「リーダーと考える経営の現場」では、前回に続き、私が経営の現場で得た「気づき」に基づいて、基本となるリーダーシップの考え方について記載していきたいと思います。
今回は、経営の現場において、特に深く考えずに使われることの多い、マネジメントとリーダーシップの違い、マネージャーとリーダーの違いについて記載します。両者を比較することが、一番、読者の皆さんの理解に役立つのではないかと思いますので、冒頭に比較をしたいと思います。
マネージャーは管理し、リーダーは変革する。
マネージャーは現状を受け入れ、リーダーは現状に挑戦する。
マネージャーは管理して人を動かし、リーダーは心に働きかけて人を動かす。
マネージャーは数字を追いかけ、リーダーは未来を目指す。
マネージャーは目先のことを考え、リーダーは長期的な視野を持つ。
マネージャーは組織を優先し、リーダーは人間を優先させる。
マネージャーは複雑さに対処し、リーダーは方向を示す。
マネージャーは正しく手続きを処理し、リーダーは正しいことをする。
マネジメント・スキルは人を管理するためのスキルです。これに対して、リーダーシップ・スキルは人を導くためのスキルです。なお、スキルと表現をした理由は、スキルである以上は、学びさえすれば、たとえ先天的な能力のように思われることの多いリーダーシップであったとしても、再現性のある科学的なアプローチで、誰でも後天的に身に着けることができます。
上記のように記載をしていくと、マネージャーよりも、リーダーのほうがカッコよく、正しく、重要なように思うかもしれませんが、必ずしもそういうわけではありません。マネジメントもリーダーシップも、経営の現場において、ともに重要となるスキルですが、それぞれスキルが求められる場面が違うだけです。
むしろ、私の10年以上の経営経験では、経営の現場では、リーダーシップよりもマネジメントについて語られることのほうが多いように思います。理由の一つとしては、おそらく、組織において本来やるべきことがなされていない場合に、マネジメントの必要性が語られることが多いためだと思います。そのため、ビジネスシーンでは、リーダーシップよりもマネジメントこそ重要であると考えている方が多いかもしれません。
リーダーシップよりもマネジメントについて語られることのほうが多い理由の二つ目としては、そもそも、マネージャーとリーダーの人数の多寡もあると思います。MBAホルダーが増えて、経営学が一般化したおかげで、仕事を“まわしていく”マネジメント・スキルを持つマネージャーは増えましたが、仕事を“創っていく”リーダーシップ・スキルを持つリーダーはまだまだ不足しています。そのため、マネジメントについて耳にすることは増えましたが、まだまだリーダーシップについて語られることが少ないのだと思います。
特に昨今のマネジメント・スキルの一般化は著しく、経営の現場の「共通言語」として、日常業務において、経営学の専門用語が使われることも多くあるように思います。マネジメント・スキルの代表格としては、経営戦略、マーケティング、アカウンティング、オペレーションやファイナンスなどの経営学の知識が挙げられると思います。一方、リーダーシップ・スキルは、「やり方」ではなく「あり方」について、リーダーのあるべき行動様式に関する知識です。前者のほうが、読者の皆さんにとっても、馴染みがあるのではないでしょうか。
しかし一方、日本では、「失われた20年」を経て、特に強いリーダーシップの必要性が言われています。世の中が複雑化して、先行きが不透明となり、不安な要素が増えれば増えるほど、人々は、現状に挑戦し、変革し、心に働きかけて人を動かして、正しいことをして、未来を目指すリーダーを求めるのです。
キャリアアップとして、マネジメント・スキルを身に着けて優れたマネージャーになることも一つの選択肢ですが、リーダーシップ・スキルを身に着けて優れたリーダーとなることも一つの選択肢だと思います。リーダーが不足していると言われて久しいですので、リーダーとなるキャリアは、考え方によっては多くの人にチャンスがあると思います。
なかなかキャリア(経歴・職歴)という概念において、リーダーを目指すというキャリアを提示する人は少ないかもしれませんが、前述のとおり、社会的な要請でもありますので、ぜひとも一人でも多くの人に優れたリーダーを目指してもらいたいと思います。マネジメントと同じように、リーダーシップが一般化され、優れたマネージャーになりたいと思うように、優れたリーダーになりたいと思う人が増えると、さらにより良い世の中になるのではないかと思います。
「リーダーと考える経営の現場」
第1回 「はじめに」
第2回 「リーダーシップに立場は関係ない」
第3回 「マネジメントとリーダーシップの違い」
第4回 「人は性善なれど弱し」
第5回 「自責と他責」
第6回 「人として正しいことを」
第7回 「リーダーは自然体」
第8回 「サーバント・リーダーシップ」
第9回 「愛され畏れられる存在」
第10回 「傲慢な存在」
第11回 「子どものように叱る」
第12回 「奇跡を起こし、神となれ」
第13回 「Lead with love」
第14回 「リーダーシップの旅 前半」
第15回 「リーダーシップの旅 後半」
※この記事は、WEBメディア「The Urban Folks」に連載されている2018年2月14日公開の「リーダーと考える経営の現場・第3回 マネジメントとリーダーシップの違い」を転載したものです。
株式会社スーツ 代表取締役社長CEO
2013年3月にソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、東証スタンダード上場企業)の代表取締役社長に就任。7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社前身の株式会社スーツ設立。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。2020年10月に大手YouTuberプロダクションの株式会社VAZの代表取締役社長に就任。月次黒字化を実現し上場会社の子会社化を実現。2022年12月に株式会社スーツを新設分割し当社設立と同時に代表取締役社長CEOに就任。