※この記事は、WEBメディア「The Urban Folks」に連載されている2018年7月19日公開の「リーダーと考える経営の現場・第10回 傲慢な存在」 を転載したものです。

 

「リーダーと考える経営の現場」では、前回に続き、私が経営の現場で得た「気づき」に基づいて、基本となるリーダーシップの考え方について記載していきたいと思います。

今回のテーマは、優れたリーダーは傲慢な存在であるということをご紹介したいと思います。前回、優れたリーダーはフォロワーから愛され畏れられる存在であるということをご紹介しましたので、リーダーには様々な顔があると思った読者の皆さんも多いかもしれません。

また、念のため、誤解のないように記載をしておきますが、今回のテーマは優れたリーダーは傲慢な存在であるということですが、決してリーダーの行動や態度が傲慢であるということではありません。実際の優れたリーダーの行動や態度は、傲慢と評価されるには程遠く、謙虚な人ばかりでしょう。

今回は、優れたリーダーの多くが、傲慢と評価されてもおかしくない考え方を持っていることをご紹介したいと考えています。

リーダーが多くのフォロワーを継続して導き続けるためには、時に傲慢と評価されるような、その他大勢のフォロワーとは絶対的に自分は違うという強烈な自負・矜持が必要になります。そのため、一般的に傲慢という言葉はマイナスイメージを伴いますから逆説的にはなりますが、優れたリーダーになればなるほど傲慢な存在であることが多いのです。

特に大事を成すリーダーは、常日頃の謙虚な行動や態度とは違って、自分が神がかっているとまでは言わないかもしれませんが、少なくとも自分は普通の人とは違うという気持ちで物事にあたっている人が多いです。

第4回で、リーダーがフォロワーや周囲の人々を捉える際の価値観の一つとして「人は性善なれど、弱し」をご紹介しましたが、本来は、リーダーも、「人は性善なれど、弱し」を体現した普通の人たちです。

しかし、リーダーであるからには、世のため人のため、誰かのため、夢や理想のために“焼け火鉢”を持ち続けなければなりません。リーダーは、目標のために、フォロワーが避けたくなるような嫌な役回りを引き受けなければならないのです。

このときに多くのリーダーの心の支えになるのは、「リーダーである自分は、弱いフォロワーとは違う」、「リーダーである自分は、フォロワーより強い」といった自負です。考えようによっては何とも情けない話でもあるのですが、リーダーは、自分よりも弱いフォロワーという存在を意識して初めて強くなれるのです。この自負が、弱い自分を鼓舞する、大きな心のよりどころになります。

リーダーは、「性善であって、強い」存在でなければなりません。リーダーとは、フォロワーの弱さを補える強さを持った存在だからこそ、フォロワーがついてくるに値するのです。リーダーがリーダー然とした振る舞いを身に着け、自分に自信を持ち始めるのも、フォロワーとの違いを意識してからです。

分かりやすい例を紹介したいと思います。今までの文脈を無視してこの部分だけ切り取ると誤解が生じるのですが、私が知る限り、ほとんどの経営者は、心の奥底で、どこかサラリーマンのことを見下していると思います。それはもちろんスキル面の話をしているわけではなく、生き方・覚悟において、多くの経営者はサラリーマンと勝負しても負けないと考えていると思います。この考えはリーダーの傲慢さから生じているのではないでしょうか。

そもそも本来は、目標のために、ともに歩いていくべき存在であるフォロワーとリーダーである自分を比較すること自体がナンセンスです。しかし、時に、この区別があるからこそ、リーダーは、フォロワーのために、努力をし続けられるのです。

この考え方は、身分の高い者はそれに応じて果たさねばならぬ社会的責任と義務があるという、欧米社会における基本的な道徳観であるノーブレス・オブリージュ(高貴なる義務)に近い考えかもしれません。この場合は、身分の高い者と庶民を区別し、そのかわり、身分の高い者に社会的責任と義務を課しているわけです。

リーダーが、多くのフォロワーを前にリーダー然としていられるのは、自分はフォロワーとは違うというプライドがあるからです。それは、傍から見ると、ちっぽけなプライドかもしれませんが、継続して物事を成し遂げているリーダーの多くが、このプライドを原動力として、長年にわたりフォロワーを導いているように思います。

リーダーとフォロワーの関係は、親子のような関係と例えられることが多いです。リーダーシップの世界では、関係性において、リーダーは親、フォロワーは子供というように捉えられるわけです。

本当の親子ならばいざ知らず、現実にリーダーとフォロワーの間に、親子ほどの開きがあるかどうかは分かりません。リーダーが、フォロワーを子供のように捉えること自体が既に傲慢なことかもしれません。しかし、この傲慢さがあるからこそ、リーダーは、リーダーらしく振舞うことができ、フォロワーのためにより一層の努力することができるのです。

 

 

「リーダーと考える経営の現場」

第1回 「はじめに」
第2回 「リーダーシップに立場は関係ない」
第3回 「マネジメントとリーダーシップの違い」
第4回 「人は性善なれど、弱し」
第5回 「自責と他責」
第6回 「人として正しいことを」
第7回 「リーダーは自然体」
第8回 「サーバント・リーダーシップ」
第9回 「愛され畏れられる存在」
第10回 「傲慢な存在」
第11回 「子どものように叱る」
第12回 「奇跡を起こし、神となれ」
第13回 「Lead with love」
第14回 「リーダーシップの旅 前半」
第15回 「リーダーシップの旅 後半」

 

株式会社スーツ 代表取締役 小松 裕介

 2013年3月に、新卒で入社したソーシャル・エコロジー・プロジェクト株式会社(現社名:伊豆シャボテンリゾート株式会社、JASDAQ上場企業)の代表取締役社長に就任。同社グループを7年ぶりの黒字化に導く。2014年12月に当社設立と同時に代表取締役に就任。2016年4月より、総務省地域力創造アドバイザー及び内閣官房地域活性化伝道師登録。