※この記事は、WEBメディア「The Urban Folks」に連載されている2018年5月7日公開の「リーダーと考える経営の現場・第7回 リーダーは自然体」 を転載したものです。

 

「リーダーと考える経営の現場」では、前回に続き、私が経営の現場で得た「気づき」に基づいて、基本となるリーダーシップの考え方について記載していきたいと思います。

今回のテーマは、優れたリーダーは常に自然体であるということをご紹介したいと思います。リーダーのあるべき行動様式である「あり方」とは、一つ一つの行動である「やり方」と違って、リーダーの人間性そのものです。人間性は偽ることはできません。だから、リーダーは自然体で構わないですし、自然体であってもフォロワーを魅了できなければなりません。

私が人を動かすにはリーダーシップが大事だという話をすると、必ずと言っていいほど、「どのようにやればいいですか?」とか「どのようなテクニックですか?」という質問を受けます。しかし、リーダーシップとは「あり方」であって、「やり方」ではないのです。

分かりやすい具体例ですが、前回、リーダーに不可欠な「人として正しい」という価値基準をご紹介しました。子供の時に両親や先生などから教えられた「人として正しい」という普遍的な道徳観や倫理観に基づいた価値基準が、「やり方」の話ではないことは読者の皆さんにもご理解いただけるものと思います。

これに対して、「やり方」とは一つ一つの行動です。特によく挙げられるのは、心理学などを駆使した情報操作や印象操作、プロパガンダやマインドコントロールなど、一時的にその人が有利になるような行動です。これらの「やり方」を駆使する人は、利己的な考えを持った人です。彼らは、自分のために、どうにか周囲の人々を動かしたいという考えから、これらの「やり方」を駆使するのです。

日々、私は経営支援をしているクライアントに対してリーダーシップの話をさせてもらっているのですが、「善人のリーダーは損をする」、「仕事ができるヤツは嫌なヤツである」、「利己的でズルいヤツが成功する」、そして「「やり方」を駆使しないと成功できない」と考えている人たちが多いことに驚きます。

しかし、真実は、「やり方」を駆使する嫌なヤツやズルいヤツのうち一定数はうまくやりますが、成功者と言われる方たちの中でも頂点のほうに位置する人々は、「あり方」がしっかりした自然体でも魅力的なリーダーなのです。

利己的な人は、初めのうちは成功しそうに見えるものです。しかし、長い目でみれば、彼らは、本来ならば成功するために必要とする環境そのものを破壊しかねないのです。

マキャベリ的に策略に長けて利己的であれば、いずれは、フォロワーはもちろん、周囲の人々もそれに気づくのです。そもそも、権力の座に就く前に、周囲の人々に報復されれば、そのような「やり方」は意味がありません。また、例え成功したとしても、成功への道は「やり方」を駆使して人を動かすことだと示してしまったので、周囲の人々も同じようなことをするようになります。そして、自分と同じように利己的な考えを持ち「やり方」を駆使する人を作り出すことになるのです。一方で、善良な人々はあなたの下から去っていきます。波及効果が広がり、あっという間に「やり方」があふれてしまうのです。

長い目で見ると、「やり方」では上手くいきません。努力を極めて成功を成し遂げるには、利己主義を超越し、周囲と信頼し合い、協力関係を築くという「あり方」を身に着けた自然体なリーダーでなければなりません。皮肉な話、例え犯罪者が悪事で成功するためにも、このことは鉄則なのです。

優れたリーダーは、フォロワーの不安を鎮め、希望を引き出し、望みを高め、力を与え、ポジティブな行動へと駆り立てます。私たちが常に心に留めておかねばならないのは、中長期的には、「やり方」ではフォロワーや周囲の人々は動かないということです。

「やり方」では、いつかフォロワーが離れてしまうものです。「やり方」を駆使して、フォロワーや周囲の人々をずっと騙し続け、動かし続けることは難しいのです。読者の皆さんにも経験があるかもしれませんが、リーダーのたった一言で、フォロワーは興ざめしてしまうこともあるぐらい、信頼関係とは繊細なものなのです。

リーダーは「あり方」が大事です。リーダーの感情、価値観、パーソナリティといった人の心が持つ力を理解しなければなりません。そのためには、リーダーとしての「あり方」を身に着け、自然体であっても、フォロワーがついて来るようでなければなりません。

繰り返しますが、リーダーシップとは「あり方」であって、「やり方」ではないのです。ありのままの自分、人間性が大事だからこそ、自然体で勝負できるリーダーになる必要があります。優れたリーダーは常に自然体で、それでいて、常にフォロワーや周囲の人々を魅了し、正しい方向に導いていくのです。

 

 

「リーダーと考える経営の現場」

第1回 「はじめに」
第2回 「リーダーシップに立場は関係ない」
第3回 「マネジメントとリーダーシップの違い」
第4回 「人は性善なれど、弱し」
第5回 「自責と他責」
第6回 「人として正しいことを」
第7回 「リーダーは自然体」
第8回 「サーバント・リーダーシップ」
第9回 「愛され畏れられる存在」
第10回 「傲慢な存在」
第11回 「子どものように叱る」
第12回 「奇跡を起こし、神となれ」
第13回 「Lead with love」
第14回 「リーダーシップの旅 前半」
第15回 「リーダーシップの旅 後半」

 

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介

 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。