リーダーシップ往復書簡 095

 

先日たまたま手にした本に、未上場会社に投資するファンドの代表者の方が「株式シェアが少なくとも、正しいことを真正面から社長に言って、あるべき経営に導くのが腕の見せどころ。株式シェアをメジャーシェア持っていないからと言って経営者を動かせないことはない。」と言っていて、この方はリーダーシップを理解されていると思いました。

また、私の仕事先においても、自分の職域を超えて困っている同僚がいたら手を差し伸べたり、上司から指示を受けていないにも関わらず主体的に社外に飛び出していったり、若手スタッフの素晴らしいリーダーシップを目の当たりにすることがありました。

もちろん法律や組織のルールを逸脱することを推奨しているわけではありません。そもそも、夢や目標があって、それを現実的に叶えるために、合理的・効率的に考え出されたものが法律や組織のルールなのです。

これらは所詮、人間が作ったルールに過ぎません。ルールが先にあって、後から人間が入ってきたのではなく、人間が先にあって、後からルールを作ったのです。そのため、組織のルールの遵守は大事なことですが、人を置いてけぼりにしたら、本末転倒なのです。

リーダーは、組織を優先させるのではなく、人を優先させなければなりません。

私たちは、子どもの時は、この人間として当たり前のことが誰しも出来ているにも関わらず、20年あまりかけて親や教師など大人から社会常識・法律・ルールという呼び名で教わって、優先順位があべこべになっていくのです。

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【Q.95】
リーダーは、嫌いな人に対して、どのように接するべきでしょうか?

 

<コメント>

ご質問者の方が期待されている答えにはならないかもしれませんが、当たり前に、他の人と同じように接するべきでしょう。

前回も冒頭で「Lead with love」という格言を紹介しましたが、リーダーは愛を持って人を導かなければなりません。

リーダーは、好き嫌いをなくすのではなく、全ての人を好きになる努力をしなければなりません。リーダーに求められていることは自然体です。感情を平坦にしたり押し殺したりしては、人間らしい振る舞いではなくなってしまいますから、影響力は低下し、フォロワーが離れていってしまいます。

では、どのように嫌いな人を好きになればよいか。これには一つ面白いエピソードがあります。

学生の時ですが、ハリウッド業界で長年にわたり活躍された方から「私はゴキブリが嫌いだから、少し時間を割いて、ゴキブリの勉強をした。嫌いだからでストップしてしまうのではなく、相手のことをより深く知れば、関心も湧いてくるし、少なくとも前よりも好きになる。」という話を聞きました。これは一つの答えのように思います。

嫌いということで向き合うのを辞めてしまう・避けてしまうのではなく、この感情を真正面から捉えて乗り越えていくのがリーダーです。

「Lead with love」の愛情とは、まずは相手に関心・興味を持つところからスタートするように思います。

 

 

※この記事は、2021年5月22日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 094

 

以前もご紹介した「Lead with love」。愛とともに導く、愛をもって導く。リーダーは愛情とともにフォロワーを導かなければなりません。

リーダーは夢や目標を掲げています。そして、その夢や目標に共感して、フォロワーはリーダーについていきます。

夢や目標は、みんなが叶えたいと考えていることであって、今のままでは入手できないものです。夢と現実の差分を埋める必要があるのです。そのため、リーダーは、フォロワーとともに努力していかなければなりません。この差分を解消するために、リーダーは自分を律して自己成長をしていくだけでなく、同様に、フォロワーに対しても成長を求めていくことになります。

このリーダーがフォロワーに対して成長を求めていく時に、そこに愛情があるのか。それが重要なのです。

今まで記載をしてきたとおり、様々なリーダーシップの発揮の仕方があります。昔ながらのマッチョなリーダー像のように、リーダーが先頭でガンガン旗振りする場合もあるでしょうし、サーバント・リーダーシップのように、リーダーがフォロワーを支えていくことに主眼を置いた場合もあるでしょう。

しかし、リーダーは、自分の夢や目標を達成するために、リーダーシップの「やり方」を形だけ真似るようなことはしてはならないのです。

自らが情熱を持って取り組んでいない、言葉が軽い、言行不一致、フォロワーから搾取する、(組織の地位や肩書はあるものの実質的にはリーダーではない)・・・など詐欺的なリーダーの中には、一見それっぽい美辞麗句を並べながらも、フォロワーを自分の夢や目標を実現するための「道具」のように扱う人がいます。

リーダーたるもの自らを律して自己成長することは当然のことですが、フォロワーに対して、自分の子どもに対して接するように、本人のためを思って、愛情を持って注意することや叱ることができるのか。

もし愛情がなければ、リーダーとフォロワーの関係は、目的解決のためだけの手段になってしまいます。正しいリーダーシップの「あり方」の傍には、常に愛情が必要なのだと思います。

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【Q.94】
リーダーとして、組織をまとめるために気を付けていることはありますか?

 

<コメント>

ご質問者の方が組織をまとめたいと考えているならば、組織がどこに向かうのかという方針を示すことと、スタッフに対して粘り強くコミュニケーションをすることが大事です。

一日のうち長時間にわたり仕事をしているわけですから、所属している組織のスタッフ全員が、夢や目標のために一枚岩となって仲良く仕事をしてくれたら、どんなに素敵だろうと思います。

しかし、私が企業再生の現場で見てきた多くの場合では、スタッフの多くは組織をまとめたい(正確には「組織がまとまったらいいのに」)と思っているものの、スタッフ同士で軋轢を生まないことを優先してしまい、結果として、組織がバラバラになってしまっているというものです。

特に経営が悪化している会社は、会社の向かう方向が定まっていないため、スタッフそれぞれが言いたい放題で、それこそ自己中心的に自分の好きなことをやってしまっていたり、そもそもやる気がなくなってしまっていたりするなどの問題を抱えている場合が多いです。

しかし、この状況を改善するのは実は難しくありません。

まずは、ただ単純に、組織の向かうべき方針を決定すればいいのです。組織の向かうべき方針が決まれば、その方針にそぐうのであれば正解ですし、そぐわないのであれば不正解ということになります。白黒がはっきりつけば、スタッフの行動や考えを一つにまとめることは難しいことではありません。

次に、この方針を一人ひとりのスタッフに対して粘り強く伝えることが必要になります。組織をまとめたいと思うならば、情熱を持って、それこそ100回、1000回と同じ話をすることになります。

そして、方針を決めて、それを伝えていくということは、場合によっては、その方針が受け入れがたいスタッフは去ることになるかもしれません。そこにリーダーは覚悟を決める必要がありますが、それは必ずしもお互いにとって悪いことではないのです。

そのスタッフにとっての幸せは必ずしもその組織にだけあるわけではありませんし、他にあるかもしれないのです。何かを決めて選ぶということは、それ以外を選ばないということと論理的には同義です。

リーダーが組織を一つにまとめたいと考えているならば、方針を決めて、ただ漫然と目の前の軋轢を避けるのではなく、本音でぶつかりあってコミュニケーションして、未来志向で乗り越えていくことが重要になります。

 

 

※この記事は、2021年5月22日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 093

 

私は、ベンチャー支援だけでなく、企業再生や危機管理の仕事も生業にしていますので、こういった仕事をするたびに、人間の弱い部分を目にします。

毎度のことながら、実に人間は弱く、ズルい生き物だと思わされますが、立場が悪くなるなど精神的に追い込まれれば、私も含めて、みんな「そんなもの」なのだと思います。

以下に10個ほどエピソードを記載します。社会人生活が長くなると、皆さんも一度は似たような事例を目にしたことがあるのではないかと思います。

1.八方美人の人が、新しい権力者から「踏み絵」をさせられて、個々の人々に話をしてきたおべんちゃらと辻褄が合わずに苦しむ。

2.仕事ができない上司が、自分の精神の安寧のために、明らかに仕事ができないであろう人を、自ら積極的に中途採用(配置転換)して部下にする。しかも、その後に、その部下が仕事ができないことをなじり、イジメる。

3.権力者に明らかな間違いがあっても、見てみぬふりをする。まさに「馬鹿」の故事成語(なお、権力者に明らかな間違いがある場合、勇気がある人々は、確信犯的に、仕事の期限を守らずに、放置する。)。

4.精神的に追い詰められ過ぎて、誰の目から見ても明らかにバレるような嘘、苦しい嘘をつく。

5.まさに虎の威を借りる狐のように、節操なく新しい権力者に媚びへつらい、相対する人に対して執拗に攻撃する。そして、その人が、潮目が変わった途端、一番先頭に立って、その権力者の追い落としを始める。

6.自分よりも明らかに仕事ができないスタッフがいることが精神安定剤となる。そのスタッフが辞めた途端、不安に苛まされる。

7.二枚舌。社内政治に生き残ろうと必死になっているため、人によって180度違う話をしても良心が痛まない。

8.社内政治に毒され過ぎて、自分の価値判断がなくなり、正しいことが何なのかが分からなくなる。

9.組織的に何もせずに待つことが求められているにも関わらず、不安で何かしていないと居ても立っても居られなくなる。

10.自分が強いことを誇示するために、不必要に、部下を怒鳴りつける。人事権を行使する。

まさに「人は性善なれど弱し」で、リーダーは、人間の弱い部分としっかりと向き合わなければならないと思います。

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【Q.93】
リーダーは、フォロワーの信頼を高めるために何をすればよいでしょうか?

 

<コメント>

リーダーがフォロワーの信頼を高めるためには、当たり前に、正しいリーダーシップを発揮する必要があります。

それでは正しいリーダーシップとは何か。本連載でも今まで散々、記載をしてきていますが、リーダーは夢や目標を掲げ、フォロワーからの共感を得て、人を動かすことが必要です。

まずは、リーダーは夢や目標を掲げなければなりません。そして、その夢や目標を実現するために具体的に何をすべきか、具体的な戦略・戦術・施策についても考えなければなりません。

次に、これらがまとまったら、リーダーは、フォロワーに対して、しっかりと理解し共感してもらえるようなコミュニケーションをする必要があります。

フォロワーに主体性を持って実行してもらったら、リーダーはフォロワーの行動をチェックして、何かしらのフィードバックする必要があります。
上記に書いてあることをしっかりと行うだけでも、リーダーは、フォロワーから信頼を勝ち得ることができると思います。

さらにリーダーが信頼を高めるには、率先垂範と有言実行が大事だと思います。リーダー自らが情熱をもって先頭に立って実行していることや、フォロワーとの約束を守ってリーダーが言ったことをしっかりと実行することは大事なことです。いくら表面的な言葉が上手くとも、最終的にはリーダーの行動に全ては現れますので、この行動力や実行力は、リーダーの情熱・本気度を測るバロメーターにもなります。

また、リーダーは常に人間性も素晴らしく、フォロワーに対して、愛情がなければなりません。信頼の基礎となるのは、リーダーの人間性と愛情です。人間性を磨いて、人間としても安定的にフォロワーから尊敬をされることが必要ですし、フォロワーとの人間関係においても、フォロワーが愛情を感じられるようにならなければ信頼は高まりません。

 

 

※この記事は、2021年5月16日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 092

 

一切のビジネスモデルやテクノロジーを考慮せずに、経営者の人間性だけを見た場合、経営者で成功する人は、大きく2つに分けられるように思います。

一つは、夢を掲げて人を信じて、リーダーシップを発揮して影響力を拡大し、フォロワーを拡大していく経営者です。こういったタイプの経営者は、お客様のために、スタッフみんなで一致団結して努力して、より良い商品やサービスを生み出していくような前向きなエネルギーにあふれています。これは読者の皆さんにとっても想像しやすい理想的な経営者像だと思います。

これに対して、もう一つは、猜疑心が強く人を信じず、身近な人たちから搾取していく経営者です。こういったタイプの経営者は、スタッフはあまりスキルがいらない仕事をしている代わりに大量に人員採用できるビジネスを手掛けていることが多く、そのスタッフたちから、相場より給与水準を引き下げたりサービス残業をさせたりするなどで金銭を搾取していきます。そこで収奪した金銭を不動産や株式などに投資していって、さらに富を得ていくのです。

本連載では前者のようなリーダーになるためにリーダーシップ・スキルの獲得を目指して記載をしてきましたが、後者のモンスターのような大企業のオーナー社長も沢山いる事実を認識する必要があります。

例えば、私が知っているモンスターは、自分以外の他人のことを一切信用しておらず、自分の息子や愛人にまで興信所をつけているような人でした。他人を信じていない人なので、信じられるのは唯一お金だけです。上場会社を複数社支配しており、不動産も都内に多く所有して資産背景はあるものの、その方の行動を知っている人からすれば、社会的・金銭的な成功が必ずしも一般的な幸せとはリンクしていないことに気が付かされます。

このように、世間からは成功者と見られていますが、内実、人間不信の塊のような経営者は実は沢山いるのです。

つまり、残念ながら、リーダーシップ・スキルを極めていることが、すなわち経営者としての成功になるわけではないのです。ここに難しさと面白さがあります。

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【Q.92】
「役が人を育てる」という考え方がありますが、どう思われますか?

 

<コメント>

そういうこともあると思いますが、必ずしも地位に就くことが人の成長には繋がっていないと思います。

これについては度々記載をしてきておりますとおり、リーダーシップの考え方では、社会や組織における地位や立場は一切関係ありません。例えば、新人スタッフであっても、リーダーシップを発揮して、社長や会社を動かすこともできるのです。

しかし、日本社会においては、まだまだリーダーシップは正しく理解されておらず、地位が高い人・地位がある人のみにリーダーシップが求められると考えている人が多くいると思います。

そのため、役職に就いた途端、周囲の人から自然とリーダーシップの発揮が求められるようになり、その結果として、その人がリーダーシップを身に着けるということもあり得るとは思います。

私は、その人がリーダーになるか否かは、やはりその人の心の持ちようだと思います。

そのため、役職がなければ人が育たないかというとそのようなことはなくて、他のリーダーがその人がリーダーシップを発揮できるように導くことも可能だと考えています。

 

 

※この記事は、2021年5月16日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 091

 

私は上場会社の代表者の時に敵対的買収防衛をしておりましたので、相手側から散々、政治家にお金を流していると週刊誌に事実無根を書かれたり、ブラックジャーナルに誹謗中傷をされたりした経験があります。しかし、これらに動じることは一切ありませんでした。

私は自分でも長所だと考えていますが、どちらかというと自己肯定感が高く、他人の非難や誹謗中傷などどこ吹く風と聞き流せるのです。

自己肯定感が高いことは、リーダーに必要な資質だと思います。

本連載でたびたび記載してきております「人は性善なれど弱し」のとおり、人は強く、自分の心にゆとりがなければ、誰かに貢献することや誰かに優しく振る舞うことは難しいのです。

そして、人の強さとは、自分に自信があること、自己肯定感が高いことなのだと思います。

リーダーとは、暗闇の中、集団の先頭で、たいまつを持って、フォロワーを率いて進む存在です。誰も知ることのない明日に向かって、フォロワーを率いて突き進むには、この強さが必要です。

私たちは自分と他人が不可分な世界に生きていますので、自己を肯定することとは、自分以外の他人やこの世界を肯定することでもあります。

そのため、自己肯定感を高めるには、自分のことばかり考えるのではなく、他人やこの世界を肯定することでもあることに気づく必要があると思います。

より良いリーダーになるためには、まずは他人やこの世界を肯定し、自己肯定感を高め、その結果、自分への自信と心のゆとりを得て、さらに他人やこの世界に貢献することができるというグッドサイクルに入ることが大事だと思います。

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【Q.91】
リーダーに頭の良さは必要でしょうか?

 

<コメント>

当たり前ですが、リーダーにも、机の上の頭の良さはあったほうがいいと思います。

リーダーに頭の良さが必要だと思うのは、フォロワーのことを覚える記憶力と夢や目標を実現するためのマネジメント・スキルのためです。

リーダーとフォロワーは対等な関係ですから、リーダーも、フォロワーのことをしっかりと知らなければなりません。しかし、多くの場合、一人のリーダーに対して、多くのフォロワーという構図のため、リーダーには記憶力が求められるのです。

私は長らく時価総額100億円のベンチャー企業や中小・中堅企業のバリューアップを仕事にしておりますので、社員数が30名~100名程度の会社に関わることが多いです。これぐらいであれば、全員の名前と顔も一致しますし、出身地や家族構成ぐらい把握することができます。

しかし、恥ずかしながら、100名を超えてくると、私の足りない頭では限界なのです。記憶力が高ければ、一人一人にもっと最適な気遣いとコミュニケーションを図ることができるのにと日々、悔しい思いをしています。

また、マネジメント・スキルについては、明確に頭の良さが求められると考えています。

リーダーが描く夢や目標の実現可能性が低ければ、やはりフォロワーはついて来なくなってしまいます。誰もが夢を追いかけるからには実現したいと思っているのです。

この夢や目標の実現可能性・蓋然性を高めるのが、科学されたマネジメント・スキルなのです。

経営学は、100年以上の歴史があり、日進月歩で進化している領域です。これについては科学されていますので、知っているか知らないかなのです。そのため、まさに頭の良さが求められていると思います。

 

 

※この記事は、2021年5月14日付Facebook投稿を転載したものです。

リーダーシップ往復書簡 090

おかげさまで、本連載も今回で第90回を迎えます。第100回を目標に、あと10回ばかり書いていこうと考えています。ぜひとも最後までお付き合いください。

本連載でも以前ご紹介しましたが、リーダーには利害関係の調整が求められます。利害関係の調整というと事務手続きのように聞こえるかもしれませんが、この利害関係の調整に失敗をすると、時に組織同士の抗争・戦争になるなど生き死の問題に発展する可能性もあるため、リーダーは重大な責任を背負っています。

私も、様々な会社の企業再生の過程で、ややこしいステークホルダーと交渉し、多くの利害関係の調整をしてまいりましたので、その難しさは嫌というほどに理解しています。

利害関係の調整には大きく2つのポイントがあると考えています。それは、1つ目は、目の前の交渉相手に飲まれないこと、そして、2つ目は、交渉相手はあくまで個人ではあるが、相手の所属する組織の力を侮ってはいけないことだと考えています。

リーダーは、例え相手が大物政治家であろうがマフィアのボスであろうが、どのような権威や権力に対しても臆することなく、一人の人間として、一国一城の主として、しっかりと対峙しなければなりません。

相手や相手の属する組織の影響力に圧倒されていたのでは、利害関係の調整などできるものではありません。一人の人間として、対等に向き合い、もし相手側から脅されようが、世のため人のためにフォロワーのために、毅然と正しいことを言う必要があります。

但し、交渉相手は、一人の人間として取り扱えばいいと思いますが、決して相手の所属する組織の力を侮ってはいけません。

例えば、マフィアのボスは、マフィアという悪の組織において、マフィアのボスらしい振る舞いをしなければ、ボスの座に続けて居座ることはできないのです。そして、もしボスの座から追い落された場合は死に直結する場合もあるわけです。

そのため、利害関係の調整の際に、相手が組織を背負っていることを忘れようものなならば、痛い目を見ることになりかねません。過去の人類の歴史を紐解けば分かるとおり、人間は、国や組織のために、簡単に人殺しなど残虐な行いをするのです。

利害関係の調整は人間力と胆力の世界ですので、厳しい交渉経験をすればするほど、上手になると思います。交渉相手が名前のある大物であろうとひいてはなりませんが、相手が属する組織には最大限の注意を払わなければなりません。

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【Q.90】
大企業と中小企業で経営者のリーダーシップに違いはありますか?

 

<コメント>

リーダーシップに組織における地位や立場は関係ありませんので、大企業であれ中小企業であれ、経営者のリーダーシップに違いはありません。

しかし、リーダーシップの原理原則は同じですが、大企業と中小企業では、リーダーがリーダーシップを発揮するその前提が違います。

まずは、大企業と中小企業では、社内にある経営資源が大きく違います。私は、中小企業の経営者こそ、リーダーシップを発揮して、夢や共感の力で、経営資源の獲得をしなければならないと思っています。逆に、大企業の経営者は、社内にある経営資源だけに頼ることなく、強いリーダーシップを発揮して、影響力を広げていく必要があるでしょう。

次に、大企業と中小企業では、コミュニケーション方法が違います。リーダーはフォロワーに対して夢や目標を掲げることが求められます。そのため、その夢や目標についてフォロワーに共感してもらうために、リーダーは、フォロワーに対して、しっかりとしたコミュニケーションをする必要があるわけですが、大企業と中小企業ではスタッフ数が違いますので、コミュニケーション方法を変える必要があります。中小企業の場合はフォロワーを一人ずつ口説いていけば事足りると思いますが、大企業の場合は、より多くの人とコミュニケーションするために、文章を書いたり映像出演したりする必要もあるでしょう。

このように各論については様々違いがあると思いますが、リーダーシップのあり方については、組織の大きさを気にする必要は一切ありません。

 

 

※この記事は、2021年5月11日付Facebook投稿を転載したものです。