※この記事は、WEBメディア「The Urban Folks」に連載されている2018年5月19日公開の「リーダーと考える経営の現場・第8回 サーバント・リーダーシップ」 を転載したものです。

 

「リーダーと考える経営の現場」では、前回に続き、私が経営の現場で得た「気づき」に基づいて、基本となるリーダーシップの考え方について記載していきたいと思います。

リーダーごとにそれぞれ自然体のリーダーシップのスタイルがあるわけですが、今回のテーマは、日本社会ではまだまだ新しいリーダーシップのスタイルであるサーバント・リーダーシップについてご紹介したいと思います。

このサーバント・リーダーシップですが、数年前に、ユニクロ(株式会社ファーストリテイリング)の代表取締役会長兼社長の柳井正氏が、「社員全員と経営者全員に『サーバント・リーダー』になってもらいたい」と言ったことでも注目を集めたリーダーシップのスタイルです。

サーバント・リーダーシップは、今から約半世紀前の1970年に、ロバート・グリーンリーフが提唱した「リーダーは、まずフォロワーに奉仕し、その後、フォロワーを導くものである。」というリーダーシップのスタイルです。

サーバント・リーダーシップは、「召し使い」、「使用人」や「奉仕者」という意味のサーバントと、フォロワーをぐいぐいと率いる一般的なリーダーのイメージであるリーダーシップという正反対の2つのイメージの言葉を一つにしたものです。この相反する2つのイメージを両立しているところが、サーバント・リーダーシップの凄さであり魅力なのです。

第2回で、一般的な人々が考えるリーダー像として、ネアカで、常に強い人で、いつでも「俺について来い!」と言って先頭を走っている組織のトップという「マッチョなリーダー像」を紹介しましたが、まさにサーバント・リーダーシップは真逆のリーダー像なのではないかと思います。

「マッチョなリーダー像」の多くのケースでは、フォロワーとは、まさに「俺について来い!」という強烈なリーダーシップについてきた人、正確には、リーダーについて行くことができた数少ない人なのです。そこにはリーダーのフォロワーに対する配慮や支援などを感じさせないぐらいの「マッチョなリーダー像」の厳格さや底抜けのエネルギーがあるわけです。これに対して、サーバント・リーダーシップでは、リーダーは、フォロワーに対して、明確なミッションやビジョンを示して、それを遂行するフォロワーを支えます。

リーダーは自分のミッションやビジョンを実現させるためにフォロワーがいると考えてはなりません。リーダーもフォロワーも、ミッションやビジョンを達成するという共通の目的の下では、立場は関係ないのです。ミッションやビジョンを実現するために、多くのフォロワーが、所属する組織やリーダーのために行動してくれるわけです。そのため、サーバント・リーダーシップでは、フォロワーがより活躍しやすいように、環境を整え、支えるのがリーダーの役割なのです。

サーバント(奉仕)の部分だけにスポットがあたってしまってはいけません。勘違いをしてはいけないのは、サーバント・リーダーシップは、フォロワーを支える“だけ”ではありません。やはりリーダーは、世のため人のため、夢や理想のために、フォロワーに対して、しっかりとした方向性を示す必要があります。

経営学においても、大企業のケーススタディで、逆三角形の図で表した会社組織の事例がいくつもあります。この逆三角形となる会社組織とは、社長が一番下で、社員の中でも、最前線の現場社員が一番上となるような組織設計です。会社の経営層は、現場社員に対して、しっかりとした経営方針を提示するとともに、現場社員の実行を支えていくというものです。ちなみに前述のユニクロの柳井氏の事例でも、同氏は「店舗のスタッフ一人ひとりを主役にする。そのために我々が全員でサポートしていく。」というような説明をしています。

以前紹介した、リーダーのフォロワーや周囲の人々の捉え方の一つの価値観である「人は性善なれど、弱し」ですが、この考え方にはサーバント・リーダーシップがしっくりきます。リーダーがフォロワーを「弱い」と定義しているわけですから、リーダーからすれば、そのフォロワーは手を差し伸べ、助けて支える対象になります。リーダーによる支援や援助がなければフォロワーは「弱い」ままで、リーダーとともに、ミッションやビジョンを実現することができません。

また、この価値観に基づくと、リーダーが、正しくサーバント・リーダーシップを発揮できているかどうかのチェックも簡単にすることができます。正しくサーバント・リーダーシップが発揮されている場合には、リーダーに支援されたフォロワーが人間として成長するのです。もし従来の「マッチョなリーダー像」だと、ともすれば、フォロワーは自力でリーダーについて来ることが求められているだけで、リーダーがフォロワーのことをきめ細やかに見られていない場合もあるでしょう。サーバント・リーダーシップでは、リーダーが「弱い」フォロワーを常日頃から支えているため、彼らは自然と「強く」なっていくのです。

リーダーシップには様々なスタイルがありますが、サーバント・リーダーシップは「人は性善なれど、弱し」という価値観に最もマッチする考え方だと思います。フォロワーに対して価値ある目標を示し、それに取り組むフォロワーを支えて、フォロワーを奉仕するのがサーバント・リーダーなのです。その結果、フォロワーや周囲の人々は「強く」なり、その人が本来持っている性善なる力を、世のため人のため、夢や理想のために発揮できるようになります。

 

 

「リーダーと考える経営の現場」

第1回 「はじめに」
第2回 「リーダーシップに立場は関係ない」
第3回 「マネジメントとリーダーシップの違い」
第4回 「人は性善なれど、弱し」
第5回 「自責と他責」
第6回 「人として正しいことを」
第7回 「リーダーは自然体」
第8回 「サーバント・リーダーシップ」
第9回 「愛され畏れられる存在」
第10回 「傲慢な存在」
第11回 「子どものように叱る」
第12回 「奇跡を起こし、神となれ」
第13回 「Lead with love」
第14回 「リーダーシップの旅 前半」
第15回 「リーダーシップの旅 後半」

 

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介

 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より、総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。