※この記事は、WEBメディア「The Urban Folks」に連載されている2018年4月16日公開の「リーダーと考える経営の現場・第6回 人として正しいことを」 を転載したものです。

 

「リーダーと考える経営の現場」では、前回に続き、私が経営の現場で得た「気づき」に基づいて、基本となるリーダーシップの考え方について記載していきたいと思います。

今回のテーマは、リーダーのあるべき行動様式である「あり方」に不可欠な「人として正しい」という価値基準をご紹介したいと思います。

「人として正しい」とは、ごく一般的な道徳観や倫理観に基づいた価値基準です。それは、子供の時に両親や先生などから教えられた、普遍的な「人として当たり前」のことです。

改めて「人として正しい」というと、経営の現場からかけ離れた崇高・高尚・深淵なテーマで、小学校の道徳の授業のような内容に思われるかもしれません。しかし、今後、読者の皆さんがリーダーシップを発揮していき、様々なステークホルダーに対して、より広範に影響力を行使していくためには、この「人として正しい」とは何かを改めて見つめなおさなければなりません。

第4回で、リーダーがフォロワーや周囲の人々を捉える際の価値観の一つとして「人は性善なれど、弱し」をご紹介しましたが、基本的に「人は性善」なのです。性善なフォロワーは、性善な道徳観・価値観を持ったリーダーについていきます。そのため、リーダーがより多くの人々に影響力を行使するためには、「人として正しい」ことは、優れたリーダーシップに欠かせない要素なのです。

例えば、「嘘をついてはいけない」、「騙してはいけない」などズルくてはいけませんし、「強欲ではいけない」、「利己的ではいけない」など自己中心的な考え方ではいけません。また、困っている人がいたら救いの手を差し伸べたほうがいいでしょうし、家族、友達や仲間は大切にしたほうがいいでしょう。これらはみな「人として正しい」と評価されるであろう、ごく一般的な道徳観や倫理観に基づいた価値基準の範囲内のことだと思います。

それこそオリバー・ストーン監督の映画「ウォール街」でマイケル・ダグラスが演じた投資家ゴードン・ゲッコーの名ゼリフ「Greed, for lack of a better word, is good.(他に言葉は見つからないが、強欲は善だ)」が象徴的ですが、経営の現場では、自分の中にある一般的な道徳観や倫理観が揺らぐような場面に出くわすことがあります。

近年、大企業の不祥事が相次いでいます。東芝の粉飾決算、日産自動車やスバルの無資格者検査問題、神戸製鋼、三菱マテリアルや東レの品質データ改ざんなどです。これらの大企業も、最初から不正をしていたわけではありません。リーダーシップの欠如により、ごく一般的な道徳観や倫理観に基づいた価値基準をはみ出してしまったわけです。

リーダーは、いついかなるときも、「人として正しい」ことをしなければなりません。リーダーは、追従してきてくれるフォロワーのためにも、“焼け火鉢“を持って我慢をしなければならないのです。コンプライアンスの問題であったり、お金にまつわる問題であったり、絶対に乗り越えなければならない現実の課題を前にしても、「人として正しく」いられるか。会社の資金不足や複雑に絡まったステークホルダーの利害関係など様々な現実の問題に対峙しつつも、「人として正しい」行動をとることができるか。リーダーとしての真価が問われるのです。

今回のテーマですが、もしかしたら読者の皆さんは、リーダーのみならず、「人として正しい」ことをするのは、「人として当たり前」のことじゃないかと思ったのではないかと思います。なぜ私がこのような当たり前のことを改めてご紹介するのかというと、まさに前述の「人は性善なれど、弱し」で、思っているよりも、常に「人として正しい」ことをするのは難しいことなのです。一般の人たちでも、日常生活において、些細な嘘をついてしまったり、少し欲をかいてしまったりと、なかなか聖人君主のような振る舞いはできないものです。

21世紀になってからは、インターネットの発達により、情報伝達が飛躍的に速くなり、特にSNSの普及によって、個人それぞれが積極的に情報発信をするようになりました。そのため、「人として正しい」かどうかという価値観は、今まで以上に、多くの人々に見られるようになりました。「人として正しい」という道徳観や倫理観に基づいた価値基準は、さらに重要性を増しているのです。

多くの人々が期待するリーダーは、これはしてはいけないことだ、あれはこうすべきだと、明確に規範を示し、倫理を説くことができる、見識と常識を兼ね備えた優れた人物です。但し、本来ならば、「人として正しい」ことは「人として当たり前」のことであり、決して難しくはないはずです。改めて、子供の時に両親や先生などから教えられた、ごく当たり前の道徳心やシンプルな規範の意味を考え直し、それをきちんと遵守すればいいのです。リーダーが、一人でも多くのフォロワーを導いて、世のため人のため、夢や理想のために邁進するためには、「人として正しい」ことをしなければなりません。

 

 

「リーダーと考える経営の現場」

第1回 「はじめに」
第2回 「リーダーシップに立場は関係ない」
第3回 「マネジメントとリーダーシップの違い」
第4回 「人は性善なれど、弱し」
第5回 「自責と他責」
第6回 「人として正しいことを」
第7回 「リーダーは自然体」
第8回 「サーバント・リーダーシップ」
第9回 「愛され畏れられる存在」
第10回 「傲慢な存在」
第11回 「子どものように叱る」
第12回 「奇跡を起こし、神となれ」
第13回 「Lead with love」
第14回 「リーダーシップの旅 前半」
第15回 「リーダーシップの旅 後半」

 

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介

 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より、総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。