リーダーシップ往復書簡 089

 

前回「上司を見限る」といった強烈なワードのご質問をいただきましたので、本日はフォロワーシップについて記載をしたいと思います。

リーダーは、フォロワーがいて初めてリーダーです。自分一人が私はリーダーだと声高に叫んでも、誰も人が付いてきていなければしょうがありません。会社経営においても、社長という地位には就いているけれども、部下はみな面従腹背で、社長から人心が離れてしまっているケースが散見されます。

前述の定義からも分かるとおり、このようにリーダーとフォロワーの関係性に着目して、リーダーシップを捉えることもできるのです。リーダーシップの考え方では、リーダーがフォロワーに対して影響力を行使するだけではなく、フォロワーからもリーダーに対して影響力を行使することができるのです。

具体的には、フォロワーが、リーダーシップを発揮して、リーダーから支援を求めたり率直なフィードバックを求めるたりすることもできます。さらには、フォロワーも、リーダーを支援したり、リーダーに対してフィードバックを行ったりすることもできます。

必要であれば、フォロワーであっても、課題や懸念点を指摘することも、自分の役割と期待されている事柄を明確化することもできます。場合によっては、フォロワーが、リーダーからの影響力を拒否することもできるのです。
「上司を見限る」前に、ぜひともフォロワーとしてフォロワーシップを発揮して、リーダーに対して影響力を行使してみると良いと思います。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

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【Q.89】
リーダーシップについて部下や後輩などを指導する際には、どのあたりに気を付ければよいでしょうか?

 

<コメント>

若手スタッフであっても、誰しもがリーダーシップを発揮した経験があるはずです。そのため、過去のリーダーシップを発揮した際の成功体験を思い出せられるように、言葉の定義をしっかりとして、分かりやすく、丁寧に説明するように心がけると良いと思います。

私は、社会や会社に慣れた社会人3年目から10年目ぐらいの人がリーダーシップを学ぶと、目から鱗が落ちるのではないかと考えています。

若手スタッフは、入社時には、会社のルールなどを一切把握していない代わりに大きな夢や希望を持っているわけですが、大半のサラリーマンは、わずか数年で夢や希望が萎んで、一気に官僚化が進みます。

もちろん会社のルールをしっかり守って運用することは大事なことですが、会社が何のためにルールを作って運用しているかを忘れてしまっては本末転倒と言わざるを得ません。

特に順応性の高い優秀な人の場合では、会社のルールの守ることが仕事になってしまったり、会社のルールから少しもはみ出ることができなくなってしまったりします。

このように官僚化こそ仕事と勘違いをし、「ザ・サラリーマン」と考え方が凝り固まってしまった人が、リーダーシップの考え方に触れると、その人の景色ががらりと変わる可能性があると思います。

なぜならリーダーシップは、幼少期から学生時代、そして、就職時などに、誰しもが発揮してきていることでもあるからです。社会人になってわずか数年で身についたこの垢を落とすことが肝要です。

今までも紹介してきたとおり、リーダーシップには様々な誤解があると考えています。それは、例えば、リーダーシップは、あくまで先天的な能力で、後天的には身に着けることができないとか、組織の偉い人だけに必要なものであるとかです。

まずは、リーダーシップが自分には関係ないことと思考停止をしてしまうと話が前に進まなくなってしまうため、リーダーシップは、誰にでも必要なものであり、誰でも身に着けることができる身近なものであることを理解してもらう必要があると思います。

 

 

※この記事は、2021年5月8日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 088

 

前々回で、ここ数年の日本の産業界の問題点である事業承継について少し触れましたので、本日は、リーダーの引き際について記載をしたいと思います。

「マッチョなリーダー像」に固執していると、常に自分が隊列の先頭に立って旗を掲げなければならないと考えがちですが、本当のリーダーとは、夢や目標の実現のために、リーダーの座を譲ることもできる人なのです。

リーダーもやはり人間ですので、得意・不得意もありますし、疲労も溜まればミスジャッジもあります。謙虚なリーダーであれば、必要に応じて、旅の途中であれ、誰かにリーダーの座を任せることができるのです。

そのため、全体のために身を引く行為ができるリーダーは賞賛を集めるわけですが、なかなか引退できない大物政治家や大企業の経営者たちを見れば分かるとおり、スポットライトを一度でも浴びてしまうと人間はなかなかフロントマンの座から降りることはできません。

これは事業承継に限ったことではなく、ベンチャー企業の経営でも似たようことが起きているように思います。

具体的には、いわゆる「0⇒1(ゼロイチ)」の事業立ち上げが得意なアイデアマンの創業社長が、事業成長させる過程で、スキル不足からボトルネックになってしまうケースです。本来は他のマネジメント・スキルの高い経営幹部に社長を交代したほうが良いわけですが、なかなかスムーズに社長の座を移行できる場合は少ないように思います。

もちろん創業者ですので、多くの場合は株式の持ち分比率も高く、企業価値を向上させることによる経済的メリットは一番享受できるはずなのですが、そうは問屋が卸しません。理由は、将来の寂しさからか不安からか、これぞ社長の椅子の魔力だと思うのですが、まだまだ駆け出しのベンチャー企業であっても、社長という地位に汲々としてしまうのです。

世のため人のため、誰かのために身を引くという決断ができるがリーダーなのですが、歴史に名を刻むような優秀なリーダーたちでさえ、晩節を汚すことが多いことを考えると、いかにこれが難しいことかをご理解いただけるものと思います。

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【Q.88】
どのタイミングで、リーダーシップのない上司を見限ればいいのでしょうか?

 

<コメント>

リーダーシップとは、ありとあらゆる人が発揮すべきもので、リーダーシップに組織における立場は関係ありません。そのため、部下であってもリーダーシップがあれば、上司を動かすことができます。

しかし、現実的な問題としては、部下という立場にいながら、自分よりも強大な組織的な権限を有する上司を動かすことは、非常に難しいことです。

ご質問者の方のように、現実的な問題として、上司を見限る、上司を諦めるということは、たった一度しかない人生で貴重な時間をどのように費やすかという観点からは、合理的な選択肢になり得るものと思います。

長らく本連載を続けてきた私としては、読者の方には自分の可能性を信じてリーダーシップを発揮してもらって全ての人を動かせるようになってもらいたいと思いますが、やはり本件については軽々しく回答を言うことはできません。

正直なところ、私もいつも似たような問題で悩まされているのが実際です。
それは自分を信じてリーダーシップを発揮して多くの人を動かさなければならないと思いながらも、このまま突っ込んでいって、万が一、上手くいかないことになってしまった場合、ついてきてくれた人たちに迷惑をかけてしまったらどうしようとも思うのです。

リーダーが多くの人々から尊敬を集めるのは、誰も知ることのない明日に向かって、勇気を出して一歩踏み出しているからだと思います。

 

 

※この記事は、2021年5月7日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 087

 

今から5、6年前に、日本のスタートアップ界隈で「HARD THINGS」というアメリカの著名投資家ベン・ホロウィッツの本が流行りました。

「HARD THINGS」とは困難とでも訳せばいいでしょうか。やはり人格を磨いてくれるのは、いつの世もリーダーを待ち受ける困難や受難なのです。

私は幅広く年配の方とお付き合いをさせていただいておりますが、それでも戦争の記憶がある方はごく少数に限られます。

戦争の経験がある人、大病をして生死を彷徨った経験がある人、政治犯などで理不尽に収監されて不自由を強いられた人などは、人間の成熟度が違うと言われますが、時代も流れ、昭和、平成、そして、令和となり、私たち若者は、こういった本当の苦労からはなかなか縁遠くなっています。

私も20代から30代にかけて企業再生や敵対的買収防衛をしていたため、ほんの少しではありますが、苦労をする経験を得られて、人格が磨かれたように思います。

私の「HARD THINGS」のエピソードで言えば、ソープランドの帝王との10年戦争、上場会社の代表取締役社長を解任される、多数の民事・刑事事件対応、株主総会議事録が偽造され会社が乗っ取られる、テレビ、新聞や週刊誌など大手メディア掲載、ブラックジャーナリストが嫌がらせで自宅の郵便ポストに封書を投函、スタッフから遺書が送付される、取引先の社長・スタッフが自殺、政治家にホテルのロビーに呼び出されて脅される、各種業界の大物から呼び出し・・・などがありますが、SNSでは書けないことも含め、若い時分にお金では買えないような素晴らしい困難を経験させていただいたと思います。

当時は辛く感じたこともありましたが、こういった経験が血肉となって今の自分があると考えると、今となっては何が悪いことだったのかさえ、分からなくなってしまう時もあります。

これからリーダーを目指す人には「若い時の苦労は買ってでもせよ」と言いたいところですが、さすがに今の世の中ですので死ぬ人まではあまり見ませんが、うつ病になって社会復帰できない人ぐらいはよく見ますので、なかなか難しいところでもあります。

今まさに苦労をしているリーダーは、それがどのような形であれ、将来に続いていると認識して、本気で勝負をしていってもらいたいと思います。

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【Q.87】
本連載で「リーダーはリーダーを育てる」という格言をご紹介いただいておりますが、具体的にリーダーはどのように次のリーダーを育てるのでしょうか?

 

<コメント>

ご質問に回答するならば、リーダーがフォロワーを動かす過程で、そのフォロワーにもリーダーシップの発揮が求められているのです。このリーダーシップの発揮の経験が、フォロワーを次のリーダーへと変えていくのです。

私は、リーダーとは、フォロワーにリーダーシップ・スキルを身に着けさせることができる人だと考えています。

もう少し正確に記載すると、リーダーシップを正しく発揮しているリーダーであれば、フォロワーもリーダーシップを正しく発揮するようになるのです。

リーダーシップの考え方では、社会や組織における地位や立場は一切関係ありません。そのため、優れたリーダーは、フォロワーに対して、パワー(地位や立場に基づく権限)を行使して、行動を強制するようなことはありません。リーダーは、夢や共感の力によって、フォロワーが自発的・自主的に動くように促すのです。

そのため、そもそも、正しいリーダーのもとでは、フォロワーは何か強制力が働いて行動するわけではありませんから、フォロワー自らもリーダーシップを発揮して行動しているのです。

そして、そのフォロワーが、さらに第三者に対して、リーダーと同じように夢や共感の力で人を動かすようなコミュニケーションをすれば、それはもう立派なリーダーシップなのだと思います。

こういったリーダーシップを発揮した経験が、フォロワーを次のリーダーへと育てるのだと思います。リーダーはリーダーを育て、正しいリーダーシップは連鎖していくのです。

 

 

※この記事は、2021年5月5日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 086

 

立教大学や神戸大学のようにリーダーシップ教育で有名な大学がリーダーシップを教える前提として説明しているように、私も、リーダーシップ・スキルは、後天的に誰でも身に着けることができ、再現性があるものと考えています。

私は日々、バリューアップを仕事にしておりますので、クライアント企業の人や組織にまつわるトラブルに際して、そのクライアントの経営幹部に対して、「今後このように事態が展開していきます」という見通しを意見させてもらうことが多いです。そして、後日、その経営幹部の方々から「あの時点でこうなることが分かっていたのですね」と言われることも多いです。

もちろん私は預言者でも超能力者でもないのですが、リーダーシップという観点から、人を見て、組織を見ているに過ぎません。

例えば「企業再生あるある」だとは思いますが、倒産に瀕した会社の業績や社内の雰囲気が良くなっていくにもかかわらず、一定数のスタッフの入れ替わりが起きてしまうのです。

スタッフの入れ替わり、一部のスタッフが離れていってしまうことについては、もちろんリーダーのリーダーシップ不足に起因していますが、私の実務経験だと、相当なフォローをしたとしても一定数の入れ替わりが起きてしまいます。

リーダーはフォロワーを成長させるのが役割ですが、企業再生の場合だと、会社の成長スピードにフォロワーの成長スピードがついていけず、「成長痛」が生じてしまいます。そうなると、いかに会社が業績や社内の雰囲気が良くなったとしても、取り残されたスタッフからすれば、他のスタッフの活躍が妬ましく息苦しくなってしまったり、スタッフ全体から発せられる前向きなエネルギーですら、ある種の疎外感を感じてしまったりするのです。

また、ポジティブな事例だと、リーダーが、リーダーシップを正しく発揮できていると、フォロワーがどんどん成長していきます。フォロワー自らがリーダーシップを発揮して、スキルの習得をしたり新しい仕事にチャレンジをしたりするようになります。

私は、MBAのようなマネジメント・スキルがこれだけ社会人の間で普及したわけですから、ぜひともこのリーダーシップ・スキルについても同様に、多くの人に身に着けてもらいたいと考えています。

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【Q.86】
私はいわゆる2代目社長です。創業者のように、リーダーとして強いリーダーシップを発揮したいと考えていますが、どうすればよいでしょうか?

 

<コメント>

素晴らしい心持ちだと思います。日本社会でも事業承継がこの数年でピークを迎え、「経営者の代替わり」は大きなトピックだと思います。

私が2代目社長によくアドバイスをするのは、社長、大株主やオーナー創業者の子息という有形無形のパワー(地位や立場に基づく力)がなかったとしても、フォロワーがついてくる発言と行動をしなければならない、リーダーとして相応しい謙虚さと人間力を身に着けなければならないと伝えています。

本連載でもたびたび記載をしてきましたが、リーダーシップには地位や立場は関係ないのです。あなたがフォロワーから尊敬と尊重される本当のリーダーになりたいと考えるならば、一人の人間として、世のため人のためとなる夢や目標を掲げ、共にその夢や目標を実現したいと考えるフォロワーを募らなければなりません。但し、そのためには、それこそ創業者と同じような相当な努力が必要になることは言うまでもありません。

本当のリーダーには「リーダーになりたい」「リーダーを目指したい」と言ってなれるものではなく、リーダーとは、夢や目標などを掲げて、暗闇の中を勇気を持って歩み始めた結果、多くのフォロワーがついてきて、結果としてリーダーになるのものなのです。

次に、リーダーシップは、その人の個性や背景、また、受け取り手側の状況に応じて、発揮の仕方を変えなければなりません。

そのため、間違っても、強いリーダーシップを発揮したいからといって、創業者の方の行動を単純に真似してはなりません。創業者の方と幹部社員の間には長年にわたる人間関係があります。その人間関係を無視して、創業者の方と同じ行動やコミュニケーションをしたら、当たり前ですが、行き違いが生じて、人間関係の悪化が生じる可能性が高いです。

リーダーは自然体で、その人のキャラクターに適したリーダーシップを発揮すれば良いのです。サーバント・リーダーシップのような、リーダーがフォロワーを支えるといった新しいリーダーシップの概念も普及しつつあります。焦ることなく、自分なりのリーダーシップを模索されることをお薦めします。

 

 

※この記事は、2021年5月5日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 085

 

「きれいごと」という言葉があります。辞書を引くと、実情にそぐわない、体裁ばかりを整えた事柄とあります。

分別のつく年齢のフォロワーであれば、私たちの夢を実現するためには、例えば組織運営に多額のお金がかかったり、ステークホルダーのしがらみに悩まされたりなど極めて現実的な問題が山積していることを理解していると思います。

しかし、私は、これらの現実的な問題解決以上に、リーダーは「きれいごと」を掲げ続けることが重要だと考えています。

本連載では、幾度となく「人は性善なれど弱し」という考え方を紹介してまいりましたが、リーダーとフォロワーからなるその集団において、本来はリーダーが一番強くあるべきなのです。

その一番強いリーダーが「きれいごと」を言わなくなってしまったら、誰も正しいことを言う人がいなくなってしまいます。一般的に、リーダーのように強くないフォロワーが「きれいごと」をずっと維持していくことは難しく、「現実的」や「実際に」という言葉を人質に、妥協を繰り返すことになってしまいます。

想像してもらいたいのですが、もしあなたがフォロワーならば、現実的な話ばかりしているリーダーについていきたいと思いますか。

リーダーが現実的な問題解決の話ばかりをし始めたら、それは短期的に組織運営に必要なことであったとしても、中長期的にはリーダーの影響力の低下をもたらす危機的な状況だと思います。

フォロワーによっては、リーダーが「きれいごと」を言うことに非難する人もいるかもしれません。しかし、リーダーは、例え苦しい時期であっても、焼け火ばしを持って、「きれいごと」を言い続けなければならないのです。フォロワーの目線を上げて成長を促す。それがリーダーに課せられた役割なのです。

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【Q.85】
リーダーは、怠惰な人間、ズルい人間や器の小さい人間などとは、どのように付き合えばいいのでしょうか?

 

<コメント>

リーダーシップの原則に立ち返れば、リーダーは、どのような人であれ、全ての人を使いこなせなければなりません。

以前、私のメンターの言葉として「神を目指せ」という言葉を紹介しましたが、ほとんどのリーダーは現時点では「神様レベル」の人間力を持ち合わせおりませんので、これらの問題児たちとどう付き合うかが論点になります。

一つの答えは「人は善なれど弱し」という人間の特性をよく理解することだと思います。人間は誰しも善いことを行いたいと考えています。しかし、弱いから善いことができない。弱いから怠惰にサボってしまい。弱いからズルいことをしてしまい。弱いから鷹揚に構えることもできないのです。

リーダーは、この人間の弱さを理解したうえで、フォロワーを導いていくことが必要だと考えます。怠惰な人には、当初は手厚く声がけを意識的に増やす。ズルい人には、報告を小まめにさせることでズルをできないようにする。器の小さい人には、今後の展開をなるべく見通せるように情報共有してあげて、精神的にいっぱいいっぱいにならないようにして配慮してあげるなどです。

これらの人々と向き合って、しっかりと成長させるということも、リーダーの醍醐味の一つだと思います。

もう一つの答えは、消極的な考え方ではありますが、現実的な解決策の一つとして、これらの人々とは極力絡まないようにするという考えもあるかもしれません。

もちろんその場合は、人間は誰しも悪い部分や弱い部分がありますので、こういった「普通の人々」を遠ざけてしまうと、フォロワーも限られた人だけになってしまいますし、大きなことが成し遂げられなくなってしまう可能性があることにも留意する必要があると思います。

 

 

※この記事は、2021年5月4日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 084

 

長年にわたり経営者という役割を果たしていると、誰かに嫌われることより、誰かを気にかけて好きになる(愛する)ことの方が遥かに難しいと思わされます。

以前、メンターの方が、問題あるスタッフを捕まえて、「あなたの人格を否定しているのではなく、行動を変えてもらいたいのだ」という話をしているのを聞いて以来、私も誰かの行動を注意する際はこの言い回しを使わせてもらっています。

リーダーには、夢や目標のために、フォロワーを成長させることが求められます。しかし、いくら夢や目標のためという大義名分があったとしても、行動を否定されて嬉しい人はいません。そのため、せめて丁寧に人格と行動を分けて説明し内省を促すわけですが、それでも残念ながら嫌われてしまうことがあると思います。

特に私は企業再生を仕事にしてきたので、今まで数百人の方に直接通告してリストラをしてきた経験があります。もちろん会社が行き詰っており、資金繰りの観点からいかんともし難い状態だったためにリストラをしてきたわけですが、リストラされたスタッフからすれば、私のことを恨み骨髄に徹していたことでしょう。

リストラについては、私にはあまり感情的なところはなく、経営危機にある会社の経営者としての役割を果たしているに過ぎません。「感情的ではない」「役割を果たしているに過ぎない」という表現も私の自己防衛的な心持ちからくるものかもしれませんが、正直なところ、少しでも多くのスタッフや取引先企業の雇用を守るという目的があるため、恨まれるのもやむなしとも思っています(むしろ、リストラされた人の恨む矛先も経営者の役割と考えています。)。

このように長い間、経営者をしていると、他人に嫌われることや恨まれることに対する耐性はどんどんついていくわけです。しかし、冒頭に記載したとおり、誰かを気にかけて好きになる(愛する)ことは本当に難しいのです。

気にかける、好きになる、愛する・・・これらは、自らが主体性を持って取り組まねばできないことですし、頭で考える以上に大きなエネルギーを必要とするのです。もしかするとリーダーにとって、夢を描いて、不特定多数の世のため人のためを語るほうが楽かもしれません。

以前もご紹介したとおり、マザーテレサは「愛の反対は憎しみではなく無関心」と述べましたが、毎日限られた時間の中で、自分以外の特定の人に興味を持つことの難しさを感じています。それと同時に、これはリーダーとして向き合わなければならない本当に重要な課題だとも捉えています。

リーダーシップについて疑問がある、質問をしたいという方がいらっしゃいましたら、コメントや個別にメッセンジャーでご連絡ください。

また、コメントも大歓迎です。もし興味ある人がいれば、これを酒の肴に一杯やりましょう!

 

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【Q.84】
会社経営で特にリーダーシップが必要だと考えるのは、どのような時でしょうか?

 

<コメント>

会社が危機的状況にあって、一見、合理的・論理的に考えたら問題解決できないような状況にある時です。

常日頃からリーダーシップが必要であることは言うまでもありませんが、やはり危機的状況においてこそリーダーシップが求められます。

もちろん、合理的・論理的には「詰んでいる」状況なので、この状況で白旗を上げたとしても、誰からも責められることはないでしょう。リーダーが諦めたら、そこでゲームセットになってしまうわけです。

もしリーダーが諦めなければ、例えば、来月資金ショートするような状況であっても、投資家を説得してまわって、投資家から新たな投資資金を引き出したり、取引先や金融機関に対して支払いを繰り延べてもらったりすることができるかもしれません。

リーダーが、正しくリーダーシップを発揮すれば、最後は人が動くか動かないかという「人の問題」に収れんします。もし人を動かすことができれば、問題解決できる場合もあるのです。

なお、このようにつらつらと書きましたが、私の実務感覚としては、そう都合よく、危機的状況の時だけリーダーシップを発揮するというわけにはいかないようにも思います。

やはりリーダーシップも日頃から板についていないと勝負どころで正しくリーダーシップを発揮できず、人が動かない、つまりは、誰かが救いの手を差し伸べてくれることはないように思います。

 

 

※この記事は、2021年5月3日付Facebook投稿を転載したものです。