執筆者 小松 裕介 | 2月 27, 2019 | CEO

2019年はじめての「リーダーと考える経営の現場」では、コーヒー・ブレイクを設けて、なぜ私が一人でも多くの方にリーダーになってもらいたいと思うようになったのか、私の「リーダーシップの旅」について、前半・後半の2回にわたり記載をしたいと思います。
私は今の日本では非常に珍しいキャリアを歩んでいます。現在37歳で、会社経営の経験は約15年。その大半が「サラリーマン経営者」としてのキャリアです。
大学卒業後、新卒で就職した上場企業で、社会人2年目には社長室長となって、「サラリーマン経営者」として、買収先や投資先など複数の会社経営に関与しました。その過程で、伊豆シャボテン公園グループといった老舗レジャー施設の企業再生をしたり、当該上場企業の代表取締役社長を務めたりしました。
現在は、今までの会社経営の経験を活かし、「プロ経営者」として、株式会社スーツという時価総額100億円以下の中堅企業・中小企業・小規模事業者など中小企業等に対して経営支援をする、いわゆる経営コンサルティング会社を経営しています。
私は若い頃からメンター(仕事上または人生の指導者・助言者)に恵まれてきており、学生時代に出会ったメンターの方は、優秀な社会人になるための勉強する癖を身につけさせてくれたり、経営学修士(MBA)で習うような経営戦略、マーケティング、アカウンティング、オペレーションやファイナンスなどの経営学の知識を教えてくれたりしました。社会人になってから出会ったメンターの方は、金融機関で長らくトップ営業マンだった方で、組織で生きるとはどういうことか、お金を稼ぐとはどういうことかなど社会の厳しさを教えてくれました。
20代前半の頃の私は、これらのメンターの方々から教えていただいた経験、知識、会社という組織の論理と資本主義社会の論理を踏まえ、会社から与えられた組織の地位や権限など「パワー」を用いて、常に最短距離で、効率よく合理的に売上・利益を増大させて、経営を推し進めることが仕事だと考えていました。
そのため、例えばリーマン・ショック後に手掛けたいくつかの企業再生案件では、赤字も酷く資金繰りも厳しい会社の多くの従業員の雇用を守るために、やむなく一部のスタッフについては人員整理をしましたが、それこそ「テキパキ」と対応し、会社の業績を回復させました。
当時の私は、経営者とはマネジメント(経営管理)をする人で、優れた経営者とは、どのような状況下でも、現状を受け入れ、複雑さに対処し、組織を優先し、数字を追いかけ、管理して人を動かし、正しく手続きを処理できる管理者だと信じていました。
この経営スタイルやマネジメント方法で、私が経営に関与した多くの会社の業績は良くなりましたし、その結果について会社の幹部クラスや先輩方も喜んでくれていました。
しかし、20代半ばの頃に、当時の上司を通じて、たまたまご縁をいただいた方から、ある日突然、「君は若いから、君の人間としての器を広げて、人間力を鍛えてあげよう。優れた経営者になるために、マネジメントだけではなく、リーダーシップを学びなさい。」と言われました。
当時、私は、「経営者=リーダー」だと捉えていたので、「マネジメント能力が高い=リーダーシップがある」と勘違いをしていましたし、もっと言うと、子どもの時から、リーダーシップという言葉は見聞きをしてきたものの、リーダーシップがどういうものなのかを考えたことすらありませんでしたので、いきなり「リーダーシップを学べ」と言われてもピンときませんでした。
数日後、その方から、続けて「組織の地位や権限など『パワー』は一切使わずに、リーダーシップだけで企業再生させなさい。」と言われました。
前述のとおり、当時、私は、会社から与えられた組織の地位や権限など「パワー」を用いて効率よく合理的にマネジメントすることが正しいと信じていましたので、これについても何を言っているかさっぱり理解できませんでした。むしろ企業再生案件を取り巻く、厳しい資金繰りなどの現実の問題を全く理解していない無理難題のように思ったものです。
さらに、その後、その方から「私は、政治家として、リーダーシップとインテリジェンスを実践してきたから、それを教えてやる。」とも言われました。その方は、過去に大臣を務めた経験のある方でした。
今ではその方との出会いを心から感謝しているのですが、当時は、このような経歴の方と長く交流することになり、それこそ私の新たなメンターになるとは想像もしていませんでした。
これが私の経営者人生における「リーダーシップ」との出会いでした。
「リーダーと考える経営の現場」
第1回 「はじめに」
第2回 「リーダーシップに立場は関係ない」
第3回 「マネジメントとリーダーシップの違い」
第4回 「人は性善なれど弱し」
第5回 「自責と他責」
第6回 「人として正しいことを」
第7回 「リーダーは自然体」
第8回 「サーバント・リーダーシップ」
第9回 「愛され畏れられる存在」
第10回 「傲慢な存在」
第11回 「子どものように叱る」
第12回 「奇跡を起こし、神となれ」
第13回 「Lead with love」
第14回 「リーダーシップの旅 前半」
第15回 「リーダーシップの旅 後半」
※この記事は、WEBメディア「The Urban Folks」に連載されている2019年1月29日公開の「リーダーと考える経営の現場・第14回 リーダーシップの旅 前半」を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO
2013年3月にソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社前身の株式会社スーツ設立。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し上場会社の子会社化を実現。2022年12月に株式会社スーツを新設分割し当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。
執筆者 小松 裕介 | 2月 27, 2019 | CEO

「リーダーと考える経営の現場」では、前回に続き、私が経営の現場で得た「気づき」に基づいて、基本となるリーダーシップの考え方について記載していきたいと思います。今まで12回にわたり、この基本となるリーダーシップの考え方について記載をしてまいりましたが、本稿で一区切りとなります。
最後のテーマは「Lead with love」です。愛とともに導く、愛をもって導くというリーダーシップの「あり方」についてご紹介したいと思います。
この「Lead with love」ですが、今まで本連載を読んできた読者の皆さんには、既に十分にご理解いただけているのではないかと思います。今までも、近い考え方として、第9回ではリーダーはフォロワーから愛され畏れられる存在であること、第10回ではリーダーとフォロワーの関係は親子のような関係であることを紹介してきました。
リーダーは、世のため人のため、組織のため、そして、フォロワー自身のために、フォロワーに対して、正しいこと・厳しいことを言って、フォロワーを導いていかねばなりません。但し、そのとき、そこに愛情がなければなりませんし、もしそこに愛情がなければ中長期的には決して上手くいかないでしょう。
多くの場合、リーダーの目標は、フォロワーにとっての目標でもあります。そのため、多くのリーダーは、フォロワーに対して、少しぐらいの困難や苦難があったとしても、それを乗り越えなければならないと考えがちです。しかし、この考えが大きな間違いであることは以前にも記載してきたとおりです。なぜなら、普通の人は「人は性善なれど弱し」だからです。少しの困難や苦難を前に、簡単に物事は進まなくなってしまうものです。
リーダーは、この「弱い」フォロワーを導き動かすために、たっぷりの愛情を用意しなければなりません。人は愛情を感じられれば、自己肯定感が高まり、安心感を得ることができます。そして、人は安心できれば、前を向いて、次のことにチャレンジすることができるのです。サラリーマンの安心とは、組織の中での居場所の確保かもしれませんし、金銭的な保証かもしれません。リーダーからの愛情の形の一つは、例えフォロワーが失敗をしたとしても、引き続きフォロワーの存在を認め続け支援し続けるということかもしれません。
現在、私は、今までの会社経営の経験を活かし「プロ経営者」として、様々な会社の経営支援をしています。その中で、クライアント企業の経営陣に対して、フォロワーであるスタッフにもっと興味を持ちましょうということをアドバイスします。人を動かすうえで、その人に無関心ではいけません。その人の人となりや生き方、人生にも興味をもって、愛情をもって導けば、その人は必ず動いてくれるものです。
リーダーシップの要諦とは、この「Lead with love」だと思います。
日々忙しく流れていく日常生活において、リーダーが、一人ひとりのフォロワーのことを真剣に考えて、愛情をもって接することは、大変難しいことです。このことは多くのサラリーマンの皆さんにもご理解いただけるのではないでしょうか。中長期的な目線で本質的で大事なことではありますが、どうしても短期的な目線ではおざなりになってしまいがちなことなのです。また、特にテクノロジーが職場の多くに入り込むようになった中で、多くのマネージャーがこの極めて非効率で・非合理な要素を軽んじているように思います。
さらに、フォロワーにリーダーの愛情が伝わっていたとしても、それでも「弱さ」に負けてしまう場合があります。私が経験してきた上手くいかなかった事例の多くでも、フォロワーの多くは、リーダーが求めていることを理解しており、そこに愛情があることも十分に理解していたように思います。しかし、自分の「弱さ」に負けて、自分の「弱さ」を認められず、他責になってしまったり、逃げてしまったりという人をたくさん見てきたように思います。
リーダーがフォロワーに求める正しいことの多くは、フォロワーにとって厳しいことであることが多いです。リーダーから正しいことを求められた際に、そこに愛情があれば、リーダーに導かれて、フォロワーの多くは、少なくとも正しいことを実現できるように努力をするでしょう。
フォロワーは、このリーダーの愛情に非常に敏感に反応します。フォロワーの多くは、リーダーと違って、目標が達成されることのみを望むのではなく、多くの場合は、フォロワーである自分がリーダーからの愛情を受けて、帰属意識や自己肯定感とともに、目標が達成されることを望んでいるのです。
全てのリーダーを目指す人たちに「Lead with love」という格言を送りたいと思います。もしリーダーが心にゆとりをなくしたとき、自信をなくしたときは、この言葉を忘れずに、愛情をもってフォロワーを導いてもらいたいと思います。必ず多くのフォロワーを動かすことができ、リーダーを本当のリーダーにしてくれることでしょう。
次回以降は、経営の現場でよく起きている具体的な事例を使って、リーダーが、リーダーシップの考え方に基づいて、どのように考え、どのようなアクションをすべきかを一緒に考えていきたいと思います。
「リーダーと考える経営の現場」
第1回 「はじめに」
第2回 「リーダーシップに立場は関係ない」
第3回 「マネジメントとリーダーシップの違い」
第4回 「人は性善なれど弱し」
第5回 「自責と他責」
第6回 「人として正しいことを」
第7回 「リーダーは自然体」
第8回 「サーバント・リーダーシップ」
第9回 「愛され畏れられる存在」
第10回 「傲慢な存在」
第11回 「子どものように叱る」
第12回 「奇跡を起こし、神となれ」
第13回 「Lead with love」
第14回 「リーダーシップの旅 前半」
第15回 「リーダーシップの旅 後半」
※この記事は、WEBメディア「The Urban Folks」に連載されている2018年12月29日公開の「リーダーと考える経営の現場・第13回 Lead with love」を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO
2013年3月にソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社前身の株式会社スーツ設立。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し上場会社の子会社化を実現。2022年12月に株式会社スーツを新設分割し当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。
執筆者 小松 裕介 | 2月 27, 2019 | CEO

「リーダーと考える経営の現場」では、前回に続き、私が経営の現場で得た「気づき」に基づいて、基本となるリーダーシップの考え方について記載していきたいと思います。
今回のテーマは、リーダーには、時に、フォロワーが奇跡だと思うようなことを成し遂げる神がかった力が求められるということをご紹介したいと思います。多くのリーダーへの叱咤激励の意味も込めて、本稿のタイトルの一部には「神となれ」とまで記載しました。なお、読者の皆さんの中でも不見識に思う方もいるかもしれませんが、ここでは、人智を超えた力や存在という意味で、神という表現を使っています。
「人を動かす」際に、「勝ち戦」であることがフォロワーに予見できることは大事な要素です。人は誰しも、わざわざ「負け戦」に関わりたいとは思わないものです。特にリーダーとフォロワーの関係期間が短い場合などには、特大ホームランまでは打たないにしても、小さな成功を積み重ねるというヒットを打ち続けることが信頼構築に繋がります。野球の名選手でも“三割バッター”が関の山で、ヒットを何打席にもわたって打ち続けることは奇跡なのです。しかし、リーダーは、時に、フォロワーが奇跡だと思うようなことをやらなければなりません。それは、フォロワーは心の奥底では自分たちのリーダーが奇跡を起こすことを望んでいるからです。
私が20代半ばでまだ駆け出し経営者だった頃に、過去に大臣を務めた経験のあるメンターの方から、「組織の地位や権限など『パワー』は一切使わずに、リーダーシップだけで企業再生させなさい。」、「本来ならば利害関係の一切生じない人物を、リーダーシップを発揮して口説き落として、会社のために協力させなさい。」や「人生どこで何があるか分からないのだから、敵と思っている人を愛しなさい。」などと教えを受けました。
当初、私は、年齢も若く未熟だったからか、これらの教えについて、現実の問題を全く理解していない無理難題のように思ったものです。しかし、私のリーダーシップへの理解が深くなるにつれて、この無理難題の本当の価値が分かってきたのです。
これらの無理難題は、現実の問題を無視した机上の空論ではなく、まさに正論です。本来はリーダーが真正面から自分と向き合って、取り組むべき課題なのです。しかし、多くのリーダーは、様々な現実の問題を言い訳にして、自分の可能性、フォロワーの存在や可能性を信頼せずに、現実世界と折り合いをつけてしまうのです。
例えば、リーダーシップだけで企業再生させるということは、多くの経営者からは非効率で信じられないと言われると思います。一般的には、企業再生に限らず、株式会社の良いところは、一人一票が原則の民主主義社会と違って、株式のシェア(持ち分)に基づいて株主が圧倒的な「パワー」を手にすることができ、その株主の委任を受けた経営者が日常において迅速に意思決定できることです。そのため、そもそも、株式会社という制度において、組織の地位や権限など「パワー」を行使することは想定内のことであり、何ら悪いことではありません。
一方で、夢や共感などのリーダーシップだけで企業再生させるということは、リーダーがフォロワーとの人間関係を構築し、赤字などで停滞していた組織によってモチベーションが低下しているフォロワーに自信をつけさせ、前を向かせて、一歩ずつ歩ませ、会社の業績を回復させることです。これを資金繰りが厳しかったり、取引先からの信用が低下していたりするなどの状況下で、短期間で成し遂げなければなりません。この大変さは、読者の皆さんの自身の会社に置き換えてもらうと、いかに奇跡的なことかご理解いただけるのではないかと思います。一般的に「パワー」を行使しない会社組織など、まず存在しないのです。
「本来ならば利害関係の一切生じない人物を、リーダーシップを発揮して口説き落として、会社のために協力させなさい。」ということも、相手のメリットを一切考えない、ビジネスの世界ではまず考えられない非合理的なことです。また、「人生どこで何があるか分からないのだから、敵と思っている人を愛しなさい。」ということも、道徳として素晴らしいですが、聖人君主のような考え方で、現実世界では否定されることも多いでしょう。
しかし、しっかりとこれらの問題と向き合い、実現すると、リーダーとしても人格を磨くことができ、根源的な自信になります。また、フォロワーからの求心力も圧倒的に高まるのです。極端な話、現実から浮世離れしていればしているほど、理不尽であれば理不尽なほど、実現した場合に、リーダーは力を手にすることができるのです。前述の「敵を愛する」のように神がかった人間性をフォロワーに見せることができれば、多くのフォロワーに対して圧倒的な説得力を手にすることになります。
歴史上の著名なリーダーたちに限らず、大会社の創業者であったり、大物政治家であったりの多くには、伝説的なエピソードがあります。リーダーが「人を動かす」ためには、フォロワーを熱狂させるような奇跡が必要なのです。また、多くのフォロワーは、自分の心の支えとして、リーダーが起こす奇跡を求めているのです。
とはいえ、私たちはどんなに頑張っても、ひっくり返っても、神ではなく、単なる人間です。残念ながら、海を割ることもできませんし、人々を思い通りに動かすこともできません。それでも、リーダーは、フォロワーの期待に応えるために、自己研鑽して、奇跡を起こすことが期待されているのです。
「リーダーと考える経営の現場」
第1回 「はじめに」
第2回 「リーダーシップに立場は関係ない」
第3回 「マネジメントとリーダーシップの違い」
第4回 「人は性善なれど弱し」
第5回 「自責と他責」
第6回 「人として正しいことを」
第7回 「リーダーは自然体」
第8回 「サーバント・リーダーシップ」
第9回 「愛され畏れられる存在」
第10回 「傲慢な存在」
第11回 「子どものように叱る」
第12回 「奇跡を起こし、神となれ」
第13回 「Lead with love」
第14回 「リーダーシップの旅 前半」
第15回 「リーダーシップの旅 後半」
※この記事は、WEBメディア「The Urban Folks」に連載されている2018年10月23日公開の「リーダーと考える経営の現場・第12回 奇跡を起こし、神となれ」を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO
2013年3月にソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社前身の株式会社スーツ設立。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し上場会社の子会社化を実現。2022年12月に株式会社スーツを新設分割し当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。
執筆者 小松 裕介 | 2月 27, 2019 | CEO

「リーダーと考える経営の現場」では、前回に続き、私が経営の現場で得た「気づき」に基づいて、基本となるリーダーシップの考え方について記載していきたいと思います。
今回のテーマは、優れたリーダーは自分の子どものようにフォロワーを叱るということをご紹介したいと思います。
私が20代半ばで、まだ駆け出し経営者だった頃から、どのようにフォロワーを叱ればいいかという話になった時には、いつもこの「自分の子どものように」という比喩を使っていました。当時の私には自分の子どもはいませんでしたが、もちろん私自身も親に大事に育てられた「子どもの経験」が長らくあるものですから、親子の関係に似ているのではないかと思って話をしたわけです。そうしたら不思議と話をした全ての人から、この比喩に対して、共感をいただいたものです。親になった今の私には、この例え話の正しさが深く理解できますが、それ以上に難しさもよく分かるようになりました。
この「リーダーは自分の子どものようにフォロワーを叱る」という考え方ですが、2つに大別して説明することができます。まず、リーダーとフォロワーが親子のような関係を築けるかどうかという点と、次に、リーダーがフォロワーを「怒る」ではなく、しっかりと「叱る」ことができるかどうかという点です。
第9回で、優れたリーダーは、フォロワーから愛され畏(おそ)れられる存在であるということを紹介し、その中で「愛されること」は子供が母親に対して抱くような愛情たっぷりな感情、また、「畏れられること」は子供が父親に対して抱くような尊敬と畏れの入り混じった感情と紹介しました。
また、第10回で、リーダーとフォロワーの関係は、親子のような関係と例えられることが多いことを紹介し、リーダーシップの世界では、関係性において、リーダーは親、フォロワーは子どもというように捉えられることを紹介しました。
それでは、経営の現場において、実際に、リーダーとフォロワーが親子のような関係を築けている事例はどれだけあるでしょうか?親子のような関係を築くには、お互いに相手に対する愛情や情熱がなければできません。明確に他人に関与する意思・責任がなければ、このような極めて近しい関係は築けないものです。多くのリーダーとフォロワーの間にこのような関係がないとは言わないですが、やはり滅多にないと言わざるを得ないと思います。
それは、リーダーが一人であることに対して、フォロワーが多数であるということも原因の一つだと思います。また、そもそも、昨今の職場の人間関係は、契約関係などでしっかりと定義して、お互い適切な距離感を保つべきという大きな潮流もあるかもしれません。リーダーも、フォロワーも、お互いに実際の親子と同じような愛情や情熱を持つことはなかなか難しいことですが、人生は一度きりですので、ぜひともそのような関係性を求めてもらいたいと思います。
次に、「怒る」ではなく、しっかりと「叱る」ことについて記載します。まず、「怒る」と「叱る」の違いからご紹介したいと思います。「怒る」とは怒り手の感情を外に爆発させることをいいます。これに対して、「叱る」とは相手により良い方法を教示することをいいます。イライラした感情をそのままぶつける「怒る」と、相手の成長を考えて「叱る」のでは全く違います。
リーダーが、フォロワーを大事に思っていて、成長させるように導かなければならないと考えていれば、まず自分の感情に任せて「怒る」ことはありません。「叱る」という行動の出発点は、決して自分ではなく、相手の立場を尊重して行う行動です。
また、経営の現場において、しっかりと「叱る」ことも難しいことの一つです。ただ感情に任せて「怒る」ようなリーダーは論外ですが、案外しっかりと「叱る」ことも難しいのです。相手のことを考えて「叱る」ことが難しいのは、この「叱る」という行為が、両者の近しく正しい関係性の上に立脚した行為だからです。
もしリーダーが、フォロワーのことをよく考えて叱っていたとしても、そのフォロワーのためにという想いが正しく伝わっていなければ、単なる注意に留まってしまう場合もあります。本当の親子と違って、多くの場合、リーダーとフォロワーには距離がありますので、正しく「叱る」ことは難しいものです(もっと正確に言うと、本当の親子であっても、正しく「叱る」ことは難しいものです。)。
前述のとおり、昨今の流れとしては、働き方の多様化に伴って、権利関係や業務対価も明確になって、ある意味“ドライ”ですが、透明性があって、便利な世の中が到来しようとしていると思います。
私としては、就労環境やテクノロジーの観点からは、この流れを否定するものではありません。しかし、それとは別の論点で、一人でも多くの人々が、リーダーとフォロワーの間で親子のような濃密な人間関係を築いて、リーダーが自分の子どものようにフォロワーを叱るような愛情や情熱を持っていれば、世の中がより一歩前進するのではないかと思います。
「リーダーと考える経営の現場」
第1回 「はじめに」
第2回 「リーダーシップに立場は関係ない」
第3回 「マネジメントとリーダーシップの違い」
第4回 「人は性善なれど弱し」
第5回 「自責と他責」
第6回 「人として正しいことを」
第7回 「リーダーは自然体」
第8回 「サーバント・リーダーシップ」
第9回 「愛され畏れられる存在」
第10回 「傲慢な存在」
第11回 「子どものように叱る」
第12回 「奇跡を起こし、神となれ」
第13回 「Lead with love」
第14回 「リーダーシップの旅 前半」
第15回 「リーダーシップの旅 後半」
※この記事は、WEBメディア「The Urban Folks」に連載されている2018年8月22日公開の「リーダーと考える経営の現場・第11回 子どものように叱る」を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO
2013年3月にソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社前身の株式会社スーツ設立。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し上場会社の子会社化を実現。2022年12月に株式会社スーツを新設分割し当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。
執筆者 小松 裕介 | 2月 27, 2019 | CEO

「リーダーと考える経営の現場」では、前回に続き、私が経営の現場で得た「気づき」に基づいて、基本となるリーダーシップの考え方について記載していきたいと思います。
今回のテーマは、優れたリーダーは傲慢な存在であるということをご紹介したいと思います。前回、優れたリーダーはフォロワーから愛され畏れられる存在であるということをご紹介しましたので、リーダーには様々な顔があると思った読者の皆さんも多いかもしれません。
また、念のため、誤解のないように記載をしておきますが、今回のテーマは優れたリーダーは傲慢な存在であるということですが、決してリーダーの行動や態度が傲慢であるということではありません。実際の優れたリーダーの行動や態度は、傲慢と評価されるには程遠く、むしろ謙虚な人ばかりでしょう。
今回は、優れたリーダーの多くが、傲慢と評価されてもおかしくない考え方を持っていることをご紹介したいと考えています。
リーダーが多くのフォロワーを継続して導き続けるためには、時に傲慢と評価されるような、その他大勢のフォロワーとは絶対的に自分は違うという強烈な自負・矜持が必要になります。そのため、一般的に傲慢という言葉はマイナスイメージを伴いますから逆説的にはなりますが、優れたリーダーになればなるほど傲慢な存在であることが多いのです。
特に大事を成すリーダーは、常日頃の謙虚な行動や態度とは違って、自分が神がかっているとまでは言わないかもしれませんが、少なくとも自分は普通の人とは違うという気持ちで物事にあたっている人が多いです。
第4回で、リーダーがフォロワーや周囲の人々を捉える際の価値観の一つとして「人は性善なれど弱し」をご紹介しましたが、本来は、リーダーも、「人は性善なれど弱し」を体現した普通の人たちです。
しかし、リーダーであるからには、世のため人のため、誰かのため、夢や理想のために「焼け火ばし」を持ち続けなければなりません。リーダーは、目標のために、フォロワーが避けたくなるような嫌な役回りを引き受けなければならないのです。
このときに多くのリーダーの心の支えになるのは、「リーダーである自分は、弱いフォロワーとは違う」、「リーダーである自分は、フォロワーより強い」といった自負です。考えようによっては何とも情けない話でもあるのですが、リーダーは、自分よりも弱いフォロワーという存在を意識して初めて強くなれるのです。この自負が、弱い自分を鼓舞する、大きな心のよりどころになります。
リーダーは、「性善であって、強い」存在でなければなりません。リーダーとは、フォロワーの弱さを補える強さを持った存在だからこそ、フォロワーがついてくるに値するのです。リーダーがリーダー然とした振る舞いを身に着け、自分に自信を持ち始めるのも、フォロワーとの違いを意識してからです。
分かりやすい例を紹介したいと思います。今までの文脈を無視してこの部分だけ切り取ると誤解が生じるのですが、私が知る限り、ほとんどの経営者は、心の奥底で、どこかサラリーマンのことを見下した考えを持っていると思います。それはもちろんスキル面の話をしているわけではなく、生き方・覚悟において、多くの経営者はサラリーマンと勝負しても負けないと考えていると思います。この考えはリーダーの傲慢さから生じているのではないでしょうか。
そもそも本来は、目標のために、ともに歩いていくべき存在であるフォロワーとリーダーである自分を比較すること自体がナンセンスです。しかし、時に、この区別があるからこそ、リーダーは、フォロワーのために、努力をし続けられるのです。
この考え方は、身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務があるという、欧米社会における基本的な道徳観であるノーブレス・オブリージュ(高貴なる義務)に近い考えかもしれません。この場合は、身分の高い者と庶民を区別し、そのかわり、身分の高い者に社会的責任と義務を課しているわけです。
リーダーが、多くのフォロワーを前にリーダー然としていられるのは、自分はフォロワーとは違うというプライドがあるからです。それは、傍から見ると、ちっぽけなプライドかもしれませんが、継続して物事を成し遂げているリーダーの多くが、このプライドを原動力として、長年にわたりフォロワーを導いているように思います。
こうした考えから、リーダーとフォロワーの関係は、親子のような関係と例えられることが多いです。本当の親子ならばいざ知らず、現実にリーダーとフォロワーの間に、親子ほどの開きがあるかどうかは分かりませんが、リーダーシップの世界では、関係性において、リーダーは親、フォロワーは子供というように捉えられるわけです。
リーダーが、フォロワーを子供のように捉えること自体が既に傲慢なことかもしれません。しかし、この傲慢さがあるからこそ、リーダーは、リーダーらしく振舞うことができ、フォロワーのためにより一層の努力することができるのです。
「リーダーと考える経営の現場」
第1回 「はじめに」
第2回 「リーダーシップに立場は関係ない」
第3回 「マネジメントとリーダーシップの違い」
第4回 「人は性善なれど弱し」
第5回 「自責と他責」
第6回 「人として正しいことを」
第7回 「リーダーは自然体」
第8回 「サーバント・リーダーシップ」
第9回 「愛され畏れられる存在」
第10回 「傲慢な存在」
第11回 「子どものように叱る」
第12回 「奇跡を起こし、神となれ」
第13回 「Lead with love」
第14回 「リーダーシップの旅 前半」
第15回 「リーダーシップの旅 後半」
※この記事は、WEBメディア「The Urban Folks」に連載されている2018年7月19日公開の「リーダーと考える経営の現場・第10回 傲慢な存在」を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO
2013年3月にソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社前身の株式会社スーツ設立。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し上場会社の子会社化を実現。2022年12月に株式会社スーツを新設分割し当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。
執筆者 小松 裕介 | 2月 27, 2019 | CEO

「リーダーと考える経営の現場」では、前回に続き、私が経営の現場で得た「気づき」に基づいて、基本となるリーダーシップの考え方について記載していきたいと思います。
今回のテーマは、優れたリーダーは、フォロワーから愛され畏(おそ)れられる存在であるということをご紹介したいと思います。前回ご紹介したサーバント・リーダーシップと同じように、「愛されること」と「畏れられること」は正反対の2つのイメージだと思います。この相反する2つのイメージを両立しているところが、優れたリーダーの凄さであり魅力なのです。
この「リーダーは愛され畏れられる存在でなければならない。」という考え方は、私が、20代半ばで、まだ駆け出し経営者だった頃に、過去に大臣を務めた経験のあるメンターの方から教えていただいたものです。
「愛されること」は、リーダーがフォロワーに笑顔で囲まれている様子をイメージしてもらうと分かりやすいと思います。子供が母親に対して抱くような愛情たっぷりな感情です。リーダーがフォロワーから「愛されること」が望ましいことは言うまでもありません。フォロワーに愛されるリーダーは、理想のリーダー像の一つだと思います。
これに対して、「畏れられること」は、子供が父親に対して抱くような尊敬と畏れの入り混じった感情です。ここで気を付けなければならないのは、「畏れられること」は、危害が及ぶことを心配してびくびくしたり怖がったりする「恐怖」ではなく、能力の及ばないものを畏れ敬うという「畏怖」なのです。
リーダーが組織を守るための非情さや胆力などを持ち合わせており、時にフォロワーや周囲の人々から畏れを抱かれなければならないことは、組織をまとめるうえで必要なことなのです。一度、リーダーが“刀を持っている”と認識されれば、フォロワーや組織に規律が生まれます。フォロワーに、このリーダーは何かあれば組織全体のために組織の敵を斬って捨てて返り血を浴びる覚悟がある人だと思われれば、リーダーは畏れられる存在になるのです。
さらに考えると、尊敬と畏れについても関連性があります。リーダーが組織の指示命令系統上の制度的権限など「パワー」を適切に行使できることは、フォロワーの尊敬を集める行為なのです。神話などで、なぜ年老いた村長に対して、フォロワーである若い村民たちに畏怖があるかというと、村長は適切に「パワー」を行使することができるからなのです。適切な「パワー」の行使は、自制心がなければなりませんし、何よりも経験が必要になります。適切に「パワー」の行使ができることが、村長に対する畏怖に繋がっているのです。自分勝手な「パワー」の行使は、フォロワーにとって尊敬に値しない行為であり、単なる恐怖でしかありません。
読者の皆さんの中には、「愛されること」と「畏れられること」を両立できるのか疑問に思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、結論からいうと、両立することはできます。なぜなら、この2つは求められる状況が違うのです。
理想では、平常時に、リーダーは、全てのフォロワーから「愛されること」が望ましいです。逆に、日頃から、全てのフォロワーに「畏れられること」は必要ありません。リーダーのいざというときの覚悟、いざというときの胆力を垣間見て、そこにフォロワーは畏れを抱くのです。歴史上の有名なリーダーたちのエピソードの多くに、フォロワーから「愛されること」を象徴するような無邪気なエピソードと「畏れられること」を象徴するような組織を守るための過激・苛烈なエピソードが、一人のリーダーに混在することからもこのことが分かると思います。
私の10年以上の経営経験では、経営の現場では、残念ながら、「愛されること」と(「畏れられること」ではなく)「怖れられること」のどちらか一方に極端に偏ってしまっている人が多いように思います。具体例としては、フォロワーに愛されたい八方美人な経営者やフォロワーを恐怖で支配する独裁的な経営者などが挙げられます。
リーダーがフォロワーから「愛されること」ばかりを望んで、リーダーが、フォロワーに対して、率直なコミュニケーションができなくなってしまっていて、フォロワーの成長に欠かせないことや組織として必要なことであっても指摘できない、注意できないという方も多くいます。逆に、最初は組織のためなど大義名分を掲げるものの、リーダーがフォロワーから「怖れられること」が組織運営上、望ましいことだと勘違いして、恐怖政治を行ってしまう方も多くいます。
本来、リーダーのキャラクターは、決して善人・悪人と一方だけの評価にならず、多くの場合は、複雑に入り混じった、多面的・立体的な評価なのです。リーダーは、フォロワーに対して、母親のように愛に満ちた存在であり、父親のように畏れられる存在でなければならないのです。この2つを一人の人格で両立できることが、優れたリーダーの魅力なのです。
「リーダーと考える経営の現場」
第1回 「はじめに」
第2回 「リーダーシップに立場は関係ない」
第3回 「マネジメントとリーダーシップの違い」
第4回 「人は性善なれど弱し」
第5回 「自責と他責」
第6回 「人として正しいことを」
第7回 「リーダーは自然体」
第8回 「サーバント・リーダーシップ」
第9回 「愛され畏れられる存在」
第10回 「傲慢な存在」
第11回 「子どものように叱る」
第12回 「奇跡を起こし、神となれ」
第13回 「Lead with love」
第14回 「リーダーシップの旅 前半」
第15回 「リーダーシップの旅 後半」
※この記事は、WEBメディア「The Urban Folks」に連載されている2018年6月15日公開の「リーダーと考える経営の現場・第9回 愛され畏れられる存在」を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO
2013年3月にソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社前身の株式会社スーツ設立。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し上場会社の子会社化を実現。2022年12月に株式会社スーツを新設分割し当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。