OKRとは?意味・KPIやMBOとの違い・設定方法をわかりやすく解説
OKR(オーケーアール)とは、達成したい定性的な目標(Objective)と、その達成度を測る定量的な成果指標(Key Results)をセットで設定する目標管理の手法です。
米インテル社で生まれ、Googleが導入したことで世界中に広まりました。
特徴は、あえて100%は届かないくらい高い目標を置き、四半期ごとに全員で進み具合を確かめながら組織の方向性をそろえる点にあります。
この記事では、OKRの意味と由来、構成要素、KPIやMBOとの違い、メリット・デメリット、設定の5ステップと部門別の具体例、そして形骸化させずにチームで回すコツまで、図解とテンプレートを交えて解説します。
目次
OKRとは?意味・読み方・由来をわかりやすく解説

OKRは「Objectives and Key Results」の略で、日本語では「目標と主要な成果」と訳されます。
目指す方向を言葉で示すObjectiveと、そこへの到達度を数字で測るKey Resultsを組み合わせ、組織全体の方向性をそろえるための目標管理の仕組みです。
OKRは「目標」と「主要な成果」の組み合わせ
OKRを広めた投資家ジョン・ドーアの公式サイトでは、OKRを「チームや個人が、測定可能な成果をともなう挑戦的な目標を立てるための協働的な目標設定の方法」と説明しています。
Objectiveは「何を達成したいか」、Key Resultsは「どうなれば達成したと言えるか」を表します。
ドーアはOKRの書き方を「私は〇〇を達成する。それは△△によって測られる」という一文の型で示しています。
〇〇に入るのがObjective、△△に入るのがKey Results。
たとえば「お客様に最初に相談される営業チームになる。それは新規商談数を月45件にし、受注率を25%に上げることで測られる」という形になります。
Objectiveは数字を入れずに目指す状態を言葉で示し、Key Resultsは必ず数字で測れる形にする——この役割分担がOKRの基本です。
ひとことで言うと:OKRは「どこを目指すか(O)」と「たどり着いたと判断する基準(KR)」をセットで決め、組織全員が同じ方向を向くための目標管理の型。
なぜ今、OKRが注目されているのか
日本では、組織の生産性をどう上げるかが大きな課題になっています。
近年、日本の労働生産性はOECD加盟38カ国中29位とされ、中小企業の労働生産性は大企業の半分以下という実態が示されています。
さらに総務省統計局『人口推計』によれば、生産年齢人口は1995年の約8,716万人をピークに減り続けています。
人を増やして成果を伸ばすやり方が通用しにくくなる中で、限られた人数で「本当に重要なこと」に集中する仕組みとしてOKRが注目されています。
OKRを構成する4つの要素

OKRの中心はObjectiveとKey Resultsの2つですが、実際に成果を出すには、KRを動かす具体的な取り組み(Initiatives)と、チームの対話を支えるCFRまでセットで押さえることが大切です。
ここでは4つの要素を、定義・誤解されやすい点・具体例の順に解説します。
Objective(オブジェクティブ・目標)とは?
Objectiveは、チームや組織が一定期間で「達成したいこと」を一文で示したもの。
数値は入れず、意義や目指す姿が伝わる言葉で表現するのが基本です。
- 期間内(多くは四半期)に取り組める範囲であること
- 少し背伸びしないと届かない野心的な内容であること
- メンバーが自分ごととして読めるわかりやすさ
「売上を伸ばす」のような抽象的すぎる表現でも、「Aの機能を作る」のような作業レベルの表現でもなく、その間にある「目指す状態」を言葉にするのがコツです。
数はチーム単位で3〜5個までに絞るのが目安とされています。
具体例:「新規のお客様から、最初に相談される営業チームになる」「問い合わせに最速で答えられるサポート体制をつくる」など、目指す状態を言葉で示す。
📝補足・ポイント
- 数の目安:チームごとに3〜5個まで
- Key Resultsとの関係:Objectiveが「どこへ」、KRが「たどり着いたと言える基準」
Key Results(キーリザルト・主要な成果)とは?
Key Results(KR)は、Objectiveの達成度を数値で確認するための指標。
ドーアの公式サイトでは、KRは「具体的で期限があり、意欲的だが現実的で、測定でき検証できるもの」と定義されています。
「達成したかどうか」を後から誰が見ても判定できる形にするため、件数・割合・金額・期間などの数値で表します。
KRを書くときに最も多い失敗は、成果ではなく「作業」を書いてしまうこと。
「ブログを10本書く」は作業で、「ブログ経由の問い合わせを月20件にする」は成果です。
作業はKRを達成するための手段(後述のInitiatives)に回し、KRには結果を表す数字を置きます。
また、1つのObjectiveにKRが多すぎると焦点がぼやけるため、Google re:Workでは1つのObjectiveにつき3個前後が目安とされています。
具体例:Objective「最初に相談される営業チームになる」に対し、「新規商談数を月30件から45件にする」「受注率を20%から25%に上げる」といった数値の目標を置く。
📝補足・ポイント
- 良いKRの条件:具体的・期限あり・測定可能・意欲的だが現実的
- 数の目安:1つのObjectiveにつき3〜5個程度
Initiatives(イニシアチブ・具体的な取り組み)とは?
OKRそのものはObjectiveとKey Resultsの2つで構成されますが、実務ではKRを動かすための「具体的な取り組み(Initiatives)」まで決めて初めて仕事が進みます。
たとえばKR「受注率を25%に上げる」に対して、「提案書のテンプレートを刷新する」「商談後48時間以内にフォローする」といったタスクがInitiativesです。
OKRがうまく回らない組織は、OKRを立てたところで止まり、この「タスクへの落とし込み」が抜けがち。
KRごとに、誰が・何を・いつまでにやるのかを決め、週単位で進み具合を確認すると、OKRが日常業務とつながります。
逆にInitiativesが決まらないまま期末を迎えると、「OKRは立てたが、何をすればよかったのか分からなかった」という状態になりやすいため注意しましょう。
具体例:KR「受注率を20%から25%に上げる」に対し、「失注理由を毎週集計する(担当A・毎週金曜)」「提案書テンプレートを改訂する(担当B・今月末)」とタスク化する。
📝補足・ポイント
- OKRとタスク管理の接点:KRごとに担当と期限を持つタスクを置く
- 見直しの単位:週1回のチェックインで進捗と打ち手を確認
CFR(シーエフアール・対話・フィードバック・承認)とは?
CFRは、ドーアが『Measure What Matters』でOKRと対になる考え方として紹介したものです。
マネジャーとメンバーが進捗や障害について話し合う「対話」、行動と意図のズレを埋める「フィードバック」、大小の成果を認める「承認」の3つで構成されます。
ドーアの公式サイトでも「CFRとOKRは互いを補完する」と説明されています。
OKRは目標の「中身」を決める仕組みで、CFRはその目標に向かう「人の関わり方」を整える仕組みです。
数値目標だけを掲げて対話がないと、メンバーは達成できなかったときに責められると感じ、挑戦的な目標を避けるようになります。
週次の1on1や定例会議の中で、KRの進み具合と困りごとを話し、うまくいった行動をその場で認めることで、OKRは「管理のための表」から「チームを前に進める道具」に変わります。
具体例:週1回15分の1on1で「今週KRはどれだけ動いたか」「何が障害か」「来週何を変えるか」を話し、成果が出た工夫はチーム全体の定例で紹介する。
📝補足・ポイント
- OKRとの関係:OKR=何を目指すか、CFR=どう関わり合うか
- 実践の場:1on1・週次チェックイン・定例会議
4つの関係を整理すると、Objectiveが目的地、Key Resultsが到着の基準、Initiativesが進むための行動、CFRが道中の声かけ。
OKRの解説では最初の2つだけが語られがちですが、成果を分けるのはInitiativesとCFRの運用です。
この点は後半の「運用のコツ」で詳しく取り上げます。
OKRの特徴(ストレッチ目標・採点方法・全社公開)

OKRがほかの目標管理と大きく違うのは、目標の高さ・採点の仕方・公開の範囲・評価との関係です。
ここを誤解したまま導入すると、OKRは「名前を変えただけのノルマ管理」になってしまいます。
100%を狙わない「ストレッチ目標」
Google re:Work『Set goals with OKRs』は、OKRの理想的な達成度を60〜70%程度としています。
毎回100%達成できるなら、それは挑戦が足りないサイン。
逆に、いつも30%以下なら、目標が高すぎるか、取り組みが足りていない可能性があります。
高い目標を置く理由は、「今のやり方の延長線では届かない」状態をつくることで、仕事の進め方そのものを見直すきっかけにするためです。
10%の改善なら今の延長で考えますが、2倍を目指すなら、やり方を根本から変える発想が必要になります。
ただし、すべてのOKRを高くすればよいわけではありません。
GoogleのOKRプレイブックでは、OKRを必ず達成すべき「コミット型」と、挑戦的な「ストレッチ型(アスピレーショナル型)」に分けて扱っています。
コミット型は100%(スコア1.0)の達成が前提で、ストレッチ型は平均0.7程度が想定されています。
→ 表は横にスクロールできます
| 種類 | どんな目標か | 期待する達成度 | 例 |
|---|---|---|---|
| コミット型OKR | 必ず達成すべき約束 | 100%(スコア1.0) | 法令対応の期限を守る、主要製品のリリース日を守る |
| ストレッチ型OKR | 高い理想に挑む目標 | 60〜70%(平均0.7程度) | 新規顧客数を前年の2倍にする |
0.0〜1.0のスコアで採点する

Googleの方法では、期末に各KRを0.0(まったく進まなかった)〜1.0(完全に達成した)で採点し、Objectiveのスコアはそれらのおおよその平均とします。
色で示す場合は、0.0〜0.3を赤、0.4〜0.6を黄、0.7〜1.0を緑とする運用がよく知られています。
大切なのは、スコアを「良い・悪い」の判定ではなく、次の四半期をどう変えるかを考えるためのデータとして使うこと。
たとえばスコアが0.3だったKRは、「目標が高すぎたのか」「打ち手が間違っていたのか」「途中で優先順位が変わったのか」を振り返り、次のOKRに生かします。
全員に公開し、人事評価とは切り離す
Google re:Work『Set goals with OKRs』では、OKRは公開され、社内の誰もが他のチームの目標を見られるとしています。
経営陣のOKRも含めて公開することで、自分の仕事が全社の目標のどこにつながっているかが分かり、部署をまたいだ協力も生まれやすくなります。
もう一つの重要な原則が、人事評価との切り離しです。
同じくGoogleの資料では「OKRは人事評価と同じものではない」と明記されています。
達成率がそのまま給与に反映されると、誰もが確実に達成できる低い目標を出すようになり、ストレッチ目標の意味がなくなるからです。
評価に使う場合でも、達成率そのものではなく「どれだけ挑戦したか」「その過程で何を学び、チームに貢献したか」を見る形にするのが一般的です。
日本でも、OKRを導入している企業の公開情報では、達成度そのものを直接の評価対象にしない運用が紹介されています。
- 公開する:全社のOKRを誰でも見られる場所に置く
- 切り離す:達成率をそのまま報酬に結びつけない
- 短く回す:四半期ごとに設定・採点し、年次の目標とつなげる
OKRとKPI・MBOの違い

OKRとよく比べられるのが、KPI(重要業績評価指標)とMBO(目標管理制度)です。
どれも「目標を数字で管理する」点は似ていますが、目的・達成の目安・評価との関係がはっきり違います。
まず観点ごとに並べて比べてみましょう。
→ 表は横にスクロールできます
| 観点 | OKR | KPI | MBO(目標管理制度) |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 高い目標に向けて組織の方向をそろえる | 業務やプロセスの状態を継続的に監視する | 個人の目標達成度を評価・処遇に反映する |
| 目標の性質 | 定性的なObjective+定量的なKR | 定量的な指標(数値) | 個人ごとの業務目標(定性・定量) |
| 達成の目安 | ストレッチ型は60〜70%(スコア0.6〜0.7) | 100%の達成が前提 | 100%の達成が前提 |
| 設定の流れ | 上位と連動しつつ現場からも提案(双方向) | KGI(最終目標)から逆算して設定 | 上司と部下の面談で個別に設定 |
| サイクル | 四半期が一般的(年次と併用も) | 継続的にモニタリング | 半期・年次が多い |
| 公開範囲 | 原則として全社に公開 | 部門・チームで共有 | 本人と上司の間が中心 |
| 人事評価との関係 | 切り離して運用するのが基本 | 組織による | 評価・報酬と直結しやすい |
KPIとの違い:「監視する指標」か「挑戦する目標」か
What Matters『OKR用語集』では、KPIを「組織の運営状況を測るために使われる指標」と定義しています。
売上、解約率、問い合わせ件数など、事業の健康状態を示す数字を継続的に見張るのがKPIの役割で、基本は100%達成が前提です。
一方、OKRは「この四半期で何を大きく変えるか」を決める道具。
たとえば、普段は「解約率3%以下」をKPIとして見張りつつ、今期は解約率を大きく下げたいなら、「解約率を3%から1.5%に下げる」をKRとしてOKRに入れます。
このように、KPIの中から今期重点的に改善したいものを選んでKRに置くと、両者を無理なく使い分けられます。
MBOとの違い:「個人の評価」か「組織の方向づけ」か
MBO(目標管理制度)は、ドラッカーが提唱した目標管理を源流とし、日本では多くの企業で人事評価制度として使われています。
上司と部下が面談で個人の目標を決め、半期や年度末に達成度を評価して、賞与や昇給に反映するのが一般的。
評価と直結しているため、MBOの目標は「確実に達成できる水準」に設定されやすいという性質があります。
OKRはこの弱点を補うように、評価から切り離し、高い目標に挑戦しやすくした点が最大の違いです。
また、MBOが上司と部下の1対1にとどまりがちなのに対し、OKRは全社に公開され、組織の目標から個人の目標までが共有されます。
人事評価の仕組みとしてMBOを残しつつ、組織の方向づけにはOKRを使う、と併用している会社も多いです。
OKR・KPI・MBOはどう使い分ける?
3つは目的が違うので、どれか1つを選ぶというより、役割を分けて組み合わせるのがおすすめです。
自社が今いちばん解決したい課題に合わせて、主軸を決めましょう。
- 事業の健康状態を毎日・毎週見たい → KPI(売上・解約率・問い合わせ件数など)
- 個人の成果を公平に評価したい → MBO(評価・処遇の仕組みとして)
- 組織全体で大きな変化を起こしたい → OKR(四半期ごとの挑戦目標として)
- 迷ったら → KPIで現状を見張りつつ、重点課題1〜2つだけOKRで挑戦する
OKRのメリット・デメリット

OKRは正しく運用すれば組織を大きく動かせる一方、導入の手間や運用の難しさもあります。
メリットとデメリットの両方を知ったうえで、自社に合うかを判断しましょう。
OKRのメリット
ドーアは『Measure What Matters』で、OKRがもたらす力として「集中」「連携」「トラッキング(進捗の追跡)」「ストレッチ」を挙げています。
実務に置き換えると、次のような効果が期待できます。
- 方向がそろう:全社からチーム・個人までの目標がつながり、部署ごとのバラバラな動きが減る
- 優先順位が明確になる:Objectiveを3〜5個に絞るので「やらないこと」も決まる
- 進捗が見える:数値のKRを毎週確認するため、遅れに早く気づける
- 挑戦する文化が育つ:評価と切り離すことで、高い目標に手を挙げやすくなる
- 自律性が高まる:現場が自分たちのOKRを提案するので、当事者意識が生まれる
中でも見落とされがちなのが、「やらないこと」が決まる効果。
目標を絞り込む過程で、今期は手をつけない仕事がはっきりし、限られた人数でも重要なことに力を集中できます。
OKRのデメリットと対策
→ 表は横にスクロールできます
| デメリット | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 設定・運用に手間がかかる | 期初の目標づくりや週次の確認に時間をとられる | 最初は1チーム・Objective1〜2個から小さく始める |
| 人事評価と混同される | 低い目標ばかりになり挑戦が生まれない | 達成率を直接報酬に結びつけないと最初に宣言する |
| 目標が高すぎて疲弊する | 毎回達成できずメンバーの意欲が下がる | コミット型とストレッチ型を分け、0.7で十分と共有する |
| 期中に放置される | 期初に立てて期末まで誰も見ない | 週1回のチェックインを定例に組み込む |
| タスクに落ちない | OKRと日々の仕事が別物になる | KRごとに担当と期限つきのタスクを決める |
特に注意したいのが「期中に放置される」問題。
OKRは立てることより、毎週見直し続けることのほうが難しい仕組みです。
期初に時間をかけて立派なOKRをつくっても、日々のタスクとつながっていなければ、期末に「そういえばOKRがあった」と思い出すだけになります。
OKRが向いている組織・向いていない組織
OKRは、新規事業や成長期の組織、部門ごとに目標がバラバラで連携がとれていない組織と相性が良い手法。
「現状維持では足りない」という危機感がある組織ほど、ストレッチ目標が機能します。
一方で、経理の締め処理や品質管理のように「毎回100%正確であること」が求められる業務は、ストレッチ型のOKRよりKPIで管理するほうが向いています。
こうした業務でOKRを使うなら、コミット型として扱うか、「月次決算を早める」のような改善テーマに絞るとよいでしょう。
- 向いている:成長・変革期の組織、部署横断の取り組みが多い組織、自律的に動くチームを育てたい組織
- 工夫が必要:定型業務が中心の部署、評価制度とセットでしか目標を扱ってこなかった組織
OKRの設定方法5ステップ【テンプレート付】

OKRは、上位の方針を確認するところから始め、Objective、Key Results、チームと個人への展開、週次の確認まで、5つのステップで設定します。
初めて導入する場合は、まず1つのチームで試し、手応えをつかんでから全社へ広げるのがおすすめ。
設定の5ステップ
- 上位の方針を確認する:会社のビジョン・中期計画・年度方針から「今期いちばん変えたいこと」を確認する
- Objectiveを決める:目指す状態を、数字を使わず、メンバーが動きたくなる言葉で3〜5個以内にまとめる
- Key Resultsを数値化する:各Objectiveに、達成度を測る数値の成果を3〜5個置く(作業ではなく成果を書く)
- チームと個人に展開する:上位のKRを受けて、チームや個人が自分たちのOKRを提案し、すり合わせる
- 週1回進捗を確認する:KRの数値と打ち手(Initiatives)を毎週確認し、期末に採点して振り返る
ステップ4の展開では、上から一方的に割り振るのではなく、現場が自分たちでOKRを提案することが大切。
ドーアも、OKRをすべてトップダウンで決めるのではなく、現場からの提案を組み合わせることを勧めています。
上位のOKRとつながっているかを確認しつつ、現場の知恵を取り込むと、当事者意識のある目標になります。
また、上位のKRがそのまま下位のObjectiveになる形で展開すると、全社とチームのつながりが分かりやすくなります。
たとえば全社のKR「新規顧客数を前年比1.5倍にする」が、営業チームのObjective「新規のお客様から最初に相談される営業チームになる」につながる、といった形です。
良いObjective・Key Resultsの書き方
→ 表は横にスクロールできます
| 悪い例 | 良い例 | ポイント | |
|---|---|---|---|
| Objective | 売上を上げる | 新規のお客様から最初に相談される営業チームになる | 抽象的すぎず、目指す状態が伝わる |
| Objective | CRMを導入する | 顧客情報をチーム全員で使いこなせる状態をつくる | 作業ではなく目的を書く |
| Key Results | 商談を増やす | 新規商談数を月30件から45件にする | 開始値と目標値を数字で示す |
| Key Results | ブログを10本書く | ブログ経由の問い合わせを月20件にする | 作業ではなく成果を書く |
Key Resultsで特に気をつけたいのは、「開始値→目標値」をセットで書くことです。
「受注率25%」だけでは、もともと24%だったのか10%だったのかで難易度がまったく違います。
「20%から25%に」と書けば、どれだけの挑戦なのかが全員に伝わり、期末の採点もぶれません。
また、KRを「量」だけで固めると、質を犠牲にして数字だけを追う行動が起きることがあります。
商談数のKRには受注率のKRを、リリース頻度のKRには障害件数のKRを組み合わせるなど、量と質のバランスをとると健全なOKRになります。
- Objectiveは3〜5個以内に絞れているか
- Objectiveに数字が入っていないか(数字はKRで測る)
- Key Resultsは作業ではなく「成果」を書いているか
- Key Resultsに開始値と目標値の両方があるか
- 量のKRと質のKRのバランスがとれているか
- 上位のOKRとのつながりを説明できるか
そのまま使えるOKRテンプレート(エクセル・スプレッドシート)
OKRは専用の仕組みがなくても、表計算ソフトの1枚のシートから始められます。
次のテンプレートは、1行目にObjective、その下にKey Results、さらにKRを動かすための取り組み(Initiative)を並べる形式です。
区分,内容,担当,期限,開始値,目標値,現在値,進捗スコア(0.0-1.0),メモ
Objective,新規のお客様から最初に相談される営業チームになる,営業部,2026/12/31,,,,,定性的な目標(数値は入れない)
KR1,新規商談数を月30件から45件にする,山田,2026/12/31,30,45,36,0.4,(現在値-開始値)÷(目標値-開始値)
KR2,受注率を20%から25%に上げる,佐藤,2026/12/31,20,25,22,0.4,
KR3,導入事例記事を3本公開する,鈴木,2026/12/31,0,3,1,0.3,
Initiative,失注理由を毎週集計し定例で共有する,佐藤,毎週金曜,,,,,KR2の打ち手
Initiative,提案書テンプレートを改訂する,山田,2026/11/15,,,,,KR2の打ち手
進捗スコアは「(現在値-開始値)÷(目標値-開始値)」で計算できます。
エクセルやスプレッドシートなら、スコアの列に数式を入れておけば、毎週の確認では現在値を更新するだけでスコアが自動で変わります。
Initiativeの行には、担当者と期限を必ず入れておくと、OKRが日々のタスクとつながります。
OKRの実例から学ぶ(部門別・有名企業)

OKRは、実際の例を見ると書き方のイメージがつかみやすくなります。
ここでは部門別のOKR例と、OKRを広めるきっかけになった有名企業の事例を紹介します。
部門別のOKR例
→ 表は横にスクロールできます
| 部門 | Objective(目標) | Key Results(主要な成果) |
|---|---|---|
| 営業チーム | 新規のお客様から最初に相談される営業チームになる | 新規商談数を月30件から45件にする/受注率を20%から25%に上げる/導入事例記事を3本公開する |
| マーケティング | 見込み顧客にとって最も役立つ情報源になる | 資料ダウンロード数を四半期で600件にする/メルマガ開封率を25%にする/ウェビナー参加者の満足度を4.5以上にする |
| カスタマーサポート | 問い合わせたお客様が待たずに解決できる体制をつくる | 初回回答までの平均時間を24時間から4時間にする/一次解決率を70%から85%にする/FAQ経由の自己解決件数を2倍にする |
| 開発チーム | 安心して毎週リリースできるプロダクトにする | リリース頻度を月2回から週1回にする/リリース後の重大障害を0件にする/自動テストのカバー率を60%から80%にする |
| 人事・採用 | 入社した人が3か月で活躍できる会社にする | 入社3か月後のオンボーディング満足度を4.0以上にする/入社半年以内の離職を0人にする/全部署で受け入れマニュアルを整備する |
| バックオフィス | 月末に慌てない経理の仕組みをつくる | 月次決算の締めを10営業日から5営業日にする/経費精算の差し戻し率を15%から5%にする/手作業の転記を月20時間削減する |
どの例も、Objectiveは「どんな状態になりたいか」を言葉で示し、Key Resultsは開始値と目標値をセットで書いています。
バックオフィスのように定型業務が多い部門でも、「月次決算を早める」「手作業を減らす」といった改善テーマにすれば、OKRを使えます。
自社でOKRをつくるときは、いきなりゼロから考えるより、まず上の表の型をまねて書いてみましょう。
書いたOKRをチームで読み合わせ、「このKRが達成できたら、本当にObjectiveに近づいたと言えるか」を確かめると、質が一気に上がります。
インテル「オペレーション・クラッシュ」
当時インテルは、16ビットのマイクロプロセッサ市場で競合のモトローラに押されていました。
インテル『オペレーション・クラッシュ』の解説によると、インテルは「8086を最高性能の16ビット・マイクロプロセッサ・ファミリーとして確立する」というObjectiveを掲げ、その主要な成果として「顧客の製品に採用される件数(デザインウィン)2,000件」などのKRを置きました。
全社が同じOKRに向かって動いた結果、インテルは巻き返しに成功します。
インテル公式の社史『The 8086 and the IBM PC』によると、8086の派生チップである8088は、のちに初代IBM PCに採用されました。
1つの明確なObjectiveと数値のKRが、部署をまたいだ全社の動きを一つにまとめた代表例です。
GoogleやYouTube、日本企業の事例
Googleは、ドーアからOKRを紹介されて以来、年次と四半期のOKRを設定し、全社で共有・採点する運用を続けています。
その考え方はGoogle re:Work『Set goals with OKRs』で公開されています。
YouTubeは、1日あたりの総視聴時間を10億時間にするという、当時の10倍規模の目標を掲げました。
複数年にわたるObjectiveの下に年次・四半期のKRを置いて進め、達成はYouTube公式ブログで発表されています。
日本では、メルカリがOKRの運用を公開しています。
メルカリ『デザインチームの公式ブログ』では、四半期ごとにOKRを設定し、KRは70%前後の達成を想定したストレッチゴールとすること、そして達成度そのものを原則として評価の対象にしないことが紹介されています。
海外の事例だけでなく、日本の組織でもOKRの基本原則がそのまま生かされていることが分かります。
OKRを形骸化させずチームで運用するコツ

OKRは、立てた瞬間ではなく、四半期を通じて回し続けることで成果につながります。
ここでは、OKRを形骸化させないための運用サイクルと、日々のタスク管理につなげるコツを紹介します。
四半期の運用サイクルを決めておく
- 期初(1〜2週目):上位方針を確認し、チームのOKRを決めて全員に公開する
- 毎週(15〜30分):KRの現在値を更新し、今週の打ち手と障害を確認する(チェックイン)
- 期中(6〜7週目):進み具合を見て、打ち手の変更やKRの見直しが必要かを話し合う
- 期末(最終週):KRを0.0〜1.0で採点し、うまくいったこと・次に変えることを振り返る
形骸化する組織の多くは、期初と期末の会議だけを行い、その間の「毎週の確認」が抜けています。
週1回のチェックインこそがOKR運用の心臓部です。
既存の週次定例の冒頭10分をOKRの確認にあてるなど、新しい会議を増やさずに組み込むと続けやすくなります。
チェックインでは、CFRを意識して進めましょう。
数字の報告だけで終わらせず、「何が障害になっているか」「誰の助けが必要か」を話し、前進した工夫はその場で認めます。
こうした対話があることで、遅れているKRも責められるものではなく、チームで解決するテーマになります。
KRを「誰が・何を・いつまでに」のタスクに落とす
OKRが形骸化する最大の原因は、目標と毎日のタスクが別々に管理されていること。
OKRは期初の資料の中にあり、日々の仕事は別のToDoリストやチャットで動いている——この状態では、忙しくなるほどOKRは後回しになります。
対策はシンプルで、KRごとに「誰が・何を・いつまでに」やるのかをタスクとして書き出し、チーム全員で共有・管理することです。
たとえばKR「受注率を20%から25%に上げる」なら、「失注理由の集計(佐藤・毎週金曜)」「提案書テンプレートの改訂(山田・11月15日)」のように分解します。
こうしておけば、週次のチェックインで「KRの数値」と「タスクの進み具合」を同時に確認でき、遅れの原因もすぐに見つかります。
→ 表は横にスクロールできます
| 階層 | 決めること | 見直す頻度 |
|---|---|---|
| Objective | この四半期で目指す状態 | 四半期ごと |
| Key Results | 達成を判断する数値(開始値→目標値) | 毎週数値を更新 |
| タスク(Initiatives) | 誰が・何を・いつまでにやるか | 毎日〜毎週 |
OKRとタスクを「見える化」してチームで回す
組織の生産性向上には、「チームのタスク管理」と「タスクの見える化」が欠かせません。
OKRに当てはめれば、目標を立てたうえで、その達成に向けたタスクが今どこまで進んでいるかを全員で見られる状態にすることが、改善の出発点になるということです。
エクセルのテンプレートで始めるのは良い方法ですが、チームの人数やOKRの数が増えると、「最新のファイルがどれか分からない」「誰も更新していない」といった問題が起きやすくなります。
人材を資本として生かす経営は経済産業省の『人的資本経営』でも重視されており、目標・担当・期限・進捗を1か所で回せる仕組みをつくることは、OKRを組織に根づかせるうえでの近道です。
私たちが開発・運営するスーツアップは、表計算ソフトのような操作で、チームのタスクを見える化し、タスクの抜け漏れや期限遅れを防ぐツールです。
「誰が・どのようなタスクを・いつまでに」に絞ってチームのタスクを管理できるので、KRごとに分解したタスクの担当と期限、進み具合を全員で共有し、毎週のチェックインをそのまま回せます。
エクセルに近い感覚で使えるため、OKRのテンプレートから移行してもメンバーに大きな負担がかかりにくい点も特長です。
OKRに関するよくある質問
OKRを導入・運用するときに、特によく聞かれる疑問をまとめました。
- OKRの読み方と意味は?
-
「オーケーアール」と読みます。Objectives and Key Results(目標と主要な成果)の略で、定性的な目標(Objective)と、その達成度を測る定量的な成果指標(Key Results)をセットで設定する目標管理の手法です。
- OKRとKPIの違いは?
-
KPIは業務の状態を継続的に測る指標で、基本は100%達成が前提です。OKRは期間内に大きく前進するための挑戦的な目標で、60〜70%の達成が理想とされます。KPIの中から今期重点的に改善したい指標をKRに置くことで、両者は併用できます。
- OKRとMBOの違いは?
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MBOは個人の目標達成度を人事評価や処遇に反映する制度です。OKRは組織全体の方向をそろえるための仕組みで、原則として全社に公開し、達成率を直接評価に結びつけない点が大きな違いです。
- ObjectiveとKey Resultsはいくつ設定すればいい?
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一般に、Objectiveはチームごとに3〜5個以内、Key Resultsは1つのObjectiveにつき3〜5個程度が目安です。初めて導入する場合は、Objective1〜2個から小さく始めると運用が安定します。
- OKRの達成率はどれくらいを目指す?
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挑戦的なストレッチ型のOKRでは、60〜70%(スコア0.6〜0.7)の達成が理想とされます。毎回100%達成できる場合は目標が低すぎる可能性があります。ただし、必ず達成すべきコミット型のOKRは100%が前提です。
- OKRはどのくらいの期間で設定する?
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四半期(3か月)ごとに設定するのが一般的です。年次の大きなOKRを置き、その下で四半期ごとのOKRを設定・採点する組織も多くあります。
- OKRを人事評価や給与に反映してもいい?
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達成率をそのまま報酬に結びつけるのはおすすめできません。低い目標ばかりが出され、挑戦が生まれなくなるためです。評価に使う場合は、挑戦の度合いやプロセス、チームへの貢献を見る形にするのが一般的です。
- OKRが「意味ない」と言われるのはなぜ?
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多くは運用の問題です。期初に立てたまま放置される、日々のタスクとつながっていない、評価と混同されて低い目標になる、といった状態だと効果が出ません。週1回の確認と、KRをタスクに落とし込む仕組みをつくることで防げます。
まとめ|OKRは「立てる」より「回す」ことで成果につながる
OKRとは、定性的な目標(Objective)と、その達成度を測る定量的な成果指標(Key Results)をセットで設定する目標管理の手法。
インテルで生まれ、Googleで広まり、60〜70%の達成を理想とするストレッチ目標・全社公開・人事評価との切り離しを特徴とします。
KPIが状態を見張る指標、MBOが個人を評価する制度であるのに対し、OKRは組織全体の方向をそろえ、大きく前進するための仕組みです。
3つは対立するものではなく、目的に応じて組み合わせて使えます。
そして、OKRの成否を分けるのは設定よりも運用です。
KRを「誰が・何を・いつまでに」のタスクに落とし、毎週チームで確認することで、OKRは期末に思い出すスローガンではなく、チームを動かす日々の道しるべになります。
まずは1つのチームで、Objective1〜2個から小さく始めてみてください。
参考文献・出典
- 小松裕介『1+1が10になる組織のつくりかた ── チームのタスク管理による生産性向上』実業之日本社、2025年、ISBN 978-4-408-65143-9
- ジョン・ドーア『Measure What Matters 伝説のベンチャー投資家がGoogleに教えた成功手法 OKR』土方奈美訳、日本経済新聞出版、2018年(ISBN 978-4-532-32240-3)
- ピーター・F・ドラッカー『現代の経営』ダイヤモンド社(原著 The Practice of Management, 1954年)
- What Matters(ジョン・ドーア公式)のOKR解説
- What Matters「OKRとCFRの違い」
- Google re:Work「Set goals with OKRs」
- GoogleのOKRプレイブック(What Matters掲載)
- 日本生産性本部『労働生産性の国際比較』
- 中小企業庁『中小企業白書』
- 総務省統計局『人口推計』
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO
2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に株式会社スーツ設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。2020年10月にYouTuber事務所の株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し、2022年1月に上場企業の子会社化を実現。2022年12月にスーツ社を新設分割し同社を商号変更、新たに株式会社スーツ設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。
現在、スーツ社では、チームのタスク管理ツール「スーツアップ」の開発・運営を行い、中小企業から大企業のチームまで、日本社会全体の労働生産性の向上を目指している。
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