※この記事は、WEBメディア「The Urban Folks」に連載されている2018年10月23日公開の「リーダーと考える経営の現場・第12回 奇跡を起こし、神となれ」 を転載したものです。

 

「リーダーと考える経営の現場」では、前回に続き、私が経営の現場で得た「気づき」に基づいて、基本となるリーダーシップの考え方について記載していきたいと思います。

今回のテーマは、リーダーには、時に、フォロワーが奇跡だと思うようなことを成し遂げる神がかった力が求められるということをご紹介したいと思います。多くのリーダーへの叱咤激励の意味も込めて、本稿のタイトルの一部には「神となれ」とまで記載しました。なお、読者の皆さんの中でも不見識に思う方もいるかもしれませんが、ここでは、人智を超えた力や存在という意味で、神という表現を使っています。

「人を動かす」際に、“勝ち戦”であることがフォロワーに予見できることは大事な要素です。人は誰しも、わざわざ“負け戦”に関わりたいとは思わないものです。特にリーダーとフォロワーの関係期間が短い場合などには、特大ホームランまでは打たないにしても、小さな成功を積み重ねるというヒットを打ち続けることが信頼構築に繋がります。野球の名選手でも“三割バッター”が関の山で、ヒットを何打席にもわたって打ち続けることは奇跡なのです。しかし、リーダーは、時に、フォロワーが奇跡だと思うようなことをやらなければなりません。それは、フォロワーは心の奥底では自分たちのリーダーが奇跡を起こすことを望んでいるからです。

私が20代半ばでまだ駆け出し経営者だった頃に、過去に大臣を務めた経験のあるメンターの方から、「組織の地位や権限など『パワー』は一切使わずに、リーダーシップだけで企業再生させなさい。」、「本来ならば利害関係の一切生じない人物を、リーダーシップを発揮して口説き落として、会社のために協力させなさい。」や「人生どこで何があるか分からないのだから、敵と思っている人を愛しなさい。」などと教えを受けました。

当初、私は、年齢も若く未熟だったからか、これらの教えについて、現実の問題を全く理解していない無理難題のように思ったものです。しかし、私のリーダーシップへの理解が深くなるにつれて、この無理難題の本当の価値が分かってきたのです。

これらの無理難題は、現実の問題を無視した机上の空論ではまさに正論です。本来はリーダーが真正面から自分と向き合って、取り組むべき課題なのです。しかし、多くのリーダーは、様々な現実の問題を言い訳にして、自分の可能性、フォロワーの存在や可能性を信頼せずに、現実世界と折り合いをつけてしまうのです。

例えば、リーダーシップだけで企業再生させるということは、多くの経営者からは非効率で信じられないと言われると思います。一般的には、企業再生に限らず、株式会社の良いところは、一人一票が原則の民主主義社会と違って、株式のシェア(持ち分)に基づいて株主が圧倒的な「パワー」を手にすることができ、その株主の委任を受けた経営者が日常において迅速に意思決定できることです。そのため、そもそも、株式会社という制度において、組織の地位や権限など「パワー」を行使することは想定内のことであり、何ら悪いことではありません。夢や共感などのリーダーシップだけで企業再生させるということは、リーダーがフォロワーとの人間関係を構築し、赤字などで停滞していた組織によってモチベーションが低下しているフォロワーに自信をつけさせ、前を向かせて、一歩ずつ歩ませ、会社の業績を回復させることです。これを資金繰りが厳しかったり、取引先からの信用が低下していたりするなどの状況下で、短期間で成し遂げなければなりません。この大変さは、読者の皆さんの自身の会社に置き換えてもらうと、いかに奇跡的なことかご理解いただけるのではないかと思います。一般的に「パワー」を行使しない会社組織など、まず存在しないのです。

「本来ならば利害関係の一切生じない人物を、リーダーシップを発揮して口説き落として、会社のために協力させなさい。」ということも、相手のメリットを一切考えない、ビジネスの世界ではまず考えられない非合理的なことです。また、「人生どこで何があるか分からないのだから、敵と思っている人を愛しなさい。」ということも、道徳として素晴らしいですが、聖人君主のような考え方で、現実世界では否定されることも多いでしょう。

しかし、しっかりとこれらの問題と向き合い、実現すると、リーダーとしても人格を磨くことができ、根源的な自信になります。また、フォロワーからの求心力も圧倒的に高まるのです。極端な話、現実から浮世離れしていればしているほど、理不尽であれば理不尽なほど、実現した場合に、リーダーは力を手にすることができるのです。前述の「敵を愛する」のように神がかった人間性をフォロワーに見せることができれば、多くのフォロワーに対して圧倒的な説得力を手にすることになります。

歴史上の著名なリーダーたちに限らず、大会社の創業者であったり、大物政治家であったりの多くには、伝説的なエピソードがあります。リーダーが「人を動かす」ためには、フォロワーを熱狂させるような奇跡が必要なのです。また、多くのフォロワーは、自分の心の支えとして、リーダーが起こす奇跡を求めているのです。

とはいえ、私たちはどんなに頑張っても、ひっくり返っても、神ではなく、単なる人間です。残念ながら、海を割ることもできませんし、人々を思い通りに動かすこともできません。それでも、リーダーは、フォロワーの期待に応えるために、自己研鑽して、奇跡を起こすことが期待されているのです。

 

 

「リーダーと考える経営の現場」

第1回 「はじめに」
第2回 「リーダーシップに立場は関係ない」
第3回 「マネジメントとリーダーシップの違い」
第4回 「人は性善なれど、弱し」
第5回 「自責と他責」
第6回 「人として正しいことを」
第7回 「リーダーは自然体」
第8回 「サーバント・リーダーシップ」
第9回 「愛され畏れられる存在」
第10回 「傲慢な存在」
第11回 「子どものように叱る」
第12回 「奇跡を起こし、神となれ」
第13回 「Lead with love」
第14回 「リーダーシップの旅 前半」
第15回 「リーダーシップの旅 後半」

 

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介

 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。