから教えられた「人として正しい」という普遍的な道徳観や倫理観に基づいた価値基準は「やり方」ではありません。
質問に戻ると、ありのままであること(オーセンティック・リーダーシップ)のきっかけを意図的に他者に与えることは可能か?という問いに対する回答ですが、可能だと思います。
これについては、日本人には理解しやすい事例があります。
それは、茶道、書道、空手や歌舞伎などにおける「型」の習得と同じではないかと思うのです。
「型」は、具体個別の「やり方」というよりは、その背後にある思想であったりたたずまいであったり「あり方」まで表現しており、単なるテクニックに留まるものではなく「深度」があると思います。
この「型」を多くの人々が理解し、魅了されていることを考えると、ありのままであること(オーセンティック・リーダーシップ)の重要性やきっかけを同じように意図的に他者に与えることは可能であると考えます。
「業務の中でそれを実現するには何が必要か?」という問いですが、ありのままであること(オーセンティック・リーダーシップ)のきっかけを意図的に他者(対象者)に与えることを実現するためには、以下が必要ではないかと思います。
<意図的にきっかけを与える方法>
1.対象者が、見て感じ取って「やり方」を習得し、反復継続する。
2.対象者がオープンマインドの状態で、既に深い理解を習得している人(メンター)との対話を行い、一人で深く考える時間を作る。
3.対象者が2で具現化・統合化された「あり方」とともに改めて実行する。
周囲の人々は、対象者がきっかけを得るために、導いてくれるメンターと何より時間を用意する必要があるのではないかと思います。もちろん、前提として、対象者は真摯にものごとやメンターと向き合わなければならないと思います。
上記は、私は再現性あるプロセスだと思いますが、なかなか会社の日常業務の中で実現していくのは大変かもしれません。なお、前述の「型」の習得も同じようなプロセスなのではないかと思います。
※この記事は、2019年8月27日付Facebook投稿を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO
2013年3月にソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社前身の株式会社スーツ設立。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し上場会社の子会社化を実現。2022年12月に株式会社スーツを新設分割し当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。
執筆者 小松 裕介 | 5月 7, 2020 | CEO

「リーダーシップ往復書簡」ですが、一部の読者の方から個別にご連絡をいただき、ご好評いただいているようで嬉しいです(リーダーシップにご興味ない方にはお目汚しかもしれませんが、ご容赦ください。)。
大人になると不思議なもので、自己成長に興味がある人とない人でとても差があります。人生100年時代ですから、自己成長に興味ある人が貪欲に情報を吸収していきどんどん成長していくのを目の当たりにすると、まずは、どうすればその状態に持っていけるのかを考えます。
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【Q.3】
リーダーシップを発揮する上で必要だと思う基礎的な素養は何か?(知識、技能、経験など)
<コメント>
私が考えるリーダーシップを発揮する上で必要だと思う基礎的な素養は、1.自己認識力、状況把握能力、2.正しさ、倫理観、3.利他の心、4.コミュニケーション能力です。
もちろん、リーダーが、MBAで教えるようなマーケティング、アカウンティングやファイナンスなどマネジメント・スキルを知っているに越したことはないのですが、そちらよりも、昔から言われる「人間の器」のような認識の枠組みのほうが素養として重要だと思います。
このあたりについては、成人発達理論でも「水平的な成長」・「垂直的な成長」と表現されているかと思います。「水平的な成長」は知識やスキルの獲得で、それに対して、「垂直的な成長」は「人間の器」のような認識の枠組みを指します。
1.自己認識力、状況把握能力
なぜ自己認識力、状況把握能力が必要と考えるかというと、まず、自己認識力については、自分がどのように他者から見られているのか、自分が他者に対してどのような影響を与えているのかを認識する必要があると思うからです。それが全ての出発点だと思います。
次に、状況把握能力については、ここでは私は他者を知ること、他者に興味を持つことの意味で表現しており、複雑化し高度化している現代社会において、複雑に絡み合った糸をそれぞれ正確に理解する能力がなければ、継続して正しく行動することができないと考えるからです。もう少し感覚的な表現をすると、状況把握能力が乏しいと「志の立て方」を誤ってしまう可能性があると思います。
2.正しさ、倫理観
なぜ正しさ、倫理観が必要と考えるかというと、これらが自己と他者をつなぐ共通認識部分であり、人を動かすうえでの大義名分になるからです。
リーダーたるもの正しさや倫理観がしっかりしていて、さらにはその優先順位をつけることができなければ、複雑に絡み合った利害関係を紐解くことができません。
3.利他の心
なぜ利他の心が必要と考えるかというと、リーダーの原点・出発点が「利己的」では、中長期的に人を動かすことはできないからです。
私の好きな言葉に「世のため人のため」という言葉がありますが、まさに「利他」や「無私」を表現した言葉だと思います。
4.コミュニケーション能力
つらつらと書いてきましたが、最後に、今までの1~3を、フォロワーに、率直に伝えるコミュニケーション能力が必要だと思います。
コミュニケーション能力と記載しましたが、リーダーが必要なコミュニケーション能力は、前述の「水平的な成長」で言われる知識やスキルではなく、「垂直的な成長」で言われる「人間の器」や認識の枠組みを提示できるコミュニケーション能力です。もう少し感覚的な表現をすると、フォロワーに対して、「気づき」を与えるコミュニケーション能力です。
この能力があることにより、フォロワーの成長を促進することができ、より多くの人を動かすことができるようになると思います。
なお、今回は重点的に、マネジメント・スキルではなく、俗っぽくいうと「リーダーシップ・スキル」に焦点を当てて記載をしましたが、訓練や経験なしに、いきなりこれらの「リーダーシップ・スキル」が身につくことはないのではないかと思います。人間は誰しも勝ち馬に乗りたいものです。そのため、マネジメント・スキルを用いて、分かりやすく合理的・論理的に、フォロワーに「勝ち筋」を提示することも価値あることだと思います。
※この記事は、2019年8月22日付Facebook投稿を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO
2013年3月にソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社前身の株式会社スーツ設立。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し上場会社の子会社化を実現。2022年12月に株式会社スーツを新設分割し当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。
執筆者 小松 裕介 | 5月 7, 2020 | CEO

おかげさまで「リーダーシップ往復書簡」ですが、第2回目を迎えることができました。
いくつか手元にリーダーシップに関する質問がたまっておりますので、しばらくはちゃんと不定期連載ながら、継続連載できそうです。
リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。
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【Q.2】
リーダーシップを発揮しているように見える。しかし、売上は上がらず組織は疲弊している(それどころか不正に近しい事象を隠す)。
これでもリーダーシップを発揮していると言えるのか?
影響力を持って人を動かすことは、方向性を間違うと危険なのではないか?
<コメント>
ご質問に回答すると、これではリーダーシップを正しく発揮しているとは評価できないと思います。
「影響力を持って人を動かす」を正確に定義しなければならないと思います。
一般的に、もし会社で社長から指示をされればサラリーマンは動く(指示に従う)と思います。この事例を使って、なぜサラリーマンが動くのか、動く理由に着目して、ご説明をしたいと思います。
この時、サラリーマンは、社長が持つ組織の指示命令系統上の制度的権限など「パワー」による影響力で動いているかもしれません。社長という組織上、最上位の地位にある人が言っているから、自分も”組織人”として指示に従わなければならないという考えです。
それとも、社長が持つ夢や社長に対する共感などの影響力で動いているのかもしれません。こちらは地位や組織は一切関係なく、一人の人間として、協力したい・動きたいという考えです。
私は、後者の影響力のことを、リーダーシップと表現しています。
ご質問の会社は、売上は上がらず、組織は疲労し、さらには、不正に近い事象まで隠されているとあります。その会社のリーダーが、私が先ほど定義したリーダーシップが発揮できているとは思えません。
読者の皆さんもご経験があるかもしれませんが、夢や共感の力で人が動いている時は、個人も主体性を持っているため日々を前向きに感じられ、組織にも活力が生まれ、不正が生まれるような余地はないものです。
また、ご質問の中で、発揮されているように見えているリーダーシップとは何かというと、「パワー」に基づく影響力が大きいのではないかと思います。
拙いながらも、私の経験則では、リーダーシップに基づく影響力を正しく行使できない人は、どうにか「人を動かしたい」と焦るからか、ますます「パワー」に基づく影響力に頼る人が多いと思います。
なお、私は、ビジネスシーンにおいては、影響力を大別して、「パワー」に基づく影響力とリーダーシップに基づく影響力としていますが、他にも心理学を悪用したマインド・コントロールやプロパガンダのような影響力もあると思います。
また、私は「パワー」に基づく影響力の行使を全て否定するものではありません。但し、その「パワー」に基づく影響力の行使には、行使するリーダーの人としての正しさ、また、行使時には細心の注意が必要だと考えています。
【ご参考】
リーダーと考える経営の現場・第2回 リーダーシップに立場は関係ない
※この記事は、2019年8月19日付Facebook投稿を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO
2013年3月にソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社前身の株式会社スーツ設立。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し上場会社の子会社化を実現。2022年12月に株式会社スーツを新設分割し当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。
執筆者 小松 裕介 | 5月 7, 2020 | CEO

「リーダーシップ往復書簡」では、更新がたまにになってしまうかもしれませんが、私がライフワークとしてテーマにしているリーダーシップについて記載してまいります。
以前、リーダーシップについて質問を募集したところ、ありがたいことに、いくつかご質問をいただいたので、それらに対して、現時点の自分の考えをまとめておこうと思います。
私は実務家なので、硬い表現を使うと、リーダーシップの社会実装に興味があります。もしかすると最新のリーダーシップにかかる学術的な見解とズレもあるかもしれませんが、その点については予めご容赦ください。
また、ご質問やコメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

【Q.1】
ヒロイックリーダーについてどう思うか?
彼らはいかにしてリーダーシップを発揮しうるか?
<コメント>
私は、リーダーとは、遠い距離間の人々においては英雄であり、近い距離間の人々においては家族や仲間のような存在であるべきと考えています。
ヒロイックリーダーとは、日本語では、”英雄的なリーダー”と翻訳されると思います。
従来、リーダーとは英雄的な存在だったと思います。
しかし、ヒロイックや英雄的という言葉の持つ、「俺について来い!」的な”マッチョなリーダー像”に対して、昨今は、サーバント・リーダーシップのような違う型のリーダーシップに注目が集まっているためか、ややネガティブな意味合いで使われているように思います。
今やヒロイックリーダーは、その強いリーダーシップによりフォロワーの自主性や主体性を奪ってしまったり、自己陶酔したりしているイメージすらあります。
ただ、私は、ヒロイックリーダーが悪いリーダーシップだとは捉えておらず、前述のとおり、本来はリーダーとは英雄的な存在なのです。
昨今の指摘を改善し、人々が期待するヒロイックな部分はそのままに、人々が嫌悪するヒロイックな弊害は修正して、リーダーシップを発揮すればよいと思います。
その改善方法は、冒頭に記載した距離感だと考えています。
具体的には、遠い距離間の人々には、それこそ鮮烈な眩いばかりの”強いリーダーシップ”が必要であり、近い距離間の人々には、”柔らかなリーダーシップ”が必要なのではないかと思います。
例えるならば、リーダーは太陽みたいなものかと思います。距離が遠いならば燦然と輝きますが、距離が近いとその強烈な熱で焼け死んでしまいます。
ヒロイックリーダーは、このようにフォロワーとの距離間に気を遣うことで、より適切にリーダーシップを発揮できるのではないかと考えます。
なお、このヒロイックリーダーに近い論点として、私は以前「リーダーと考える経営の現場・第10回 傲慢な存在」を記載しています。ご興味ある方はご一読ください。
※この記事は、2019年8月17日付Facebook投稿を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO
2013年3月にソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社前身の株式会社スーツ設立。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し上場会社の子会社化を実現。2022年12月に株式会社スーツを新設分割し当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。
執筆者 小松 裕介 | 2月 27, 2019 | CEO

前回に引き続き、なぜ私が一人でも多くの方にリーダーになってもらいたいと思うようになったのか、私の「リーダーシップの旅」について、記載をしたいと思います。
リーダーと考える経営の現場(第14回 リーダーシップの旅 前半)
私は、新卒で就職した上場企業でキャリアをスタートし、当該上場企業で経営者となったため、いわゆる「サラリーマン経営者」でした。そのため、株式会社における「パワー」の根源である株式を多く保有しておりませんでした。しかも、当該上場企業の株式を不当に買い占める株主がいるなど、権力基盤は極めて不安定な状況でした。
このような状況下で、メンターのアドバイスから、組織の地位や権限など「パワー」は一切使わずに、リーダーシップだけで企業再生させることを目指すことになりました。
企業再生をしなければならない業績不振企業には特徴があります。それは幹部社員クラスで社内政治が横行するため、一般スタッフの多くは顧客軽視・社内偏重となってやり過ごすこと・動かないことが良い選択肢のように思えてしまうのです。
私が企業再生をしなければならない会社は、過去においては、長年の歴史から来るブランドと莫大な不動産を有しており事業基盤がしっかりしていたので、真正面から事業に取り組むよりも、社内政治をして、地元の大企業の幹部としての名誉ある地位と利益の配分を少しでも多く掠め取ったほうが理にかなっていると思わせるには十分でした。そのような企業体質の中で、バブル崩壊が起き、金融負債が過多となり、業績不振になっていました。
当初の私の企業再生プランは、当該企業はブランドと不動産が事業基盤で、顧客からすればサービス・オペレーションをするスタッフによる付加価値はごく僅かだったため、まずは、とにもかくにも、株主権を行使してでも、一切仕事をせずに社内政治ばかりしている役員を解任(手続きは辞任に追い込む)し、一般スタッフの目線を社内ではなくお客様に戻す必要があると思いました。その後、しっかりと全社一丸となって、経営戦略の策定やマネジメントシステムの再構築などをしたほうがよいと考えました。
合理的な企業再生プランだと思ったのですが、メンターからは反対をされました。理由は簡単です。「その社内政治ばかりしている役員は、一般スタッフの生活のことなど考えずに、赤字の会社の地位に汲々とするような人たちなのだから、向き合って、リーダーとして正しく導きなさい。」ということでした。
言われてみて「それもそうだなぁ。」と思いはするものの、放っておくと、当該役員も企業に残れるか・残れないかの瀬戸際ですから、死に物狂いで嫌がらせをしてきます。たまりかねて、メンターに対して、「なぜ『パワー』を持っているのに行使しないのですか。『パワー』を適切に行使して解任すれば、すぐにこの問題は解決するのではないですか。あなたも昔だったら『パワー』を行使したのではないですか?」と聞いたところ、「自分が若い時でも『パワー』は行使しないと思う。『パワー』を持っていて、なおかつ、人として正しいことをしていれば絶対に負けないから、その人たちと向き合いなさい。」と言われました。また、「『パワー』を行使すればした分だけ、リーダーとしての自分の価値が下がる。」とも言われました。
私が、マネジメントからリーダーシップへと価値観の転換が起きるまで、数年を要しました。
その途中でも、当該役員からは、会社で正式に機関決定したものを、裏で根回しされて嫌がらせされるなどがありました。相変わらず社内政治も横行していました。私も若かったので、不振企業で会社が生き残れるかの瀬戸際なのに、自己保身のために、会社のためにならない酷い行動をとる幹部もいるものだと心底がっかりしました。
私の中で霧が晴れた瞬間がありました。私が、メンターに対して、当該役員の社内政治の酷さを話したところ、メンターから「君は、その彼と同じ程度の人間なのか?」と言われました。この何気ない一言が私に「気づき」を与えてくれました。「あぁなんだ。この役員は弱い人だから邪魔をしていたんだ。本来は、対等な関係ではなく、守ってあげなければならない弱い人なんだ。」と思った瞬間に、私が行ってきた企業再生の進め方の間違いに気づいたのです。
その後、企業再生の成果が出て、徐々に会社の業績が良くなってきたある日、当該役員から、実は改革について自分が何をやっていいか分からないため、不安に駆られており、改革に横やりを入れていたと聞きました。一般的なサラリーマンと同じように、彼もまた「善なれど弱い」人だったのです。
メンターからリーダーシップを教えてもらったおかげで、私は人間的に成長することができたと感謝しています。リーダーシップに興味をもって、様々なリーダーシップに関する本をたくさん読んだのもこのときです。
以前もご紹介しましたが、メンターからは、「本来ならば利害関係の一切生じない人物を、リーダーシップを発揮して口説き落として、会社のために協力させなさい。」や「人生どこで何があるか分からないのだから、敵と思っている人を愛しなさい。」などと教えを受けました。後者については、お正月で、新年の挨拶に行ったときに言われ、年明け早々難しい宿題をもらったものだと思ったものです。
企業再生においても、マネジメントだけでなく、リーダーシップを意識することで、一般スタッフもより自律的に動くようになり活気が生まれました。リーダーシップをもって接することで、多くの人と繋がることができ、奇跡のような出来事が続いて、社会に溶け込むような一体感・連帯感を覚えるようにもなりました。これらの経験を通じて、すっかりリーダーシップの面白さにはまってしまいました。今では情熱をもって人を動かすことの醍醐味を多くの人に知ってもらいたいと思っています。
私の「リーダーシップの旅」は、30代にして、本当にスタートしたと思っています。出会った人を、一人でも多くのリーダーに育てたい。私の旅はまだまだ続きます。
「リーダーと考える経営の現場」
第1回 「はじめに」
第2回 「リーダーシップに立場は関係ない」
第3回 「マネジメントとリーダーシップの違い」
第4回 「人は性善なれど弱し」
第5回 「自責と他責」
第6回 「人として正しいことを」
第7回 「リーダーは自然体」
第8回 「サーバント・リーダーシップ」
第9回 「愛され畏れられる存在」
第10回 「傲慢な存在」
第11回 「子どものように叱る」
第12回 「奇跡を起こし、神となれ」
第13回 「Lead with love」
第14回 「リーダーシップの旅 前半」
第15回 「リーダーシップの旅 後半」
※この記事は、WEBメディア「The Urban Folks」に連載されている2019年2月25日公開の「リーダーと考える経営の現場・第15回 リーダーシップの旅 後半」を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO
2013年3月にソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社前身の株式会社スーツ設立。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し上場会社の子会社化を実現。2022年12月に株式会社スーツを新設分割し当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。