※この記事は、WEBメディア「The Urban Folks」に連載されている2018年3月12日公開の「リーダーと考える経営の現場・第4回 人は性善なれど、弱し」 を転載したものです。

 

「リーダーと考える経営の現場」では、前回に続き、私が経営の現場で得た「気づき」に基づいて、基本となるリーダーシップの考え方について記載していきたいと思います。

今回のテーマは、リーダーがどのようにフォロワーや周囲の人々を捉えたらよいかで、一つの価値観として「人は性善なれど、弱し」という考え方をご紹介したいと思います。

今後、経営の現場において、読者の皆さんがリーダーシップを発揮していくにあたり、フォロワーや周囲の人々をどのように捉えたらよいかという問題に直面すると思います。リーダーとは、暗闇の中、集団の先頭で、たいまつを持って、フォロワーを率いて進む存在です。そのため、自分たちの進んでいる方向が本当に正しいのか、フォロワーが本当に自分についてきてくれているのかなど、リーダーには常に自分の中の不安との闘いが生じます。そのときに多くのリーダーは、リーダーが抱える不安とフォロワーや周囲の人々に対する必要以上の過度な期待が原因で、この問題にぶつかります。

特に未熟なリーダーは、フォロワーや周囲の人々に対して、“複雑な想い”を抱くことが多いです。未熟なリーダーであったとしても、フォロワーや周囲の人々に対して、感謝の念すら抱かない人はそうはいません。しかし、それと同時に、なぜ自分は正しいのに一部の人々は理解してくれないのか、なぜ自分だけがみんなの犠牲となってこのような辛い想いをしなければならないのかなど、フォロワーや周囲の人々に対して、その人たちに勝手にリーダーである自分と同じような責任を背負わせ、彼らの責任を追及するかのようなネガティブな気持ちも併せて持ってしまう人が多いです。このネガティブな気持ちは、未熟なリーダーのフォロワーや周囲の人々に対する過度な期待から生じています。

「人は性善なれど、弱し」とは、一橋大学名誉教授の伊丹敬之氏が「性弱説」と表現した言葉です。全ての人は性善であるが、弱い存在であるという価値観です。一般的に、人は、心にゆとりがあって平常時であれば、周囲の人に怒鳴ったり、八つ当たりをしたりすることはありません。しかし、ミスが続いて自分に自信がなくなってしまったり、急な仕事が舞い込んで慌てふためいてしまったりすれば、周囲の人に怒鳴ったり、八つ当たりをしたり、“性善”ではなくなってしまうのです。

フォロワーや周囲の人々は、一般的で平均的な普通の人たちです。彼らは「人は性善なれど、弱し」を体現した人々です。勝ち目の薄い戦いだったり、仕事の負荷が大きくかかったりすれば、彼らがリーダーをフォローしなくなってしまうのは当然ですし、致し方のないことなのです。それは決してリーダーのことやリーダーの目指す理想を嫌いになったからではなく、そのフォロワーが“弱い”から、リーダーについていけなくなったに過ぎません。

経営の現場では、リーダーからフォロワーが離れてしまった場合や集団が動かなくなってしまった場合、リーダーとフォロワーや周囲の人々の間の「好き・嫌い」の話の場面によく出くわします。しかし、今回紹介する価値観は、単なる「好き・嫌い」の話ではなく、全ての人が性善であることを前提として、フォロワーや周囲の人々の「強い・弱い」に評価軸を置いているところに特徴があります。

私は、普通の人たちを「弱し」とするこの価値観は、相手を見下した評価するわけですので、傲慢な考え方だと考えていますが、未熟なリーダーにとっては、非常に有用な考え方だと捉えています。

前述のとおり、未熟なリーダーは、どうしてもフォロワーや周囲の人々に過度な期待をしてしまうものです。今、目の前で起きている事象の全てのことが自分に責任があるとは思えずに、他人にも責任の一端があるものだと考えてしまいがちです。こういったときに、「弱し」とフォロワーや周囲の人々のことを、自分よりも低く評価することで溜飲が下がるの事実だと思います。

この普通の人たちの弱さを分かってあげる強さがリーダーには必要です。リーダーは、「性善であって、強い」存在でなければなりません。リーダーとは、普通の人たちの弱さを補える強さを持った存在だからこそ、フォロワーがついてくるに値するのです。リーダーがリーダー然とした振る舞いを身に着け、自分に自信を持ち始めるのも、フォロワーとの違いであるこの「強い・弱い」を意識してからだと思います。

とはいえ、本来は、リーダーも、「人は性善なれど、弱し」を体現した普通の人たちです。そこを、世のため人のため、誰かのため、夢や理想のために“焼け火鉢”を持って我慢をし始められるようになれば、この普通の人も「性善であって、強い」存在のリーダーとなり、フォロワーが追従するようになるのです。

リーダーとは孤独な存在です。リーダーは、フォロワーには、“焼け火鉢“を持たせてはなりません。自分でフォロワーの分まで“焼け火鉢“を持たねばならないのです。だからこそ、リーダーなのです。しかしもう一方で、リーダーはこの「弱い」フォロワーを信じて集団を率いていかなければならないのです。ここにリーダーの難しさと醍醐味があるのです。

 

 

「リーダーと考える経営の現場」

第1回 「はじめに」
第2回 「リーダーシップに立場は関係ない」
第3回 「マネジメントとリーダーシップの違い」
第4回 「人は性善なれど、弱し」
第5回 「自責と他責」
第6回 「人として正しいことを」
第7回 「リーダーは自然体」
第8回 「サーバント・リーダーシップ」
第9回 「愛され畏れられる存在」
第10回 「傲慢な存在」
第11回 「子どものように叱る」
第12回 「奇跡を起こし、神となれ」
第13回 「Lead with love」
第14回 「リーダーシップの旅 前半」
第15回 「リーダーシップの旅 後半」

 

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介

 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師。2019年6月より国土交通省PPPサポーター。